天才の天災

春夜

秘書

眠い...
進化スキルを使った翌日、今までにない
怠惰感と眠気が襲ってきた。
眠いなら寝ればいいと考えていた俺の考えは間違っていたようだ。
眠りすぎて頭が痛い。でも眠い。
そんな状態が1時間ほど続いている。
リズに勧められて使った進化スキルの副作用のようなものらしい。
リズが叡智に戻って調べたところ、明日にはいつも通りに戻るそうだ。
「うぅぅ〜...」
ベッドに伏せて、ゾンビのような呻き声が上がる。
「な、何かリラックス出来るものとかないでしょうか…」
「ますたー、水、いる?」
「ご主人様、頑張ってください!
ずっとおそばにいますので、なんなりと!」
「あんた達ねぇ...ほっときゃ治るんだ。
そんなに心配しなくても平気だよ。
なにせボスだぜ?平気に決まってるじゃないか。」
「そんなこと言うミネアさんだって、
ご主人様がうなされてからずっとそわそわしてますよ!」
「し、してねぇよ!」
うるさい...屋敷の中も王国内も、騒々しい...
そんなことを思っているそばから、
迷惑なやつが来やがった...
「ココ...客だ...」
「え?家のベル鳴りました?」
「いや、今着いたみたいだぞ…」
カランカラン
屋敷に着いているベルと呼ばれる魔道具が鳴る。
「あ、私、少し出てきますね。
ミネアさん、リズさん、特にシズクちゃん、抜け駆けは無しですよ?」
「わかってるよ。」
「し、しませんよー。」
「......」
「シズクちゃん?!」
「...冗談。約束、する。」
「嘘には思えませんでしたが…
絶対ですからね!」
そう言い残してトコトコと玄関に走っていった。
そして少ししてすぐに戻ってきた。
「ご主人様、冒険者ギルドのギルドマスターの秘書の方がお見えになられました。如何致しましょう。」
「追い返せ。」
「かしこまりました。」
そして再び玄関に向かう。
数分後に慌ただしい足音が近づいてきた。
「レン様はおられますか!」
扉を開けてハキハキと喋る女性が1人、
ココはその後ろから追いかけてきた。
「も、申し訳ありません!こちらの方が
勝手に...」
「...はぁ。」
面倒なのは目に見えている。
「俺に何か用か?」
「レン様、強引に訪ねて申し訳ありませんでした。私は冒険者ギルド所属、ギルドマスターの秘書をしてます。ランカと申します。今回は冒険者ギルドに所属しておられる冒険者様全員に招集命令がくだっております。今から私とギルドマスターの所へ来ていただきたく思います。」
「断る。」
「冒険者ギルドの一員である以上、
拒否権は認められません。」
「ならギルドマスターを連れてこい。
なぜ依頼を受ける俺が足を運ばなくてはならない?用があるなら自分でこい。
急ぎの用なら尚更だ。」
「ですが、ギルドマスターは今他の冒険者様に依頼の件の説明をしておられます。」
「知るか。それはお前らの事情だろう。」
「そ、そんな...」
「しつこいねぇ、あんた。あたしらは
これでもボスの所有物なんだ。
これ以上ボスの時間を割こうもんなら、
タダじゃ済まないよ。」
ミネアが立ちあがり、冷たく言い放つ。
いつの間にか、シズクとリズも戦闘態勢で構えている。
「わ、分かり...ました...ギルドマスターを呼んできます…」
そう言って引き返して行った。
その時この3人は、
「やっと、ボス(マスター)(ますたー)の役に立てた気がする...」
久しぶりに使い物になれた喜びを噛み締めていた。
当の本人はそれどころではなく、
恐らく聞いていないだろうが、嬉しそうなので良しとしよう。

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