ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました
第13話ー冒険者生活4日目終了
特に何事もなく依頼を終わらせた。結局あれから僕1人だけしか来なかったんだけど、おじさんがいうには、本来は何日間か分けて作業するつもりだったそうだ。僕が1人だけで、全部終わらせることができるなんて到底思ってもいなかったらしい。
報酬は1人銀貨1枚、10人で合計金貨1枚分。なんとおじさんは、1人で終わらせた報酬として、用意してあった報酬を全部持ってっていいと言っていた。つまり僕はこの依頼だけで、今の宿を約1ヶ月泊まれる程の大金を手にいれたことになった。
「うれしそうね」
アリシエルさんは微笑みながら聞いてくる。
「はい! だって金貨1枚分ですよ!」
こんなの嬉しいに決まってる! 本当は幻草の依頼は達成できる自信がなかったからなお嬉しい。…あぁ、これで、念願の服が買える。報告終わったら、早速服屋にいかないと。
「報告終わったらごはん食べる。奢る」
「そうね。もうお昼だし、ユウの分は奢るわ」
頭の中を服で埋めていると、2人からそんなことを言われた。
「大丈夫ですよ! それに私はいつもお昼食べていないですし」
この体って、なんというかお腹が減りにくいんだよね。最初はお昼どうしようってなやんでいたんだけど、お金持ったいないから夜まで我慢の精神でいってたら、毎日全然お腹がすいたことないのに気づいてしまった。だからいままで宿の分だけしかお金を使っていない。いや、何日も全然食べてないとお腹はすくけど。今はもうそんなことになる必要ないし。
「…いえ、お昼を食べましょう。そして、奢るわ」
「これ確定事項」
なぜか2人して真剣な目で言う。もしかして、さっきの言葉は逆にダメだったのかもしれない。あえて、朝食べ過ぎたかいらない風に言っておけばよかったかも。
…まぁ、でも、たまにはお言葉に甘えちゃってもいいよね? …いつもみんなに甘えてるような気がしなくもないけど。
「そ、それじゃあ…その…おねがいします」
ぺこりと頭を下げる。
「まかせなさい」
「うん」
2人して妙にやる気が出ているのはなぜだろうか。
「さあ、ついたわ。いきましょう」
そんな話をしているとギルドについた。扉を開けミルフィリアさんを探すが、ちょうど受付にいたので、そのまま3人で向かった。
「お疲れ様です。ユウさん。2人も」
ミルフィリアさんが営業スマイルで迎えてくれる。
「依頼終わりました。それとこれを」
ミルフィリアさんに、カードと依頼書とおじさんが書いてくれた手紙を渡す。この手紙は報酬の件についてだ。
「…ええと…ん!? ……1人で終わらせたんですか!?」
「はい」
ミルフィリアさんが驚いていたので答える。ふふふ…誉めていいんです…って、どうしてアリシエルさんとリュミナさんを見るの!?
「…手伝ってないわよ」
「これ事実」
「そ、そうですか…」
いまだに手紙を何度も読んだり、2人を見たりと、信じられないようだ。これにはさすがの僕も頬膨らませる。
「…あぁ! 違うんですユウさん。信じてますよちゃんと! ただ驚いてただけなので」
ミルフィリアさんが弁解してるけど、むしろその言葉が信じられないよ僕は。
「ほ、報酬持ってきますね」
ささっと、ミルフィリアさんは裏に逃げていった。まったく、スキル設定にしたんだから、信じてほしいものだ。もう。
「すねないすねない」
「かわいい」
「すねてません…!」
アリシエルさんに頭を撫でられ、リュミナさんに頬つつかれる。別に信じてくれないからすねてる訳じゃないから! 本当だから!
