天才の天災

春夜

ハクロ

「ワォーーーーン!!!!」
オーガ、オーク、ゴブリン種約4000の屍の山の上に立ち、純白の狼から大きな勝利の咆哮が上がった。
俺達は屋敷から戦いを投影魔法を使って見ていたが、正直予想以上だった。
このフェンリルが保有している雷魔法の中に「瞬雷」というものがある。
雷を身にまとい、光の速さで移動し攻撃するというものだ。
俺はてっきりこれを使うのかと思っていた。
しかしフェンリルは使わなかった。
もちろん俺の読み通り、瞬雷を使った方が早く敵を壊滅させることが出来た。
だが、フェンリルは力はもちろん知能も高く、陸上生物の頂点と言われている種らしい。そして群れることがないことから、
「孤高の覇者」とも呼ばれている。
このフェンリルがしたのは戦いではなく、
俺へのアピール。
敵陣の前に転送して、ゆっくりと歩きだし、体に雷を纏う。それと同時に、
空は黒い雲に覆われた。
フェンリルが歩く度に、けたたましい音を上げて黒い雷が空から降り注ぐ。
敵陣の中央に着く頃には、魔物の3分の1は黒焦げになって倒れているようになった。真ん中で体に遥かに強い雷を纏い、
一声あげた時、自分の周りに雷よりも遥かに大きい、光の柱が振り下ろされ、冒頭に至る。

レンの口角は自然と上がっていた。
「へぇ、ゾクゾクさせてくれるじゃねぇか…俺が他のことに興味を持ったのなんていつ以来だ?」
(俺もこいつと闘いてぇ…
こいつなら、俺にダメージを与えられるかもしれない...)
「...ますたー、嬉しそう...」
「おいおい...そりゃあここまで強いヤツとは会ったことがなかったからねぇ。」
(ボスは戦闘狂じみた所があるからねぇ…
多分今頃、闘いてぇ!とか考えてるんじゃないかね…)
「「...」」
「?あら?お二人共、どうか致しましたか?」
リズが言葉をかけたのは、終始虚空を見つめているギルドマスターとランカと呼ばれる秘書だ。
「ば、バケモノ...」
「こんなの...魔物の群れより...危険視しないといけねぇ...」
「ところでご主人様、あの子に名前はお付けになるのですか?」
「そうだな。と言っても、俺にそんなにセンスがある訳では無いからな…
白い狼を少し変えて、『ハクロ』ってところかな…」
「ハクロちゃん...素敵だと思います!」
「あたしらは呼び名があればなんでも賛成だ。そんなことより、もっと練習量増やさねぇと、ハクロにおいてけぼりを食らっちまうねぇ...」
「ミネア、明日も、鍛錬?」
「ん?あぁ!こんなの見せられちゃ、
甘えてらんないからね。」
「私も、いい?」
「珍しいねぇ。シズクが自分から鍛錬なんて...ボスに捨てられるのがそんなに嫌なのかい?」
「私の居場所...ここしかない。」
「ははっ。」
ミネアは笑いながら、シズクの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「あたしもこのままボスのそばにいられたらって思ってるよ。
一緒に頑張ろうな!」
「ん。」

「転移魔法・帰還」
ハクロの立っている屍の山の上に魔法陣が現れ、ハクロが部屋に戻ってきた。
「合格だ、フェンリル。
今日からお前の名前は『ハクロ』だ。
普段は寝室か庭に居るといい。」
「ウォゥ!」
こうして新しい駒がまたひとつ増えた。
そしてハクロ合格の影響でミネア、シズク、リズの士気が高まり、輝かしい急成長を遂げるのは、もう少し先の話。

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