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ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第20話ー本当の僕

 緊急召集! Cランク以上の冒険者はギルド裏の訓練所までお越しください!


 緊急召集。いったいなんの話があるのかわからないけど、僕のランクはEランクだ。気にはなるけど、今回は関係ないみたい。それに裏に訓練所なんてあったんだね。もしかしたら、僕も後で使う時が来るかもしれない。なんたってあと2回だからね! …2回だからね!!


 ボードに行く前にいつもどおりミルフィリアさんのところに行って、昨日の宿屋の依頼を報告する…つもりだったんだけど、


 「いない…」


 いつもいる受付にミルフィリアさんがいなかった。右を見てもいない。左を見てもいない。今日は休みだったりするのだろうか。残念。…仕方ない。別の人の所に行こう。ちょうど誰もいないし。


 「あの、これおねがいします」


 カードと一緒にサインの入った依頼書を渡す。


 「はい。お預かりします。それと、ごめんね。ミルフィリアはいるにはいるんだけど、今、他の用事で席を外しているの」


 カードを機械にとおしながら、受付の女性はミルフィリアさんのことを教えてくれる。


 「いつ戻ってくるとかはわかりますか?」


 女性に聞くとなにやら難しそうな顔をしてうなる。


 「うぅん…そうね。たぶんスムーズに終われば、お昼ちかくには戻ると思うんだけど…ごめんね。ちょっとわからないわ」


 「そうですか…ありがとうございます」


 ぺこりとお辞儀をする。お昼すぎに終わっていたら依頼の帰りには会えるかな。


 「それにしてもユウちゃんだったわよね。ふふ、本当にミルフィリアのこと好きなのね」


 「…へ!?」


 いったい何を言い出すんだこの人は。


 「だって、ミルフィリアが今いないだけで、ものすごい暗い顔をしてるわよ」


 「え? あ、いや…その…あの……うぅ……!!」


 そんなに暗い顔してたかな僕って。いや、確かに寂しいけれども。それに、好きか嫌いかで言えば…その…好きだけど。それはあくまで優しくしてくれるからであって、特に深い意味はないからね!?


 「ああ! もう、本当にかわいいわね!」


 下を向いていたら女性が頭を撫でてきた。


 「わ、私依頼探してきます!」


 置いてあったカードを取り、逃げるように離れる。次は別の人の所に行こう。絶対。


 ボードの前までやって来た僕は今日受ける依頼を探す。うーん。どれにしよう。お金がたくさんあれば報酬低いのでも良いんだけど、まったくもって余裕ないからなぁ。だからこういう、ペットの散歩や子供の遊び相手、料理つくってほしいとかの依頼はなぁ。報酬銅貨1枚だし。あと、散歩と遊び相手は依頼に出すほどのことなのだろうか。料理は、そもそもできない。


 …料理か。そういえば、ここにきて主食がパンしか食べてないような気がする。ここにはお米はないのかな。アリシエルさんとリュミナさんと行った、あのレストランも食べたのパンだったし。


 考えていたら、元日本人としてお米が食べたくなってきた。いずれ食べられると良いんだけど。


 「…依頼はこれでいいかな」


 ぺりっと依頼書をはがす。


 依頼名:ゴミ捨て
 内容:大量にあるごみを指定の場所に置いてきてください。終了後臭い消し薬をサービスします。
 報酬:銅貨4枚


 裏を見た感じ一番最初にやった場所じゃない。あの時は報酬銀貨1枚だったけど、これは銅貨4枚。何がそんなに違うんだろう。


 …まぁいいか。これならお昼には終わるし。ミルフィリアさん帰ってきてればいいんだけどなぁ。


 さっきとは別の受付に持っていき、ハンコを押してもらう。なんだか、左からすごい視線を感じるけど無視無視。受付の女性も苦笑いしてる。


 依頼書を受け取りギルドを出る。さぁてと、今日もがんばるぞー!










 「終わった」


 時間は、1時過ぎ。依頼先の家は前のより、ごみは少なかったけど捨てに行く場所が遠すぎた。おかげで結構時間がかかってしまった。でも、ミルフィリアさんはいるかもしれない。


 ちょっとドキドキしながらギルドに入ると、いつものところにミルフィリアさんがいた。やったぁ! と思い、ミルフィリアさんの所に小走りで向かう。だけど、朝と同じく受付の前にボードがあり、そして、その内容が変わっているのに気づいた。


 緊急召集! 明日Dランク以下の冒険者は12時までにギルド裏の訓練所にお越しください!


 …え? Dランク以下? つまり…僕も? …なんで?


 「ユウさん。おかえりなさい」


 ボードを見て首を傾げていると、ミルフィリアさんが話しかけてきた。


 「ミルフィリアさん。あ、これおねがいします」


 ミルフィリアさんにカードと依頼書を渡す。


 「はい。行きましょうか」


 一緒に受付に向かいカードを機械にとおす。ついでにさっきのボードの件を伝えてみた。


 「…えっと、ですね。…大声で言えませんが、前にゴブリンの事話しましたよね? その件についてです」


 コソッと耳打ちしてくる。


 「…前にゴブリンの集落があることについて話しましたよね。実はその集落は複数存在するんです。そして、今日Cランク以上集められたのは、その話し合いと討伐隊を組むため。そして明日集められるDランク以下は、同じく説明と物質などの補給に参加してほしいというお願いをするためです」


 ゴブリンの集落が複数あるって、つまりその分ゴブリンもたくさんいるってことだよね。1つの集落に何体のゴブリンがいるのかわからないけど、討伐隊を組むってことは、そうとうな数がいるんだと思う。でも、依頼先でゴブリンの話とか聞いたことないから、今のところ被害とかはないのかな?


 「…それと…その……あまり言いたくはないのですが、かなりの被害が出るかと思われます」


 ……被害? …それって、つまり……死人がでてしまうってこと?


 「……はい」


 ミルフィリアさんは暗い顔で言う。話を聞く限り僕は物資補給…裏方の仕事ってことだと思う。襲いに行く方だけど、武器が壊れたり、怪我をしてポーションが必要になったり、そんなときように指定の所に持っていくみたいな。かといって、戦場に連れ出される訳じゃないと思うから、たぶん街の近くに仮拠点を建てる感じかな…


 ……嫌だな。みんなが傷つくのは嫌だ。


 それじゃ、僕なら? 僕なら無傷でゴブリンを全滅できるんじゃないか? ……たぶん、ううん。絶対に出来る。


 僕は最強だ。…魔法は使えないけど。


 この世界でこうして生きていられるのはこの力があってこそだ。…街の人がなんでこんなにやさしいのかわからないけど。


 ともかく、みんなが困っているなら助けてあげたい。…あげたいけど……僕には無理だよ。


 神様から貰ったのは力だけで…僕の心は何も変わってない。


 ……本当に最強なのは僕なんかじゃない。私だ。そして、私を動かすのは僕だ。


 ……こんなことになるなら、神様に誰を殺しても何も感じない強靭な心でももらっとけばよかった。


 ……はぁ、誰か僕の体を動かしてくれないかなぁ。

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