「お待たせしました」
裏からミルフィリアさんが戻ってきた。さっきとはうってかわっていつものミルフィリアさんに戻っている。
「こちら銀貨10枚ですね。一応金貨1枚にお取り替えできますが、どうしますか?」
「このまま銀貨で大丈夫です」
たぶんここは性格によると思うけど、あまりお釣りを多く出させたくはないタイプだ。銅貨には銅貨を銀貨には銀貨を。今回は服に銀貨を使うだろうからそのままでいく。
「はい。わかりました。それとこちらカードですね」
報酬の銀貨10枚を受け取り、ギルドカードも受けとる。これで達成数は4つ。もし、幻草の依頼も達成できれば、折り返しの5つだ。
「それじゃ行きましょう」
アリシエルさんの言葉に頷いて、ミルフィリアさんと別れる。
「どこいくんですか?」
ギルドを出で、2人のあとをついていく。それにしても毎度のことながら人がいっぱいだ。はぐれないようにしないと。
「そうねー。私達が一度行って美味しかったあの店かしらね」
「シェールストーンっていうレストラン」
「シェールストーン…?」
…石? なわけないか。
「そうそう。…と、ここね」
ついたのは、なんかすごい高級そうなレストラン。…というか、これ絶対お高い所だよね。
「あ、あぁ…あの……」
「ユウ。落ち着きなさい」
いやいやいや、ここ僕みたいなそこら辺にいる子供が入る場所じゃないって。
「大丈夫よ。ここは市民向けのレストランだから」
「行こう」
「え? えぇ!?」
リュミナさんに手をひかれ、レストランに連行される。
「いらっしゃいませ。本日は3名様でよろしいでしょうか?」
「ええ。空いているかしら?」
「はい。もちろんでございます。ご案内いたします。こちらへどうぞ」
このレストランの制服だろうか。すごくきれいな制服に包まれた男性に案内される。市民向けのレストランって言ってたけど、さすがは高級店。どうみても貴族とかの人に向けた接客だよこれ。
「こちらになります。メニューがお決まりになりましたら、そちらのベルをお鳴らしください。それでは失礼いたします」
案内された場所は個室だった。というかこの店、見た感じ全部個室だ。本当にここは市民向けのレストランなのだろうか。絶対貴族向けじゃないのか。
「それじゃ決めましょうか。好きなの選んでいいわよ」
「は、はい」
メニュー表をアリシエルさんから貰い、中を見る。
「……!?」
…僕は夢を見ているのかもしれない。ううん。絶対見ている。だってそうじゃなきゃおかしいのだ。こんな…こんな……全部の料理が金貨1枚以上するだなんて……!
ねえ! ここ市民向けなんだよね!? 本当に市民向けなんだよね!? 本当は貴族向けって言われても驚かないよ!?
「そ、そんな潤んだ目で見ないでちょうだい。本当にここ市民向けなのよ。…まぁ、市民向けでも、何回も来れるような場所ではないけど」
「それに、貴族向けのレストランだと、最低金貨5枚からのしかない」
…5枚。金貨5枚あれば、あの宿に5ヶ月は泊まれる。もしくは、あの雑貨屋さんにあった髪留めが買える。
「ち、ちなみになんですけど、アリシエルさんがくれたあのナイフ…ただのきれいな鉄のナイフ……ですよね?」
アリシエルさんはAランクの冒険者。それに、こんな所で平気で奢るとかいう思考をしている。つまり、あのとても鉄とはいえないようなナイフは……。
「え? ミスリルのナイフよ。あれ」
なにいってるの? とでも、思っているかのような顔をされた。…あ、あはは。あはははは…。
「料理…選びますね」
「? ええ。好きなの選んで」
結局、僕は金貨4枚分。アリシエルさんは8枚。リュミナさんは13枚だった。意外にも、リュミナさんは結構食べるみたい。アリシエルさんは少食だけど、1つの料理の値段がお高い。僕は金貨2枚の料理と金貨1枚のジュース。同じく1枚のデザートだけどなにか?
その後は色々とお話をしつつ料理を食べた。さすがは、高級レストラン。とてもおいしかったです。はい。
……料理を食べ終わった後は、すぐに店を出た。本当はこのまま服屋に行こうと思ったけど、どうやら2人ははまだ僕と行動するようだ。
どうしよう。本当にどうしよう。言いたくない。服屋に行きたいなんて言いたくない。期待しすぎとか思われそうだけど、絶対服屋行こう何て言うと、お高いとこに連行される未来が見える。
「どこか行きたいところはないの?」
アリシエルさんの問いにリュミナさんが答える。
「雑貨屋で会ったときと今のユウ、服変わってない」
リュミナさんが今一番指摘されてほしくない事を言ってきた。おねがいしますリュミナ様。その先を言うのはやめてください。
「服を買いに行こう。ユウの」
……終わった。
「なるほど。それはいいわね。それじゃあ服屋さん行きましょうか。ね? ユウ」
「…はい」
もう祈るしかない。安いところに行くことを…。
「といっても、服屋ならすぐ近くにあるけどね」
アリシエルさんが、レストランの向かいの左側を指差す。視線をそこに向けると、それはそれはどこからどう見ても一発でわかる高級そうな服屋が……。帰りたい。
「さあいくわよ」
今度はアリシエルさんに手をひかれ、服屋に入る。中は、いろんな服がおいてあり、ライトや装飾が、すごくきれいでおしゃれな服屋さんだった。
「いらっしゃいませ。服屋ラーナルーナへようこそ」
「ああ、店員さん。一緒にこの子の服選んでくれる?」
え? アリシエルさん? 僕が選ぶんじゃないんですか?
