天才の天災
ミネアの怪我、回復
「俺を起こそうとしただろ。はぁ、だから起こさなくていいと言っただろう...」
今俺の前には、右肩から先がなくなったミネアが正座している。
「ぐっ、すまなかったと思っている...
多少の寝起きの悪さは覚悟していたが、あれほどとは…」
事は数分前、
竜族はあまり睡眠を必要としないらしく、国王の前で眠って以降眠くならず、レンが寝てからも一晩中起きていた。
レンが起きるのを待っていたが、昼になってもレンは起きてこない。
起こさなくていいと言われてはいたものの、鍛冶屋に行った後にクエスト。
もし鍛冶屋で思っているより時間がかかっては、昨日と同じく夜にクエストに行くことになる。レンもそれを嫌がっているのは聞いていたため、レンを起こすことにした。
「ボス!もう昼すぎだよ!
クエストに行くんだろ?」
ミネアが布団にくるまっているレンの体を揺すりながら大声で呼びかける。
しかし返ってくるのは、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息のみ。
「こりゃあボスの言っていた通り、ちょっとやそっとじゃ起きそうにないね…」
ミネアがもう一度レンの体を揺する。
次はさっきよりも力を込めて。
「ボス!!夜になるよ!!
さっさと起きな!!!」
その時だった。
傍から見れば、レンが寝返りをうっただけに見えるだろう。
レンの手がミネアに触れた。
元々ずば抜けたステータスを持つレンの攻撃力。それに加え、レンの行動をスキル二神はパンチと捉えたようで、さらに攻撃力が跳ね上がっている。
それがミネアの腕に触れるとどうなるか。
パシュッ
そんなに大きくない音が静かに部屋に響く。
その時ミネアは遅れて気がついた。
自分がレンと触れた右肩から先がないことに...
ミネアの後ろの壁はミネアの血で、白から赤に染まっている。痛みはない。
ただ、一瞬で予想外の事態で頭が働かない。
ミネアが自分の腕がなくなった事を、
レンの寝返りの接触によって向かい風が吹いたようなきがした事、全てを脳が処理した時、右肩にとてつもない痛みが襲う。
「ぐっ、がァァァァァァァァ!!!!」
「う〜ん、んぁ?」
ミネアの絶叫によりレンの目が覚め、冒頭に戻る。
「まぁ、これもいい経験だ。
今の時間を見る限り、お前が俺のためにしようとした事だろうし、今回は不問にしてやる。」
「あ、ありがとうよ…
しかし、この腕じゃ、さらに道具としての価値は落ちちまったな…」
ミネアが今までにないほどに落ち込んでいる。今までの強気なミネアからは想像もできない様な、哀しい顔をしている。
「先に行っておくが、その程度で捨てたりはしない。役に立つ忠実な物には優しいからな。
だがまぁ、その腕で役に立てないのは当然だな。こっちに来い、治してやる。」
「な、なお、す?
この腕をかい?今までついていって分かったが、ボスはウィザードだろう?」
「ん?ウィザード?
何故俺が回復魔法を使えないと思う?」
「使えないってわけじゃないけど、
この世界じゃ大きくわけて、剣士や槍みたいに近接戦闘を得意とする戦闘職、攻撃的な魔法を得意とするウィザード、回復魔法や支援魔法を得意とするヒーラー、敵の弱体化や罠の除去、気配を消すなどが得意な暗殺職がある。
どれかひとつって訳では無いが、基本的にどれかに秀でた才能を持っている者は他の職はあまり使えない。不可能じゃないが、1つの才能がある者ほど、精度や質がはるかに落ちるから、使い物にはならないのが常識だよ。」
「なるほど。つまり、ウィザードであり、王女を助けた時に近接戦闘もした俺は、1つの職に優れたものよりもはるかに劣ると思うわけか...」
前に1度ミネアの前で魔法を打って見せたし、呪いの鎖を解くのに使った魔力量で、ウィザード以外はないと考えたのか。
「なら、毎回驚かれるのも鬱陶しいし、俺にこの世界の常識は通じないとでも思え。」
面倒くさくなったことで無理矢理話を終わらせ、2回回復魔法を行う。
「ヒール。」
1度目は軽くミネアの傷口が光るだけで、何も変化はなかった。
「やっぱりかい...」
俯いてボソッと呟くミネアの声が聞こえる。
「ヒール。」
同じ光が現れる。さっきと違うことと言えば、光はどんどん大きくなり、傷口を照らすどころか、ミネア全体を包み込む。
光が消え、俺の前には元のミネアの姿があった。どうやら成功の様だ。
「あ、れ?腕が、ある!
それどころか、鎖の痣も無くなってる!」
「出来たみたいだな。」
「やっぱりボスはすげぇな!
ボスについて行くって決めて後悔はしていなかったものの、これ程気持ちが高ぶったことは無いよ!ありがとう、ボス!
