ちいさな神様の間違いで異世界に転生してしまいました

きくりうむ

第11話ー冒険者生活4日目2

 数ある中で選んだのはこちら。


 依頼名:幻草の採取
 内容:一度でいいので幻草を手にいれてみたいので、どうかよろしくお願いします。なお、事前にうちに来る必要はございません。手にいれることができたら来てください。
 報酬:金貨1枚


 これまた、異世界ならではの言葉が出てきた。


 読みはそのまま、まぼろしそう。生息値は、この街中央の噴水広場。そうこの街の中である。だからこそEランクの依頼になっている。


 幻草というのは、噴水広場に生えている草の事で、普段はなんの変哲のない草だが、その草が夜に月の光を浴びると、虹色に薄く輝くらしい。ただし、その輝いている草を取ろうとするとその草は幻のように、消えてなくなってしまう。だからこそ、幻草と言われている。


 報酬額が高いのは、ただたんに採取難易度が高いから。だって、取ろうとすると消えるんだからそもそも取ることが難しい。じゃあ、どうやってとるのかというと、幻草に対する全ての感情を停止させること。たとえば、幻草にきれいとか、欲しいとか、何にも思わずに取る。もしちょっとでも、幻草に何らかの感情があれば消えてしまう。


 要は無にするのだ。心の中を。そうすれば取れる…らしい。


 それで、なぜこれを選んだのかというと、報酬額が高かったからです。


 だって、金貨1枚だよ? 金貨1枚あれば服とか買えるんだよ? しかも、おまけに食べ物とかも買えるんだよ? 金貨あれば、服を数着買えるってミルフィリアさん言ってたもん。新品だと1着しか買えないけど…。新品の服金貨1枚とか高いよ。しかも最低金貨1枚だからね。古着だと、銅貨1枚からなのに…。ちなみに買うのは古着の方です。はい。


 いったいいついなったらこの貧乏生活を脱却できるのか。かなしみしかない。


 …さて、分かると思うけどこれは夜にしかできない依頼なので、今日はもう一個依頼を受けることにした。それがこれ。


 依頼名:木材運び
 内容:大量の木材を入手したので、指定の場所まで運ぶ手伝いをして欲しい。
 報酬:銀貨1枚
 募集人数最大10名


 今のこの身体能力では普通に簡単なお仕事。でも、素の身体能力とか言われても、絶対に誰も信じないと思うから、スキルで身体能力上がっているという設定にするつもり。


 というわけで、ミルフィリアさんにもう1枚を見せる。


 「ユウさん。変なのを選びましたね…」


 なんか呆れられた。……うん。


 ミルフィリアさんは、他の依頼をボードに貼り付け、終わったら僕のてを引いていつもの受付に行く。そして、いつもどおり誰もいなかった。


 「ふぅ、ユウさん。まず、この幻草の依頼は特集依頼になっていまして。まず、期限がありません。依頼書は誰かが達成するまでボードに貼られ続けます。人数に規定がありません。つまり何人でも受けることができる。という感じになります」


 なるほど。誰かと鉢合わせするかもしれないと。いやまぁ、別にいいけど。


 「できれば、誰かと一緒に受けて欲しいと思ってるんですが…」


 ミルフィリアさんは、なぜか心配そうな目で見てくる。どうしてだろうか。


 「…はぁ、あのですね。ユウさんはもう少し自分の姿を自覚してください。夜は何が起こるか分からないんですから、ユウさんみたいな可愛い女の子が1人で出歩くのはだめです」


 注意されてしまった。


 「でも、一応私、身体能力強化のスキル持ってるからだいじょ…ひぃ!?」


 「…ユウさん。たとえスキルで上がっていたとしても、襲われる恐怖というのは変わりませんよ」


 「……あ」


 ……そっか。そうだよね。金貨1枚が魅力的だったから、そんなこと気にしてもなかった。たとえ今は力を持っていたとしても、元々ただの一般人だった僕が、いきなり襲われたら怖くて対処なんてできるわけないよね。しかも、ただでさえ今は女の子なんだから、狙われやすそうだし。


 「ごめんなさい。…やっぱやめ「なら私達が護衛としてついていってあげるわ」……?」


 やっぱりやめようと思い、伝えようとしたら急に後ろから声が聞こえた。


 「…シエルにリュミナ!?」


 「久しぶりねフィリア。元気してた?」


 「久しぶり」


 後ろからやってきたのは、昨日雑貨屋さんで会った、アリシエルさんとリュミナさん。そういえば冒険者っていってたっけ。それと、なんだかミルフィリアさんと親しい模様。


 「どうして2人がここに?」


 「実は王都から依頼を受けて、この街の先にある森に用があるんだけど…」


 「上級ポーション買い忘れて、今リーダーが領主様の所の娘と遊んでる。そしたらお礼に上級ポーション譲ってくれるらしい」


 「あはは。なるほど。ところで2人は今ランクはどのくらいあがったの?」


 2人はミルフィリアさんの問いにカードを見せる事で対応する。


 「……え、Aランク」


 カードを見たミルフィリアさんは固まってしまった。それにしても、2人ともAランクの冒険者だったんだ。あの牙突のパーティーよりも高い。すごい。


 「ここから出るときは、Cランクだったからね。結構苦労したわ」


 「がんばった」


 「ちょっと失礼します」


 そういって、カードを2人に返し、裏に消えていくミルフィリアさん。どうしたんだろう。


 そして1分後。


 「どうでしょう?」


 すっごいニコニコしながら数十枚の依頼書を持ってきた。…うわぁ……ミルフィリアさん容赦ない。


 「やるわけないでしょ…依頼中よ」


 「たまりすぎ」


 2人からの容赦ない言葉がミルフィリアさんを襲う。


 「Aランクになったのなら、こう片手間でいけますいけます。…この街Aランク冒険者2人しかいないんですよね。間に合ってないんですよね……」


 暗い顔をしながら言う。こ、高難易度の依頼って中々減らないんだね。


 「はぁ…受けるにしても今の依頼が終わってからね。一応リーダーに相談くらいはしておくわ」


 「…はぁ、しかたない」


 「ありがとうございます! まってますよ!」


 よかったね。ミルフィリアさん。それで僕の依頼の件は。


 「はいはい。それで、この話は終わりにして、どうするの?」


 「うん。ユウの受ける依頼護衛するよ」


 そんなことを思っていると、アリシエルさんとリュミナさんが、タイミングよく、話を戻してくれた。


 「あ、そうですね。Aランクになった2人なら大丈夫ですね。ユウさんどうしますか?」


 「…えっと、ご迷惑じゃないですか?」


 手伝ってくれるのなら、すなおに嬉しい。でも、どうして手伝ってくれるのだろうか。


 「全然迷惑じゃないわよ。私達リーダー帰ってくるまで暇だし」


 「明日帰ってくるとは聞いてる」


 「それなら、その、お願いします」


 「…はい。それでは、幻草の依頼と、木材運びの依頼両方受け付けますね」


 「おねがいします」


 幻草の依頼書はまた貼られるのでいいとして、木材運びの依頼書はもら……えない?


 「あ、こちらは最大人数10名なので、合計10名受けるまで貼られ続けますよ」


 「あ、はい」


 どっちも貰えなかった。


 「こちらが地図になります。この場所に向かってくださいね」


 ミルフィリアさんから、地図が書かれた紙が渡される。


 「暇だし私もついてくわ。リュミナはどうする?」


 「私も行く」


 「…うぇ!?」





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