「わぁぁぁぁ…かわいいですね。お任せください! 必ずお眼鏡に叶うものを選びます!」
目をキラキラさせたかと思うと、服がおいてあるところへと消えていく。
「ユウはここに座って待っててちょうだい。私達も選んでくるから」
アリシエルさん? だから服は僕が選ぶんじゃ…
「行こう」
……おとなしく待ってようかな。
約30分後。
「お客様こちらへどうぞ!」
「は、はい」
ついにきてしまった。元男の僕でもわかる。これは絶対あれだ。
「来たわね」
「うん」
目の前にこれでもかっていうほど置かれている大量の服。思わず逃げ出したくなる量だ。今から始まってしまうのか。
着せ替え人形。一体何着着せられるんだろうか……あはは。
「疲れた」
宿屋に追加の3日分の料金を払って部屋に向かうと、ボフっとベッドに倒れこんだ。長かった。非常に長かった。3時間は普通にこえたよ。結局買ったのは3着分の服一式と下着を5着分。そして、代金は全てアリシエルさんとリュミナさん持ちだ。やっぱりまた奢ってもらってしまった。Aランクってお金持ちなんだなぁ。
「それに…」
じー、と、下着に目を向ける。買ってもらったのはもちろん女物の下着。今もちゃんと下着はつけてはいるけど、これは元々つけてた物だから、慣れたけど、新しい物をつけるっていうのは、ちょっと恥ずかしい。
「でも、つけないわけにはいけないよね~…」
せっかく買ってもらったものだし。それにいずれ買うつもりだったし…。
「…今の時間はだいたい17時」
確か、アリシエルさんとリュミナさんが迎えに来る時間は20時って言ってたから、あと3時間後か。チラリと、目を向ける。3時間もあれば…まぁ……。
……………………
……………
………
……
「迎えに来たわよー」
「さっきぶり」
ガチャリとドアを開ける音がなった。
「…え?」
「……あら」
「うん。やっぱりすごく似合ってる」
なんで2人が…って、うそ…。もう20時? じゃあ、3時間もやっちゃってたの?
「あんなに恥ずかしかって着ていきたくないっていってたのに、やっぱり嬉しかったんじゃない」
「あ、いや、これは…」
「さあ、行くわよ。」
いや、待って。着替えさせて。お願いだから着替えさせて!
