天才の天災

春夜

トーナメント

「さて、闘技場にSクラスの生徒の皆様の入場を確認しましたので、そろそろトーナメント表を皆様にお見せしましょう!
フィールド上にあります、モニターをご覧下さい!」
闘技場中央にあった大きなモニターに
トーナメント表が映し出される。
もちろん、授業に出ていないからほとんど知らない名前だ。
1試合目に桜花、3試合目にアリシア、
4試合目にシズク対ミネア、7試合目に俺となっている。
いきなりミネアとシズク2人の戦いを見れるのは嬉しいが、自分が戦えないという悲しさもある。まぁそれはそのうち別空間で模擬戦でもしよう。
「おぉ、レン!ここにおったんか!
探したぞ。」
「何か用か?」
「そんな寂しい事言わんといてくれや。
トーナメント、レンと闘うんは最後になってしもたな。」
「...そうだな。」
シズクかミネア、勝った方が俺と戦うのはまず間違いないだろう。
だが、俺が負けることは無い。
2人がどれだけ強くなったかは楽しみだが、もしかしたら俺を殺せるかもなんて期待はしていない。
期待しているとすれば、かすり傷ぐらいは付けてくれるかなぐらいだ。
桜花もあの槍を使うのならまず負けないだろう。
アリシアや他の奴らがどれほど闘えるのかは全く知らないが、あの槍は常人に攻略出来るものじゃ無い。
2人の戦い以外に興味はないし、部屋にでも戻ろう。
自分の前の試合で、この学院の生徒の証明とされるリストタグが知らせてくれるみたいだし。
「ミネア、シズク、部屋に戻るぞ。」
「はいよ。」「ん。」
「なんや、ワシの試合は見ていかへんのか?」
「興味ないからな。」
「冷たいのぅ。
同部屋の仲間がこれから闘うっちゅうのに、応援もなしか。まぁええわ。
レン!決勝で待っとるぞ!逃げんなや!」
レンは出口に向かいながら、肩越しに手をヒラヒラさせる。
「せいぜい、楽しませてくれよ。」
「おう!」
出口目前で、後ろから呼び止められる。
桜花ではない、女の声。
「レン様!」
「ん?なんだ、アリシアか。どうした?」
「試合、見ていかれないのですか?」
「ミネアとシズクの闘いは見るよ。」
「そう、ですか...」
顔を見た訳では無いが、少し落ち込んだ様な声が返ってくる。
「そーいえば、お前も闘えたんだな。」
「レン様程じゃありません。
私は王女ですが、もしもの時のために自分の身を守れるだけの力はつけたいなって、レン様に助けて頂いたあの時に思ったんです。」
「そうか。」
「レン様は、どうして学院にご入学されたんですか?レン様はお強いですし、
学ぶ事もあまりないように思えます。
授業にも全く出ておられないようですし…」
「学院長が頼み込んできたからな。
俺も学院に入るつもりなんてなかった。」
「そうなんですね。レン様が授業にでられないから、桜花さん、落ち込んでいましたよ?でも、ここ数日はすごくニコニコしておられました。「もうちょっと辛抱したら、あいつと闘える!」って。
たぶん、レン様のことですよね?」
「そうだろうな。」
「レン様は楽しみではありませんか?」
「あいつと闘うことがか?」
「んー、それもそうですが、この催し自体がです。」
「こいつらとの闘い以外はそうでもねぇな。」
「お傍におられるお二人共、お強いんですね。何となく分かります。オーラ、とでも言うのでしょうか?」
やっぱりSクラスともなると強いってことはバレるか…
「あ、レン様はご存知でしたか?」
「何がだ?」
「この披露戦、異世界の勇者様方も見にこられるそうですよ!
大事にはしたくないそうなので、
王家だけの秘密ですが...」
っ!
「それは、面白いな…
アリシア、ありがとな。この披露戦、
少しは楽しめそうだ。」
「?そ、それは良かったです?」
アリシアは意味がわからなそうに小首をかしげる。
俺は急いで学院長に念話を飛ばす。
(おい、エギル。トーナメントに出場する俺の名前をディーオに変えてくれ!)
(ディーオ?それは構わんが…)
エギルが何か言おうとしていたが、
俺の用は伝え終わったので念話を切る。
ディーオとはイタリア語で神だった気がする。まぁ、偽名はなんでもいい。
勇者にレンだと気づかれなければ。
この前神眼で調べた時に前の世界の知り合いが来ていることはわかった。
そいつらと闘う時に正体を明かしたい。
ま、ちょっとした遊び心だ。
トーナメントに映っていたのはものの数分。
他の奴には精神魔法で記憶を弄らせてもらおう。
アリシアの記憶は結構前に助けた時から名前を知られているので、探し出すのがめんどくさい。
「アリシア。」
「は、はい。どうしました?レンさ」
「シーッ。」
アリシアが名前を言い終わる前に口を人差し指で抑える。
「いいか?アリシア。この披露戦が終わるまで、俺の名前はディーオだ。いいな?」
「ぇ...で、でも、レ」
「ディーオだ。」
「は、はい。ディーオ様ぁ。」
前の世界でも人に興味がなかったレンには、今のが少女漫画の胸きゅんシーンだ、などとは思いもしない。
今も以前も、レンの容姿は誰が見てもイケメンだ。これをされておちない女はいないだろう。
その証拠に、アリシアはとろけた表情でレンを見つめている。
「1回戦の勝者は、桜花元帥ィィ!!!!」
ワァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!
観客の歓声が響き渡る。
早く戻らないと、寝る時間が減ってしまう。
「じゃあまたな。アリシア。」
「はい。ディーオ様。」
最後までとろけた表情をしていたアリシアを、ミネアとシズクは少し睨んでその場をあとにした。

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