天才の天災

春夜

桜花、実は...

妖狐が去ってから一月が過ぎた。
することも相変わらずなく、レンは
寝ているだけの日常を繰り返していた。
「ご主人様、もう昼過ぎになります。
そろそろ起きられませんか?」
「別にいいんじゃないかい?
やることも無いんだし、寝ている方がボスにとっては有意義な時間の使い方だと思うけどねぇ。」
「ココ、ますたーの邪魔する?」
「もう!私が悪者みたいじゃないですか!!」
「...冗談。」
ガチャッ
「なんやなんや。外まで声漏れとるで...
嬢ちゃんらが元気なのはええ事じゃけど、一応ここ、男子寮やいうの忘れてへんやろな...」
桜花が授業から帰ってきた。
最初の頃は熱心に行っていた学園を、
桜花は披露戦のあとからサボるようになっていた。
今回は久しぶりの登校である。
「他の皆さんに説明してきましょうか?」
「やめぇやめぇ!そんなんしたらどんな目ぇで見られるかわからんわ...」
「私達は気にしませんが...」
「ワシが気になるんじゃ...」
「では、辞めておきます。」
「ほんま、頼むで...」
「それより桜花、あんた、
最近サボってボスのこと見たり、自主練してるみたいだけど何かあったのかい?」
「なんや...バレとったんかいな...」
「そりゃあ、あたしらは一日のほとんどボスの寝顔見てるからね。
他からの視線は何となくわかるさ。
披露戦の優勝特典の勇者育成係に精を出してるのかい?」
「そんなわけあるかい。ワシにとって勇者がどうなろうが正直どっちでもええ。
前にも言うたけどな、
わしは強い奴と闘うために学園に入った。それまでも、あの狐の元離れてからはずっと旅しとったんじゃ。
披露戦、あんま覚えとらんのじゃ。
レンが辞退した後、闘ってくれる言われて張り切っとったのは覚えとるんじゃが、
その後気づいたら医療班に運ばれとったんでな...」
「そんなの、ボスが勝ったにきまっt」
「そんなんは大体分かっとる。
運ばれとるいうことは多分、わしはレンに負けて死んだんじゃろうってのは、分かるんじゃ。」
「なら何がわからないんだい?」
「レンは何でワシを倒したんじゃ?
格闘?魔法?そんなんが全く覚えとらんのじゃ。でも、そんなんはどうでもええんじゃ。」
「??何言ってるんだい?」
「...桜花、バカ?」
「やかましわ!気づいたら死んどる、
それがわしとレンに少なくとも開いとる差じゃ。ほんまの話、強い奴探しに学園入ったはええが、頭ええ訳じゃないから授業はさっぱりやし、お前ら以外にピンとくる奴もおらへんからの。わしなりに特訓しとるんじゃ。」
「...バカ。」
「断定すんなや!わしはバカちゃう!
そらぁ、魔法とかあんなややこしい構造分からへんけど...」

桜花はバカだった。

「そんなことより、お前ら、もうじきテストじゃろ。勉強はええんか?」
「「受けるの?」」
ミネアとシズクがハモった。
桜花は呆れたように頭を抱えてため息をこぼす。桜花の独り言が虚しく空を切った。

「お前らは何しに学園通おとるんじゃ...」

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