人間から(堕天使の)スキルになりました!?

雨夜

初日からイベント開始…って?

挨拶を済ませて解散となり次の日。

記念すべき、登校一日目。
昨日 簡単に校内を案内してもらったがやはり、身体が魔人というだけで周りから遠巻きに見られ陰口を言われる。

だが、これくらいアイツらにパシられたりしてる時に比べたら何ともないし今となっては幼稚に見えるな

そう思いながら遠巻きで見る奴らを鼻で笑い図書室へ向かう。それから、僕は昨日の事を思い出していた。







僕が挨拶した後、口を開いたのは箕浦の取り巻きの一人だった。

「おい、委員長達よー。ソイツ本当に使えんのか?」
「使えるって……この子は物じゃないのよ。来光らいこう君」
「だって見るからに弱そーじゃん。魔人とか言うから強いと思ってたのに」
「そう言うなよ、耕吾こうご。小さいなりに頑張るかもしれないだろ?」
「はっはっは!違いねぇ」
「足を引っ張んないでよねー?子供が役に立つとは思わないけど」
「それは言えてるな!」


そう言い下品に笑う箕浦達。

来光耕吾、箕浦の取り巻きの一人で見た感じ職業はシーフ…といった感じか。体育の授業でかなり足が速かったからその影響かな。
もう一人…子供を馬鹿にする様に言ったのは来光幸愛こあ。耕吾の双子の妹で…面食いって噂を聞いたな。

とりあえず…今は下手に出るか。喧嘩を売ったら面倒な事になるしね


「ご安心下さい、勇者の皆様。僕は皆様の足を引っ張らない様に隅っこで皆様の御活躍を見るつもりなので」
「ふん、精々俺達の役に立つよう居ろよ」








その言葉の後、箕浦達は幸音の制止の言葉も聞かずに部屋を出た。妖精達に聞いてみると……アイツら、どうやら城の金を使って酒場に行ったらしい…

未成年って事を忘れてんのかアイツら…。
いやーーー


「この世界では15を過ぎたら成人だったな。一度帰って肉体を戻せれるか試すか」


それでお酒が飲めるか確認して……もし、飲めたらマスターと月見酒が出来る!!


「ハヤト様はまだ飲めませんよ」


その言葉に驚きながらも聞き慣れた声でゆっくりと振り返る。


「……ロルジ、いつから?」
「修業不足ですね、私はずっと後ろにいましたよ。これが他の人…勇者だったらどうするつもりで?」
「親しかったあの3人なら真実を話す。…他は消すかな」
「親しかったあの3人…ですか?」
「うん、妹の愛莉に幼馴染の幸音…それから親友の椎斗君」
「成程、それなら図書室へ御急ぎを。海那斗様も居ますが他の3人も居りますよ」
「本当か?ありがとう、ロルジ」


僕は駆け足で図書室へ向かった。
ノックをしてから中に入ると…



「あれ?ハヤト君どうしたの?」
「もしかして、本でも読みに来たのか?…子供用の絵本とか無いぞ」
「(そんなモン誰が読むか!)
視線がたくさんで…その、落ち着かないの…お兄ちゃん達と居ていい…?」


正直、人からの視線が煩わしいって思っていたからね。物珍しさ、恐怖、警戒、色々な感情が視線に乗って僕へと突き刺さる。
視線だけで殺されそうだって言葉の意味が身に染みるって思ったよ。


「彼は魔人だからね。魔人に知り合いを殺された者がこの学園にいるかもしれない」
「そうね。…ねぇ、新倉君」
「言わなくてもいい。俺達の近くに居させてあげよう、だろ?」
「うん、ありがとう!新倉さん!」
「……愛莉さん、さん付けは無しと」
「新倉さんが辞めるまでやめませーん。さ、ハヤト君!何の本読む?」
「え、えぇと……」