心の叫びむなしく2人に連行される。
「大丈夫よ。もう遅いし、人なんてそうそう会わないから」
「うぅ…わかりました」
夜の街を歩きながらがっくりと肩を落とす。やっぱり部屋の中で買った服なんて着るんじゃなかった。うぅ…あのワンピースは裾が長かったから、あんまり気にならなかったけど、このスカート短いよぉ。
「……ついた」
「……わぁぁぁぁぁ…!」
場所は街の中央噴水広場。よくある丸い形の大きな噴水。だが、その噴水は所々土の場所になっており、そこにはいくつもの草が生えていた。そして、その草は言われていた通り薄く虹色に輝いている。
「すごいきれい」
「ええ本当に」
「感動」
これを見ることができただけ受けたかいがあったかもしれない。…いや、そもそもこれは受けなくても見れるか。
「さて、感動してるのもいいのだけど、問題は採取よね」
「…消えた」
リュミナさんが取ろうとしたら本当に消えてしまった。パッと消えるというより、スゥーと、本当に幻のように消えていく感じだった。
「…これが幻草」
近くまで行き至近距離で見る。本当にきれいだ。これは心を無にしようとしてもそうそう出来そうにもない。こんなことを思っていたら取れないとわかってはいるんだけど、ついつい手がでてしまう。
…プチっ
「……へ?」
「うそ…」
どうせ消えてしまうと思っていた草は、何故か消えずに僕の手の中に収まっていた。
報酬は1人銀貨1枚、10人で合計金貨1枚分。なんとおじさんは、1人で終わらせた報酬として、用意してあった報酬を全部持ってっていいと言っていた。つまり僕はこの依頼だけで、今の宿を約1ヶ月泊まれる程の大金を手にいれたことになった。
「うれしそうね」
アリシエルさんは微笑みながら聞いてくる。
「はい! だって金貨1枚分ですよ!」
こんなの嬉しいに決まってる! 本当は幻草の依頼は達成できる自信がなかったからなお嬉しい。…あぁ、これで、念願の服が買える。報告終わったら、早速服屋にいかないと。
「報告終わったらごはん食べる。奢る」
「そうね。もうお昼だし、ユウの分は奢るわ」
頭の中を服で埋めていると、2人からそんなことを言われた。
「大丈夫ですよ! それに私はいつもお昼食べていないですし」
この体って、なんというかお腹が減りにくいんだよね。最初はお昼どうしようってなやんでいたんだけど、お金持ったいないから夜まで我慢の精神でいってたら、毎日全然お腹がすいたことないのに気づいてしまった。だからいままで宿の分だけしかお金を使っていない。いや、何日も全然食べてないとお腹はすくけど。今はもうそんなことになる必要ないし。
「…いえ、お昼を食べましょう。そして、奢るわ」
「これ確定事項」
なぜか2人して真剣な目で言う。もしかして、さっきの言葉は逆にダメだったのかもしれない。あえて、朝食べ過ぎたかいらない風に言っておけばよかったかも。
…まぁ、でも、たまにはお言葉に甘えちゃってもいいよね? …いつもみんなに甘えてるような気がしなくもないけど。
「そ、それじゃあ…その…おねがいします」
ぺこりと頭を下げる。
「まかせなさい」
「うん」
2人して妙にやる気が出ているのはなぜだろうか。
「さあ、ついたわ。いきましょう」
そんな話をしているとギルドについた。扉を開けミルフィリアさんを探すが、ちょうど受付にいたので、そのまま3人で向かった。
「お疲れ様です。ユウさん。2人も」
ミルフィリアさんが営業スマイルで迎えてくれる。
「依頼終わりました。それとこれを」
ミルフィリアさんに、カードと依頼書とおじさんが書いてくれた手紙を渡す。この手紙は報酬の件についてだ。
「…ええと…ん!? ……1人で終わらせたんですか!?」
「はい」
ミルフィリアさんが驚いていたので答える。ふふふ…誉めていいんです…って、どうしてアリシエルさんとリュミナさんを見るの!?
「…手伝ってないわよ」
「これ事実」
「そ、そうですか…」
いまだに手紙を何度も読んだり、2人を見たりと、信じられないようだ。これにはさすがの僕も頬膨らませる。
「…あぁ! 違うんですユウさん。信じてますよちゃんと! ただ驚いてただけなので」
ミルフィリアさんが弁解してるけど、むしろその言葉が信じられないよ僕は。
「ほ、報酬持ってきますね」
ささっと、ミルフィリアさんは裏に逃げていった。まったく、スキル設定にしたんだから、信じてほしいものだ。もう。
「すねないすねない」
「かわいい」
「すねてません…!」
アリシエルさんに頭を撫でられ、リュミナさんに頬つつかれる。別に信じてくれないからすねてる訳じゃないから! 本当だから!
