天才の天災

春夜

勇者コウキと敬語レン

「なぁ君。ちょっと待ってくれないか?」
俺達は部屋に戻る途中の中庭で知らない奴に呼び止められた。
俺と歳は変わらないだろうし、
審判や教師って訳でもなさそうだ。
シズクとリズはその男の様子を伺いながら、いつでも仕掛けられるようにしている。
「誰だい?あんた。ボスの知り合いかい?」
男にミネアが明るく話しかける。
「2人とも殺気を抑えろ。
少しはミネアを見習...」
訂正。
笑っているが目は座っておらず、
頭を搔くように後ろに伸ばした手には
肩から掛けてある大剣の柄が握られていた。
「はぁ...」
もう少し血の気を抑えて欲しい。
誰にでも喧嘩腰なのは面倒事を増やすだけだ。
「何か用か?」
「君の闘いを観客席から見させてもらったよ。強いんだね。」
「まぁな。」
「さっき実況の人が言ってたけど、
授業に出てないっていうのは本当かい?」
「ああ。」
「それはいけないね。
学業は学生の義務だよ。
入学しているなら尚更だ。」
?妙に聞き覚えのある言い回しだな。
こいつ、もしかして...
「勇者様がそのように仰るのでしたら、
以後、気をつけることにします。」
(ボス!?)(ますたー?)(ご、ご主人様?!?!)
俺がこの世界に来て初めての
敬語&丁寧な対応にミネア達が驚く。
リズは俺の中にいた時に向こうの世界の俺のことも詳しく知っている為、さほど驚いてはいなかった。
「うん、それがいい。
それと、もう1つ話があるんだけど...」
「...なんですか?」
「君に魔王討伐のパーティに入ってもらいたいんだ。」
「...僕がパーティに、ですか?」
「うん。君はこの披露戦を勝ち取るほどの実力者であることは分かったし。
どうだい?その力を、国のために使わないかい?」
「いえいえ。そう言って頂けるのは光栄ですが、自分はまだまだ未熟なもので...
お断りさせていただきます。」
「...そうか。残念だな。
ま、すぐじゃなくてもいいよ。
僕の名前はコウキ。勇者のリーダー、ってことになるかな。いつでも歓迎するから、興味を持ったら会いに来てよ。」
「はい。では、失礼します。」
そのまま部屋まで戻るレンの後ろを、
動揺しながらも置いていかれないように
ミネア達が続いてくる。

部屋に戻ると、ココ達が口を開く。
「ご主人様!ど、どうかされましたか?
私でよければ悩みなどお聞きしますよ?」
「...ますたーは、多重人格...?」
「あのボスが...敬語...」
部屋に戻るなり、失礼な奴らだ。
「いいから、忘れろ。
こういう日もある。」
それよりも疲れた。
敬語を使ってると色んなことに気を回さないといけないから、精神的に疲れる。
「さっきの奴が勇者ねぇ...
戦わなくて良かったのかい?ボス。」
「まだお前らより弱いだろ。
魔王討伐とか言ってたな。
そのぐらいになれば少しは遊べるだろ。
それまで待つよ。」

そのままレンは眠った。
しばらくしてミネア達は...
「さっきは驚いちまったけど...」
「ビックリ...でも...」
「え、えぇ、驚きましたけど...」
「マスターの記憶から、こういうマスターも知ってはいましたけど...」

「「「「貴重......!!!」」」」

珍しい敬語レンを見れた喜びを
静かに噛み締めていた。

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