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ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第24話ーfarewell

 「…どこにいったんだろう」


 ミルフィリアさんを追いかけて森に入ったのはいいけど、森に入るまでに時間がかかってしまいどこにミルフィリアさんがいるのかわからなくなってしまった。


 耳を澄ませば聞こえてくるのはみんなの声や爆発する音、グギャグギャという、化け物みたいな声。たぶんこの声がゴブリンなんだと思う。


 そしてその中でたまに聞こえてくる……悲鳴


 「…っ! …違う。違う……!」


 ……違う? …何が、何が違うんだ。みんなが討伐にでるのも、みんなが苦しい声を出すのも、みんが…死んでいくのも……


 全部…全部……僕のせいだ。力があるのに戦わないから。…神様にせっかくこんなにも強い力を貰ったのに、いまだにその力を使って誰も助けようとしない。助けられない? 違う。…助けようとしないんだ。


 力があるくせして、適当な言い訳を言って逃げようとしている。それが今の僕だ。


 「…っ!」


 そこまで考えておもわず走り出す。ミルフィリアさんを探しに…ううん。なんでもいい。とにかくこの場から離れたかったんだ。


 …ミルフィリアさんは、ミルフィリアさんは、どこにいるのだろう。


 そもそも、ミルフィリアさんが心配だったから追いかけたけど、僕に何ができるっていうんだ。何もできないから、何もしようとしないから、裏にいたのに。それに、なんでミルフィリアさんは…1人で森に……


 考えても考えてもわからない。むしろ何かしら考えるほど、さっきの声が頭のなかに響く


 「…ああもう……本当に僕は弱いなぁ」


 そう思っていたとき、ひときわ大きく爆発する音がなった。


 「…っ! ミルフィリア…さん?」


 発生場所は左奥。街の入り口が斜め後ろのはずだから、もしかしたらミルフィリアさんなのかもしれない。そう考えると僕はすぐさま走り出す。


 なんの音なのかはわからない。僕が行ったところで守ることなんて出来ない。でも…それでも…僕が囮になり、逃がすことくらいはできるはずだ。


 ゴブリンなら僕の体には傷ひとつつけることなんて出来ないはずだ。


 また、爆発がなる。さっきよりは小規模だが。だけど、方角はあっている。思っていたより、若干遠い場所みたいだけど、僕ならすぐにつく。


 そして数秒後、前方に少しひらけた場所があるのが見えた。すると、3度目の爆発。爆風が僕の頬撫で、髪が揺れる。


 そこだ! と、思った。そして、それと同時にドッと不安が込み上げてくる。


 ……本当に行っていいのか? 行ったところで自分に何ができる? 囮? ……そんな気持ちで本当に囮なんてできるのか? むしろ、邪魔になるんじゃないのか? 


 …でも、ミルフィリアさんはギルドの職員で、受付の人で……ギルドの…職員? …なんで、なんで僕は…ギルド職員が戦えないって思っていたんだ? …そうだ。そういえば、あの召集の時ギルドマスターとミルフィリアさんがいた。そして誰かが言った


 『あ、あの、こっちの! こっちの戦力は何人なんですか!?』


 その言葉に、ギルドマスターはこう言った。


 『…冒険者は俺とミ……リアを合わせて35。それと、領主の兵士2800。王都からの増援が10万。合計で、10万2835人』


 「…な…んで……なん…で…!?」


 おもわず両膝をつく。


 おかしい。どうなってる。どういうことなんだ。どうして…どうして……あの時の、あの言葉が…………思い出せない。


 他のことは覚えてるのに。ミルフィリアさんの言葉は覚えているのに。あの時の、ギルドマスターが言った言葉だけが思い出せない。


 でも、ギルド職員全員が戦えないってことはないはずだ。現に、ギルドマスターは戦える。つまり、ここに1人で入ったミルフィリアさんは実は戦える? そして、僕はそれをあの時聞いていた。だけど、何も感じなかった。どうにも思わなかった。そして、忘れてしまった。思い出せなくなってしまった。


 「…ようやく気づいたか」


 …何かが飛んできた。あれは…剣? …なんだ、それなら大丈夫だ。僕は最強だから。あんな剣じゃ傷ひとつつかない。


 「…ユウさん!」


 ぎゅっと、何かに抱きつかれる。…暖かい。これは人のぬくもり? でも、一体誰が?


 「…大丈夫ですから」


 声が、聞こえた。僕が探し求めていた声が。でも、どうしてだろう。その声が僕の目の前でするのは


 「…っっうぅ!」


 「…さすがあの方の計画だ……ふんっ」


 誰かが、なにかを振り抜く動作をすると、大量の赤いナニかが飛び散った。


 「……え?」


 ずるずると、僕を包んでいたぬくもりが落ちていく。目に入るのは、誰なのかわからない男と、地面におびただしいほどある、大量の赤い…液体。


 そして、僕の足元にいる1人の女性。


 「…よか…た。いき…て…くれて……」


 その女性からのびた手が僕の頬触る。…なんで……なんで……どうして……!


 「ミル…フィリア…さん…!」


 触られた手をつかむ。さっきまであんなに暖かかった手はどんどん冷たくなっているのがわかる。


 「ふふ…わたし…の…こは……フィリア…て…よんで…く…ださ…い……したしい…人は…そうよびま…す」


 そう言葉呟くと掴んでいた手が重力にそってそっと落ちていく。


 「ミル…フィリアさん…! フィリアさん!」


 訳がわからなくて、もうどうしていいのかわからなくて、必死にフィリアさんの体を揺する。


 「…っ!」


 すると、急に大きな風が来て吹き飛ばされた。


 「見て…わからないのか? そいつはもう死んでんだよ。……そして……」


 男が、持っていた大剣を振り上げる。


 「お前もここでし…っち、遅かったか。…運がよかったな。お前は死なずにすみそうだぞ」


 振り上げた剣を下ろすと、そのまま剣はスゥゥっと消える。


 「俺の名前はデルスベルデクス。そして魔族だ」


 ゴキッボキッと、男の体が変わりはじめ、見たことがない姿に変わっていく。


 「じゃーな。もしまた会えたら殺してやるよ」


 不適に笑みを浮かべて、その魔族っと言った存在はパッと消えていった。


 訳がわからないまま呆然と眺めていた。…これも……これも、全部僕のせいだ。


 「ああ……ああ……」


 フィリアさんに近づく。そのたびにポタポタと僕の体についた赤い液体が落ちる。


 「…おきて……おきて…よ……ねぇ…ねぇ!」


  目から涙を流しながら、フィリアさんの体を揺さぶる。受け入れられないから、信じられないから、きっと、これで起きてくれる、と思いながら。


 「なんで…なんで起きないの…? 泣いてるんだよ私は…だから…起きてよ……」






 …僕のこの言葉にもフィリアさんはピクリとも動かない。それが、いやでもこの光景が現実のものだと受け入れさせられる。信じさせられる。


 背中には、さっきの大剣によって切り裂かれた大きな傷痕。そして、その傷痕から流れる大量の…血。


 「…いやだ…いやだよ……死んじゃいやだ……!!」


 そんな言葉を叫ぼうが現実は変わらない。僕は…僕は…殺してしまったんだ。フィリアさんを。


 「ごめん…なさい……私の……僕のせいで」


 精一杯フィリアさんを抱き締める。


 「…ごめんなさい。フィリアさん」


 

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