「お待たせしました」
裏からミルフィリアさんが戻ってきた。さっきとはうってかわっていつものミルフィリアさんに戻っている。
「こちら銀貨10枚ですね。一応金貨1枚にお取り替えできますが、どうしますか?」
「このまま銀貨で大丈夫です」
たぶんここは性格によると思うけど、あまりお釣りを多く出させたくはないタイプだ。銅貨には銅貨を銀貨には銀貨を。今回は服に銀貨を使うだろうからそのままでいく。
「はい。わかりました。それとこちらカードですね」
報酬の銀貨10枚を受け取り、ギルドカードも受けとる。これで達成数は4つ。もし、幻草の依頼も達成できれば、折り返しの5つだ。
「それじゃ行きましょう」
アリシエルさんの言葉に頷いて、ミルフィリアさんと別れる。
「どこいくんですか?」
ギルドを出で、2人のあとをついていく。それにしても毎度のことながら人がいっぱいだ。はぐれないようにしないと。
「そうねー。私達が一度行って美味しかったあの店かしらね」
「シェールストーンっていうレストラン」
「シェールストーン…?」
…石? なわけないか。
「そうそう。…と、ここね」
ついたのは、なんかすごい高級そうなレストラン。…というか、これ絶対お高い所だよね。
「あ、あぁ…あの……」
「ユウ。落ち着きなさい」
いやいやいや、ここ僕みたいなそこら辺にいる子供が入る場所じゃないって。
「大丈夫よ。ここは市民向けのレストランだから」
「行こう」
「え? えぇ!?」
リュミナさんに手をひかれ、レストランに連行される。
「いらっしゃいませ。本日は3名様でよろしいでしょうか?」
「ええ。空いているかしら?」
「はい。もちろんでございます。ご案内いたします。こちらへどうぞ」
このレストランの制服だろうか。すごくきれいな制服に包まれた男性に案内される。市民向けのレストランって言ってたけど、さすがは高級店。どうみても貴族とかの人に向けた接客だよこれ。
「こちらになります。メニューがお決まりになりましたら、そちらのベルをお鳴らしください。それでは失礼いたします」
案内された場所は個室だった。というかこの店、見た感じ全部個室だ。本当にここは市民向けのレストランなのだろうか。絶対貴族向けじゃないのか。
「それじゃ決めましょうか。好きなの選んでいいわよ」
「は、はい」
メニュー表をアリシエルさんから貰い、中を見る。
「……!?」
…僕は夢を見ているのかもしれない。ううん。絶対見ている。だってそうじゃなきゃおかしいのだ。こんな…こんな……全部の料理が金貨1枚以上するだなんて……!
ねえ! ここ市民向けなんだよね!? 本当に市民向けなんだよね!? 本当は貴族向けって言われても驚かないよ!?
「そ、そんな潤んだ目で見ないでちょうだい。本当にここ市民向けなのよ。…まぁ、市民向けでも、何回も来れるような場所ではないけど」
「それに、貴族向けのレストランだと、最低金貨5枚からのしかない」
…5枚。金貨5枚あれば、あの宿に5ヶ月は泊まれる。もしくは、あの雑貨屋さんにあった髪留めが買える。
「ち、ちなみになんですけど、アリシエルさんがくれたあのナイフ…ただのきれいな鉄のナイフ……ですよね?」
アリシエルさんはAランクの冒険者。それに、こんな所で平気で奢るとかいう思考をしている。つまり、あのとても鉄とはいえないようなナイフは……。
「え? ミスリルのナイフよ。あれ」
なにいってるの? とでも、思っているかのような顔をされた。…あ、あはは。あはははは…。
「料理…選びますね」
「? ええ。好きなの選んで」
結局、僕は金貨4枚分。アリシエルさんは8枚。リュミナさんは13枚だった。意外にも、リュミナさんは結構食べるみたい。アリシエルさんは少食だけど、1つの料理の値段がお高い。僕は金貨2枚の料理と金貨1枚のジュース。同じく1枚のデザートだけどなにか?
その後は色々とお話をしつつ料理を食べた。さすがは、高級レストラン。とてもおいしかったです。はい。
……料理を食べ終わった後は、すぐに店を出た。本当はこのまま服屋に行こうと思ったけど、どうやら2人ははまだ僕と行動するようだ。
どうしよう。本当にどうしよう。言いたくない。服屋に行きたいなんて言いたくない。期待しすぎとか思われそうだけど、絶対服屋行こう何て言うと、お高いとこに連行される未来が見える。
「どこか行きたいところはないの?」
アリシエルさんの問いにリュミナさんが答える。
「雑貨屋で会ったときと今のユウ、服変わってない」
リュミナさんが今一番指摘されてほしくない事を言ってきた。おねがいしますリュミナ様。その先を言うのはやめてください。
「服を買いに行こう。ユウの」
……終わった。
「なるほど。それはいいわね。それじゃあ服屋さん行きましょうか。ね? ユウ」
「…はい」
もう祈るしかない。安いところに行くことを…。
「といっても、服屋ならすぐ近くにあるけどね」
アリシエルさんが、レストランの向かいの左側を指差す。視線をそこに向けると、それはそれはどこからどう見ても一発でわかる高級そうな服屋が……。帰りたい。
「さあいくわよ」
今度はアリシエルさんに手をひかれ、服屋に入る。中は、いろんな服がおいてあり、ライトや装飾が、すごくきれいでおしゃれな服屋さんだった。
「いらっしゃいませ。服屋ラーナルーナへようこそ」
「ああ、店員さん。一緒にこの子の服選んでくれる?」
え? アリシエルさん? 僕が選ぶんじゃないんですか?
