天才の天災

春夜

解呪法

「お、おい...一体、何が起こったんだ?」
「わからねぇ、速すぎて見えなかったぞ…」
「無口な女が消えたと思ったら、いきなり...」
観客席には、2人の戦いを目で追えたものは誰一人いなかった。
フィールドの中央には不服そうなシズクと
頬から血が滴るミネアの姿があった。

「ビンゴ、だと思ったんだがねぇ…
さてはシズクのやつ、あたしに弱体化でもかけていやがったね。」
「むぅ。いけると思ったのに。
やっぱりミネアは強い。ギリギリで躱された...でも、次は当てる。」

~シズク~
弱体化かけても、ここまで動けるのは予想外。
次は当てると言った。でも、ミネアに同じ攻撃は通用しない。
念の為、呪いをかけて良かった。
あとは、発動まで時間を稼ぐだけ。

~ミネア~
弱体化は瞬発力の一点にかけられちまったってところかね…
さっきのシズクの攻撃の影投影、
影投影は出した影の数だけ、所有者の能力が分散するのは、前にシズクから聞いた気がする。
あえて数を出して弱い影を攻め込ませたのも、あたしに弱体化を気づかせないため、か。
アサシンってのは、無駄な動きがないね。
あたしみたいなタイプのやつは基本感覚で戦ってるようなもんだから、ちょっと分が悪い。
まずは弱体化を解かないとね…
模擬戦でシズクに勝ってるとは言えど、
油断なんか出来たもんじゃない。

「半龍化」
ミネアの姿が変わる。
小さいドラゴンの尻尾が生え、
皮膚は硬い鱗で覆われる。
生え揃っていた歯は見る影もなく、
ギザギザの歯がはえている。
髪と同じ茶色だった目が、血のような深い赤に変わっている。
ミネアがこのスキルを使った訳は2つ。
1つは竜人族は龍化を使うと、あらゆる弱体魔法や呪いを体内で浄化し、受け付けなくなる。
2つ目は人型よりも龍としての力を発揮でき、龍よりも動きやすいのが理由だ。

「へぇ...シズクのやつ、弱体化だけじゃなくて呪いまでかけてたのかい。
半龍化使ってなかったら、気付かずに死んでたかもねぇ…」

ダッ!と勢いよくシズクが地を蹴り、
ミネアとの距離を一気に詰める。
「龍神の爪痕」
ミネアはシズクに向けて軽く腕を振り下ろす。
刹那、シズクの前の地面に3筋の大きな裂け目が出来る。まるで爪痕のように。
ミネアの攻撃をギリギリで躱したシズクは
止まることなく直ぐにまた距離を詰める。
「炎線」
牙が見えるミネアの口に炎が集束していき、シズクに向けて真っ直ぐに放たれる。
「ッ!!」
シズクは大きく飛び退き攻撃を躱しつつ、
すかさず攻撃を仕掛ける。
「インビジブル・スラッシュ」
透明な風属性の刃がミネアに向かって飛ぶ。
「これくらい、なんてことないよ!」
ミネアは自分の腕で刃を弾く。
金属どうしのぶつかり合うような、
耳障りな音が響くが、ミネアの鱗は傷一つない。
お互い一息もつかない攻守を繰り広げ、
シズクがあることに気づく。

何故、呪いが発動しないのだろう。
何故、弱体化をかけたはずなのに対応速度が上がってきているのだろう。

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