「神に選ばれ、神になる」そんな俺のものがたり
第十九話 ユニークスキル
20時。食料配給を求めて全員がダンジョン前の本部へと集まり出す。
食料をもらう前に全員に並んでもらい、点呼する。
宮下たちは身勝手にも壁の外へと出てしまった、という偽情報があるのでカウントはされていない。
心配もされているようだが、ほんの一部。実はかなりのいじめっこだったらしく、その被害者も多い。
彼らを心配しているのはいじめる側のボスがいなくなった宮下の子分たちだろう。
そんなことはさておき、この訓練の説明に入る。表面上統率とこの訓練内容を発表するのは長谷川先生である。
本当は俺、長谷川先生、永本、山寺先生の四人で話し合って決めてるのだが。
まず最初にこの訓練をしなければいけない経緯を話す。その後もちろん批判的な声はあったが、例の「脅迫文」を言ってただけで、数名以外の生徒は黙った。
その数名は後で呼び出して話を聞くこととする。
次に明後日から訓練を始めることを伝え、明日に全員の面談をすることに決まった。
面談といってもステータスを紙に写すことと、意見がある人の説得。ない人はおそらく一分ほどで終わるだろう。
紙とペンをどうするかって?そんなの簡単。作っちゃえばいい。創造魔法で。どうせ創造魔法は先生方には明日伝えるし。
面談は長谷川先生、山寺先生、田村を抜いての先生方七人にやってもらう。
その中でもスキルがある生徒と批判的な生徒には俺・長谷川先生・山寺先生が対応する。
永本と旅行会社の方三名はステータスを写し取られた紙を見ながら前衛型・後衛型・それ以外に分けてもらい、それぞれの名簿を作ってもらう。
そして最後に俺によるウルフショーである。ウルフをここまで運ぶことなど造作もない。
だって精神魔法で眠らせて、前もって本部前に連れて来ればいいだけだもん。
俺にとっては弱いようにしか見えない魔物だが、魔物慣れしていないみんなには恐怖の存在でしかない。
そして長谷川先生の合図とともに俺は眠っているウルフに興奮させる魔法をかけ、俺に攻撃してくるように促す。
すると思ったより効いたのか、いきなり起きたかと思うと、目をギラギラとさせてこちらを向き、口からはよだれを出す。
そしていきなり飛びかかってきたので、右横に避ける。
その行動の素早さにみんなは声を上げたが、すぐにまたウルフはこちらを向き飛びかかってくる。
それも身軽に避け、ウルフは地団駄を踏んだ。
『サポタさん、あの魔法って興奮させる魔法だよね?さっき聞かなかったけどあれ、おれしかみえてないのかな?あのウルフ。』
『はい。あの魔法はかけたもののみに興奮作用を起こすため、ウルフには他のものは何一つ見えていません。』
『へぇ〜。つーかこんな魔法いつ使うのだか。」
『はい。この魔法を使う時の良い例は、個体が恋をしている個体に使うと、使われた方は極度の興奮状態になり、魔法使用者に嫌でも従属精神が芽生え、その結果魔法使用個体は永遠の愛を持つことができます。そして最後にはせっ……『ああ!もういいからいいから!皆まで言うな!そこまで言ったらわかるわ!おけおけ。わかった。そうやって使うんだな。……よし!この魔法は封印!』
そうサポタと言っている間にもウルフは何度も攻撃を仕掛けているが、一向に当たらない。
だって遅いんだもん!もうすぐ殴っていいかな?……ん?ちょっと待てよ?
『今の説明聞くと……ウルフは俺のことが好きになっているっていうことなのか?』
『まぁそういう解釈もできますね。』
『……そ、そんな……の!……」
「嫌だーーーー!!!!」
この言葉が無意識的に声に出たのち、俺はこちらに噛み付こうとしてきたウルフの腹におもっいっきり蹴りを入れる。
バゴーーン!!!!!!!!
ウルフは腹を蹴られたことにより、口から内臓などが飛び出しながら近くにあった木に衝突。
木に衝突したウルフは足・手などのあらゆる関節がぐちゃぐちゃに曲がり、原型を留めていない。
さらに悪いことに木に当たったのが幹なら良かったものの、鋭い枝に腹部分が突き刺さっことにより、血もドロドロと滝のように出ているし、胃の中に残った内容物やら内臓も飛び散った。
みんなが叫んでいる中、俺は思わず蹴ってしまったウルフの残骸を見て"やりすぎた"と後悔したのだった。
その後そのウルフの残骸を見た生徒・職員は過度な嘔吐に見舞われ、俺が密かに精神安定魔法である"リラックス"をかけたことで、だいぶ治った。
しかし後で俺は先生方やら永本に怒られるのは確実で、全体の八割が気分を悪くしたみたいだ。
そのせいで翌日の面談は思ったよりハードになってしまうのだが、それは俺が一人一人のに頭を下げ、説得の神様である長谷川先生が柔軟に対応してくれたお陰で、訓練開始日には無事始めることが出来た。
また面談前、まだまだ改造はしてあるが、今までの行動に見合ったぐらいのステータスを先生方に見せると、ウルフ事件もあってか溜息をいっぱいつかれた。
そして最後に面談によってスキル保持者が俺を抜いた三百四人中十六人いることがわかった。
その中でも六人は中川のような能力上昇系スキル。これはサポタによるとスキルの中ではノーマルらしい。
そして"レアスキル"俺でいうところのレベル上昇補助や調査、隠蔽がここに含まれる。これを持つのが七名。
そして"スペシャルスキル"に認定されるのが二名。無限アイテムボックスはこれに含まれる。
そして最後に"ユニークスキル"。俺でいうところの全武器使用可能だ。たしかにチートだが。
これと同等に扱われるスキルを持つ人が一人。これだけ紹介しておこう。
そのユニークスキルを持つ人は八組の千葉くんである。スキル名は"運の王"。効果は『自身の体力×1000の運気を常時持つ』である。
このスキルマジでやばい。もしかしたら俺の本気ステータスでも戦ったら苦戦するかもしれない。
このスキルどのくらい最強かを検証した。
まず千葉くんの体力は現在、300。その千倍だから運気は三十万ということになる。
まず最初に千葉くんに向かって石を投げる。するとその石は偶々飛び出してきたネズミのような生物に当たり、千葉くんは無害。もう一度投げても偶々上から木の枝が落ちてきて防がれてしまった。
次は千葉くんには動かないようにと言い、俺が彼の頭上に水の塊を。それをかぶせようとする。しかしそれも落ちる前に大きな葉っぱがどこからともなく落ちてきて千葉くんに傘の役割を果たす。
びしょ濡れになるどころか、一滴もかかっていない。
この時点で俺も流石にお手上げ状態。多分他に試しても何も彼には危害を加えることはできないと悟った。
これ俺よりもヤバくないか?と思ったが、サポタからとんでもない言葉が飛ぶ。
『たかし様なら神に選ばれた権限として、欲しいと思ったスキルは無償で提供しますよ?』
これに限ってはもう何も言わない。
おかしいもん。なんか……。
まぁ毎度のこと色々あったが、無事訓練初日を迎えた。青空も広がり、気温もちょうどいい。
行くぞ!みんな!!
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