「わぁぁぁぁ…かわいいですね。お任せください! 必ずお眼鏡に叶うものを選びます!」
目をキラキラさせたかと思うと、服がおいてあるところへと消えていく。
「ユウはここに座って待っててちょうだい。私達も選んでくるから」
アリシエルさん? だから服は僕が選ぶんじゃ…
「行こう」
……おとなしく待ってようかな。
約30分後。
「お客様こちらへどうぞ!」
「は、はい」
ついにきてしまった。元男の僕でもわかる。これは絶対あれだ。
「来たわね」
「うん」
目の前にこれでもかっていうほど置かれている大量の服。思わず逃げ出したくなる量だ。今から始まってしまうのか。
着せ替え人形。一体何着着せられるんだろうか……あはは。
「疲れた」
宿屋に追加の3日分の料金を払って部屋に向かうと、ボフっとベッドに倒れこんだ。長かった。非常に長かった。3時間は普通にこえたよ。結局買ったのは3着分の服一式と下着を5着分。そして、代金は全てアリシエルさんとリュミナさん持ちだ。やっぱりまた奢ってもらってしまった。Aランクってお金持ちなんだなぁ。
「それに…」
じー、と、下着に目を向ける。買ってもらったのはもちろん女物の下着。今もちゃんと下着はつけてはいるけど、これは元々つけてた物だから、慣れたけど、新しい物をつけるっていうのは、ちょっと恥ずかしい。
「でも、つけないわけにはいけないよね~…」
せっかく買ってもらったものだし。それにいずれ買うつもりだったし…。
「…今の時間はだいたい17時」
確か、アリシエルさんとリュミナさんが迎えに来る時間は20時って言ってたから、あと3時間後か。チラリと、目を向ける。3時間もあれば…まぁ……。
……………………
……………
………
……
「迎えに来たわよー」
「さっきぶり」
ガチャリとドアを開ける音がなった。
「…え?」
「……あら」
「うん。やっぱりすごく似合ってる」
なんで2人が…って、うそ…。もう20時? じゃあ、3時間もやっちゃってたの?
「あんなに恥ずかしかって着ていきたくないっていってたのに、やっぱり嬉しかったんじゃない」
「あ、いや、これは…」
「さあ、行くわよ。」
いや、待って。着替えさせて。お願いだから着替えさせて!
心の叫びむなしく2人に連行される。
「大丈夫よ。もう遅いし、人なんてそうそう会わないから」
「うぅ…わかりました」
夜の街を歩きながらがっくりと肩を落とす。やっぱり部屋の中で買った服なんて着るんじゃなかった。うぅ…あのワンピースは裾が長かったから、あんまり気にならなかったけど、このスカート短いよぉ。
「……ついた」
「……わぁぁぁぁぁ…!」
場所は街の中央噴水広場。よくある丸い形の大きな噴水。だが、その噴水は所々土の場所になっており、そこにはいくつもの草が生えていた。そして、その草は言われていた通り薄く虹色に輝いている。
「すごいきれい」
「ええ本当に」
「感動」
これを見ることができただけ受けたかいがあったかもしれない。…いや、そもそもこれは受けなくても見れるか。
「さて、感動してるのもいいのだけど、問題は採取よね」
「…消えた」
リュミナさんが取ろうとしたら本当に消えてしまった。パッと消えるというより、スゥーと、本当に幻のように消えていく感じだった。
「…これが幻草」
近くまで行き至近距離で見る。本当にきれいだ。これは心を無にしようとしてもそうそう出来そうにもない。こんなことを思っていたら取れないとわかってはいるんだけど、ついつい手がでてしまう。
…プチっ
「……へ?」
「うそ…」
どうせ消えてしまうと思っていた草は、何故か消えずに僕の手の中に収まっていた。
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