妹よ、お前はこんなに押しが強かったか??お兄ちゃんが見ない間に何があったのか気になるぞ…


「これはどうだい?魔王 アンジュ討伐話」


マスターの…?
討伐、という言葉は気に入らないが僕は人間がマスターの事をどんな風に書いてるのか気になり椎斗君に「お兄ちゃん、読んで!」と言って膝の上に座った。


「それじゃあ、読むよ?
昔々、この地にーーーーー」







昔々、この地に災厄が訪れる。
災厄の名は魔王 アンジュ。

彼の者は魔物の大軍を率いて力無き人々を蹂躙した。
反抗する者は見せしめにされ、従った者は知性ある魔物に酷使され続ける。

嘆き、悲しみ、苦しみ…人々はそんな負の日々をいつか打破する為に神へと祈る。
人々の祈りが神へと通じたのかこの国の王女が神託を受け、召喚魔法を発動し、一人の勇者が召喚される。

勇者は王女にこの国の悲劇を聞き、こう言った。
『僕がこの国を魔王から救い、光を取り戻しましょう』

悲しんでいた人々は勇者の言葉を聞き立ち上がる。
希望の光である勇者と共に全ての魔を倒す為に…。





それから堕天使…モルテさんと勇者一行の戦いとか妖精女王…フォルさんとの出会いとか色々聞いていたけど…



人間側の嘘が混じえた物語じゃねえか!!

僕知ってるよ!こういうのって嘘の歴史って言うんだね!!


「その物語の真実が嘘なのか分からないが、この国を苦しめる魔王を俺達の手で倒さないといけないな」
「新倉君の言う通りね…それに私達が元の世界に帰る為にも倒さなきゃ…」
「……帰る方法なんてねぇのに」


彼らとの戦いの意味を知らない四人に僕は思わずポツリ、とそう呟いた。
しまった、と思って口を手で抑えたけど何か考えているのか聞こえてなかったみたいでほっとしながら椎斗君に話し掛ける。


「お兄ちゃん達はこの本に出てくる勇者様一行と同じなの?」
「あ、あぁ、そうだよ。僕達も異世界からここに来てね。そしてこの物語と同じ勇者は新倉君なんだ」
「神官や大賢者、剣豪は居ないけどね」
「それは第一ダンジョンを攻略してから探す事になるだろう」


ごめんなさい大賢者は僕なので味方になりませんどうもすみません
って言葉と共に僕が土下座してる姿が頭の中で現れた。
子供らしく「凄い!」って言ってると突然、扉が乱暴に開かれ兵士が入って来た。


「大変です、カナト様!」
「どうした?」
「ソウジ様達がダンジョンに閉じ込められました!」
「なっ…!?」
「箕浦君達が!?」


兵士に詳しく話を聞くと昨日の夜から箕浦達がフードを被った奴とダンジョンに入って行ったの見てから朝まで誰もでてきた姿を見ていないそうだ。

不審に思った勇者の何人かがダンジョンに行くと50階の扉の前に幸愛がいつも付けているハートの髪飾りが落ちていた。
扉を開けて中に入ろうとしたが何故か開かなくて中から箕浦達の助けを呼ぶ声をかき消す様に怪物の声が。

その怪物の声に驚き、全員逃げる様に箕浦達を助ける素振りもしないでダンジョンを出て兵士に知らせた、と…。

……うん、完全に新倉君と幸音達任せだっ!!
椎斗君もその事に気付いてるみたいでため息をついていたけど正義感が強いのか新倉君が助けに行こうと言い出した。
幸音と愛莉もその事に賛成してるけど…


「新倉君、助けに行くのは良いが僕達だけで行くのか?」
「いや、他の皆も誘うし王女に頼んで兵士達を貸してもらおう」
「え、助けに行くのは賛成だけど…他の皆戦えるのかな…?」


愛莉が言った言葉に全員、無言になる。
全く…箕浦達の奴め、世話がかかるなぁ…なんて思いながら手を挙げた。


「ぼ、僕も手伝う!」
「駄目だよ!ハヤト君はまだ子供なんだから!」
「それでも僕が出来ることあるはずだもん!絶対に手伝うの!」
「で、でも…」


困った顔をする幸音に罪悪感と子供みたいに振る舞うことに羞恥心を感じながら駄々をこねる。
そして、ため息をついて手伝う事を条件付きで許してくれた。

新倉君が王女に話をつけに行ってる間、僕は愛莉と一緒に武器とかを取りに向かった。
……あ、そう言えば第一ダンジョンのボスのレベル言うの忘れてた。まぁ、何とかなるか!

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