【完結】女装男子のインビジブルな恋愛事情。

瀬野 或

???時限目 恋に憧れた女の子の心模様


 大なり小なり、異性に対して性的欲求を覚えるのは生理現象だけど、恋愛の根本が性的嗜好から生まれるとは限らない。

 一緒にいて楽しい、心地いい、和む──。

 そういう理由から恋愛に発展することもあるけれど、触れたいと思う気持ちには、やっぱり性的な感情が起因してるんじゃないかなって思う。だってそうでしょ? 綺麗ごとを並べても、行き着く場所は同じなのだから否定はできないはずなんだ。そういう思考に対して『気持ち悪い』と拒否反応を示す人がいることも知ってる。わからなくもない。だって、出会った全ての異性が自分を性的に見ていると思ったら悍ましいから。

 でも、そういう人ばかりじゃない。〈モテる・モテない〉の話云々は度外視して考えると、その比率は半々なんじゃないかなって思う。統計学に関して、私の知識はほぼ無いに等しいけれど、出会った全ての人間の思考が読めるわけでもないし、だったら、やっぱり半々なんだと思う。それを〈怖い〉と思えば、性的な言動に対して拒絶反応を示すのも当然だし、その考えを否定するつもりもない。プラトニックな関係だって可能性の一つ。朝起きて、頬にキスをして、同じ食卓を囲んで、行ってらっしゃいと見送る──立派な恋愛の一部だ。

 だけど、私だったら触れ合いたいなって思ってしまう。

 いけないこと?

 おかしいこと?

 ううん、違う。

 好きな相手を求めることも恋愛なのだから、間違った見識じゃない。お互いの熱を感じて、高ぶる感情をぶつけて果てる──快楽に溺れるのではなくて、堪えきれない感情を伝える手段の一つとしてそういう行為あることを私は知っている。

 でも、そうなるにはまだ早いとも思う。

 知らなきゃいけないことが沢山あって、知りたいことも山積みで、伝えなきゃいけない気持ちも、伝わらない感情も全部中途半端ないまの私じゃ知る権利も無い──でも、諦めたくないから、私は攻めに転ずることにした。

 アナタの前だけでは、ちょっとだけ積極的な私を演じてみる。かつてのアナタがそうだったように、小悪魔的な部分も包み隠さず披露する。恥ずかしくて逃げ出したくなる心を鼓舞しながら、アナタが齧ったピザを呑み込んだ。





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