天才の天災

春夜

Sクラス披露戦、開幕

「お前はホンマにずっと寝てばっかじゃのぉ...
たまには授業に出て、体動かしたらどうじゃ?」

俺が入学してからおよそ1ヶ月がたった。
特に変わったことは無い。
毎週ミネア達と教室に顔を出して帰る、
その繰り返し。
桜花もココ達がいる生活にも慣れてきたようだ。

「毎週出てるだろ?」
「すぐに帰ってしまうじゃろ!
同じクラスの奴らもお前と話したそうなやつもおるし、たまには授業受けへんのかいな?」
「ミネアとシズクはどうする?」
「ボスに任せるさ。」
「ますたーと、一緒。」
「じゃあ受けることは無いな。」
「嬢ちゃんらもブレへんのぉ...
自分の意思とかないんかいな…」
「ボスについて行くってのは、
あたしらの意思さ。これでもやりたい様にやらせてもらってるよ。」
「ん。」
「はぁ...
ところでレン。明日はさすがに出るんじゃろ?」
「明日?」
「聞いてへんのかいな。
この前話しとったSクラス披露戦じゃ。
学院中この話題で持ちきりじゃろ?
...って、おまんらは部屋から出てないんじゃったな…」
「へぇ、披露戦は明日か。
エギルに許可取らないとな。」
「大魔道士を呼び捨てとか、バチ当たるぞ。」
「そんなものがあるなら当たってみたいもんだな。」
呆れる桜花を適当に流しつつ、エギルに念話を飛ばす。
許可とは言ったが、あくまで内容は
一方的なもの。
(エギル、レンだ。明日俺達も出るから、
そのつもりで。)
それだけ伝えて切る。
エギルは念話を使えないため、向こうからかかってくることはない。
携帯電話より便利だな…
「許可は取れた。」
「おまんら部屋から1歩も出とらんじゃろ?」
「念話を送ったから、出る必要は無い。」
「もうレンはなんでもありじゃのぉ...
大抵の事じゃ、もう驚かへんわ…」
まぁ、大抵の事は出来るからな…
「レンと嬢ちゃんらも出るっちゅーのは分かったわ。明日、楽しみじゃのぉ!
レン、手ぇ抜くなや!」
「あぁ。」
「ほな、ワシはもう寝るとするわ。
こんな時間じゃ、おまんらも寝るんじゃろ?」
「よく分かったな。」
「同じ部屋で生活しとるんじゃから、大体わかるよぉになってもぉたわ。
レンはいつもそんな喋る方じゃないが、
眠なったら一段と口数が減るしな。」
「ご主人様がお休みになるのでしたら、
私達も準備致しましょう、ミネアさん、
ココちゃん。」
「今日は誰だったか…」
「ますたーの、隣。」
「シズクちゃん昨日もご主人様の横だったじゃないですか!」
「もう寝るいう時に騒がしいのぉ...
お前も大変じゃな、レン。」
「......」
「早っ!よぉこんな中で寝られるもんやわ…しっかり寝ときぃや。レン。
明日はお前がえらい驚くワシの技を1発は食らわしたるさかいな...」

寝てなどいない。
返事を返したらこいつはまた話をし出すから無視しただけ。
だが、まぁ、楽しみだ。
あの槍の威力はどんなもんだろう。
俺にダメージを入れられるのか?
魔法は付与されているんだろうか…
戦う時の楽しみのために鑑定はしていない。
俺が楽しみにしているのは桜花では無い。
あの槍とミネア達の成長だけだ。
前の世界でも俺は死ぬことは無かった。
ヤクザにあえてボコボコにされていた時もあったが、軽傷で済んだ。
鉄パイプで思いっきり頭を殴られたこともあったが、こぶすら出来なかった。
明日か...俺を殺せるやつはいるのだろうか…

結局、レンの隣にはココとシズクが寝て、
ミネアは庭で素振りをして朝を迎えた。

「Sクラス披露戦、いよいよ開幕致します!本大会はトーナメント戦での戦いとなります。フィールド内は学院長でもある大魔道士、エギル様直々の復活魔法が付与された結界がはられており、中で死んでしまっても外に出れば生き返るといった効果があります!
参加者の皆様は、安心して全力を賭して
戦いに挑んでください!
1時間後にトーナメント表を参加者と観客の皆様にご提示します!
では、トーナメント開始まで、もうしばらくお待ちください!」
ワァァァァァァ!!!!!!!!!!!!

「うるさい...」
「あ、ご主人様、お目覚めですか?
もうそろそろお時間です。」
「...これだけうるさいと、誰でも起きるだろ...」
見渡すが、ミネア達と桜花はいない。
「3人は?」
「ミネアとシズクはもう少し鍛錬してから会場入りすると言っていました。
桜花さんは、ほーむるーむ?というのがあると、少し前に教室に向かわれました。」
「そうか...ん!」
ベッドの上に座り、思いっきりノビをする。
普段寝ているだけだった体が、ポキポキと音を鳴らす。
「久しぶりの運動だな…」
「ご主人様、嬉しそうですね!」
「そうか?」
「はい!何だかいつもよりキラキラしてます。」
「あいつらの成長は楽しみではあるな。」
「ふふっ。二人とも頑張ってましたもの。きっとご主人様を楽しませてくれると思います。」
「期待しておくよ。」
「ところで、その...」
「なんだ?」
「わ、私も見に行ってもよろしいのでしょうか…私は生徒じゃないですし、
やっぱり、お留守番していた方が...」
ココが目に見えてシュンとしている。
「いいんじゃねぇか?
何か言われたら俺がエギルに話を通すし、退学とかになっても別にいいし。」
別に来たくて入学した訳でもないからな。
「ほ、本当ですか?
ご主人様のご活躍、楽しみにしています!」
「見えるといいな。」
「どういうことですか?」
ココは戦闘はしていないから、ミネアとココとの戦いは間違いなく目で捉えることが出来ないだろう。
「なんでもない。俺達も行くぞ。」
「はい!」
そう言って黒を基調とした装備に着替え、
部屋を後にする。

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