前にも言ったと思うが改めて、
あたしの全てをボスに捧げるよ。
いらなくなったらいつでも捨ててくれ!」
ミネアはそう言ってニカッと笑う。
ドキッ
「...」
「ボス?」
「そ、そうか。それより元に戻ったことだし、そろそろ行くか。」
「おう!!」
時刻は昼過ぎ、何とか夜までには間に合うだろう。
それにしても、ミネアの笑顔を見た時に感じたのはなんだったんだ?
今まで感じたことは無かった、不思議な感じだ...
まぁ、嫌な感じではなかった。
どちらかと言うと、心が温かくなる様な
優しい感じがした。
今俺の前には、右肩から先がなくなったミネアが正座している。
「ぐっ、すまなかったと思っている...
多少の寝起きの悪さは覚悟していたが、あれほどとは…」
事は数分前、
竜族はあまり睡眠を必要としないらしく、国王の前で眠って以降眠くならず、レンが寝てからも一晩中起きていた。
レンが起きるのを待っていたが、昼になってもレンは起きてこない。
起こさなくていいと言われてはいたものの、鍛冶屋に行った後にクエスト。
もし鍛冶屋で思っているより時間がかかっては、昨日と同じく夜にクエストに行くことになる。レンもそれを嫌がっているのは聞いていたため、レンを起こすことにした。
「ボス!もう昼すぎだよ!
クエストに行くんだろ?」
ミネアが布団にくるまっているレンの体を揺すりながら大声で呼びかける。
しかし返ってくるのは、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息のみ。
「こりゃあボスの言っていた通り、ちょっとやそっとじゃ起きそうにないね…」
ミネアがもう一度レンの体を揺する。
次はさっきよりも力を込めて。
「ボス!!夜になるよ!!
さっさと起きな!!!」
その時だった。
傍から見れば、レンが寝返りをうっただけに見えるだろう。
レンの手がミネアに触れた。
元々ずば抜けたステータスを持つレンの攻撃力。それに加え、レンの行動をスキル二神はパンチと捉えたようで、さらに攻撃力が跳ね上がっている。
それがミネアの腕に触れるとどうなるか。
パシュッ
そんなに大きくない音が静かに部屋に響く。
その時ミネアは遅れて気がついた。
自分がレンと触れた右肩から先がないことに...
ミネアの後ろの壁はミネアの血で、白から赤に染まっている。痛みはない。
ただ、一瞬で予想外の事態で頭が働かない。
ミネアが自分の腕がなくなった事を、
レンの寝返りの接触によって向かい風が吹いたようなきがした事、全てを脳が処理した時、右肩にとてつもない痛みが襲う。
「ぐっ、がァァァァァァァァ!!!!」
「う〜ん、んぁ?」
ミネアの絶叫によりレンの目が覚め、冒頭に戻る。
「まぁ、これもいい経験だ。
今の時間を見る限り、お前が俺のためにしようとした事だろうし、今回は不問にしてやる。」
「あ、ありがとうよ…
しかし、この腕じゃ、さらに道具としての価値は落ちちまったな…」
ミネアが今までにないほどに落ち込んでいる。今までの強気なミネアからは想像もできない様な、哀しい顔をしている。
「先に行っておくが、その程度で捨てたりはしない。役に立つ忠実な物には優しいからな。
だがまぁ、その腕で役に立てないのは当然だな。こっちに来い、治してやる。」
「な、なお、す?
この腕をかい?今までついていって分かったが、ボスはウィザードだろう?」
「ん?ウィザード?
何故俺が回復魔法を使えないと思う?」
「使えないってわけじゃないけど、
この世界じゃ大きくわけて、剣士や槍みたいに近接戦闘を得意とする戦闘職、攻撃的な魔法を得意とするウィザード、回復魔法や支援魔法を得意とするヒーラー、敵の弱体化や罠の除去、気配を消すなどが得意な暗殺職がある。
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「なるほど。つまり、ウィザードであり、王女を助けた時に近接戦闘もした俺は、1つの職に優れたものよりもはるかに劣ると思うわけか...」
前に1度ミネアの前で魔法を打って見せたし、呪いの鎖を解くのに使った魔力量で、ウィザード以外はないと考えたのか。
「なら、毎回驚かれるのも鬱陶しいし、俺にこの世界の常識は通じないとでも思え。」
面倒くさくなったことで無理矢理話を終わらせ、2回回復魔法を行う。
「ヒール。」
1度目は軽くミネアの傷口が光るだけで、何も変化はなかった。
「やっぱりかい...」
俯いてボソッと呟くミネアの声が聞こえる。
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光が消え、俺の前には元のミネアの姿があった。どうやら成功の様だ。
「あ、れ?腕が、ある!
それどころか、鎖の痣も無くなってる!」
「出来たみたいだな。」
「やっぱりボスはすげぇな!
ボスについて行くって決めて後悔はしていなかったものの、これ程気持ちが高ぶったことは無いよ!ありがとう、ボス!
前にも言ったと思うが改めて、
あたしの全てをボスに捧げるよ。
いらなくなったらいつでも捨ててくれ!」
ミネアはそう言ってニカッと笑う。
ドキッ
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コメント
ノベルバユーザー602604
タイトルに惹かれて読ませてもらいました。内容も面白くて良い作品でした。