人間から(堕天使の)スキルになりました!?

雨夜

ダンジョンへの出発前…って?

新しい体に慣れたのが3ヶ月前
勇者達が召喚されたのが2ヶ月前
諜報員から勇者達が訓練を始めたと聞いたが3週間前

僕は、今…………


「やあっ!!」
「まだまだ甘い!」
「うっ…!」


リブロさんに剣の稽古をつけてもらってます…てか、スパルタ!!(泣)
3時間前からずっと木刀持って急所とか狙ってるんだけど…避けられたり木刀で腕を叩かれたり…手が痺れてきた…。けど、落とすもんか!今日こそ勝つ!!


「そんな力では勇者どころかスライムに負けるぞ!さっさとかかってこい!!」
「んな…!?こっちはこれでも全力でやってんだよ!!」
「はっはっは!それが全力か!?ただ棒切れを振り回してるだけじゃないか!」
「こ…この……バカ師匠ーーー!!!」
「誰がバカじゃあぁぁぁぁ!!!」
「ひっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」


「ははっ、元気だな。あいつら」
「……アンジュ様、リブロを止めなくてもよろしいのですか?」
「あぁ、止めない。見ろ、二人共楽しそうじゃないか」
「…………俺にはリブロの奴が弱い者いじめしてるように見えますが…」


「だぁ!もうやってらんねぇ!!」
「む?」


僕は、大人気なく攻撃してくるリブロさんから離れて左手を上に向けた。
フォルさんから教えて貰って僕なりに頑張った火魔法…。


「ブルチャーレ!!」
「ほぅ、火を龍の形にするとはな…。流石、大賢者。だが!これしきの魔法、アンジュ様も出来るからな!!」


「…我はあんな芸当やれないぞ?」
「いえ、隼人はアンジュ様のスキル。私も出来ると思います」


「う……そ、そんな事分かってるっての!!」


八つ当たりみたいな感じでリブロさんに向けて魔法を飛ばす。
リブロさんはそれを避けずに…風圧だけで消しやがった…。


「手加減無し?!レベルの差があるんですから手加減して下さい!!」
「断る!!!」


そんな会話をし休憩に入ろうとするとマスターに話しかけられた。


「リブロ、隼人、今日もお疲れ様」
「ありがとうございます、マスター」
「有難いお言葉を感謝します、アンジュ様」
「して、隼人よ。少し出かけてくれんか?」
「はい、何処にですか?」
「第一ダンジョンに行ってきてくれ」


…第一、ダンジョン?
それって今、勇者達が攻略しているダンジョンだよな…??


「え、でも、そこは今…」
「あぁ、勇者達がいると聞いておる。だが、どの様な人物達なのか分からない…」
「そこでまだ子供の姿をしている貴方を勇者達に接触させ調べようという話になりました」
「な、成程…。じゃあ、僕は勇者達に接触しスキルなどを調べれば良いのですね?」
「その通りだ、更にお主は我のスキル…お主を通してどの様な人物達か調べる事が出来るしな」
「スキルアップしておいて良かったな」
「わっ……!?ちょ、リブロさん!頭を、揺らさ、な…っ!」


そう、リブロさんが言ってるから分かってると思うけど僕は賢者から大賢者へと変わっている。
新しい体に慣れる間、マスターの為に…。今後の為に…と思って書庫室に篭もりマスター達が集めた本を片っ端から読む。食事の時間も寝る時間も惜しんで読む。その結果…スキルの恩恵なのか一度読んだ本の内容を覚えて魔法や呪術式、剣術、地形、陣形等を知る事が出来、大賢者へとなった。
…2週間部屋で寝込んだのは言うまでもないけど(マスター達に怒られた事は置いておこう)。


「では、ベンダさんにお声かけしてから向かいますね」
「あぁ、頼んだぞ」


3人に一礼をし、瞬間移動でベンダ様の部屋の近くに来てノックをして入った。


「ベンダさん、失礼します」
「来たか、アンジュ様より話は聞いておる…が、大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫ですよ!これでもレベルは上がってますから!」
「そうか……だが、お前の身体は普通の人間とは違うという事だけ絶対に忘れるな」
「……はい…」



       “普通の人間とは違う”


この言葉だけ、何度も言われてきたけど慣れないや…。
でも、何度も普通の人とは違うって分かる事があった。
リブロさんに初めて剣の稽古をつけてもらった時腕が取れたけどすぐにくっついたりある幹部の人に毒草食べさせられて毒とか効かない事が分かったし…あれ?なんか僕不便な事ばかり巻き込まれてない?


「準備が終えたらまた来い。それまでにゲートをダンジョンへ繋いでおく」
「は、はい!分かりました!」


部屋を出てダンジョンへの楽しみと勇者達への不安で胸いっぱいになりながら廊下を走っていると…。


「こーら、廊下は走っちゃダメだぞー?」
「あ!し、シェンさ…ん…」
「うふふ〜。今、時間、大丈夫かなー?」
「だだだだ大丈夫じゃないです!だ、だから、その、ドス黒い色をした液体が入った試験管を、しまってください!」


話しかけてきたのは魔王軍幹部の一人、シェン・グレン。研究者で町では診療所を開いていて信頼されたり憧れている人がたくさんいるんだけど…魔王軍幹部や僕の前では完全にヤバい人。
その理由は、新しい薬や新しい治療法を思いついたりするとマスターの許可無く実践しようとする。…そういや、三日前フォルさんの羽根がシェンさんの薬で鳥の羽根になってたなぁ…。


「ちぇ〜…。これからどこか行くのかいー?」
「はい、第一ダンジョンへ行ってまいります」
「第一…あぁ、簡単な所かー。全部で50階あるから気をつけてねー?最後の階、ボスのレベルが100あるからー」
「ひゃ、100!?」


そ、それって1階から経験値を2倍手に入れてないと負けるって事じゃ…。
いや、Lv.50くらいでも大人数でいけば勝てる相手かもしれない…。


「シェンさん、そこのボスについて詳しく教えてくだ…もう居ねぇし!?」


本当、幹部達(一部)は自由過ぎるだろ!少しは待つって事をしてくれよ!!

僕は、 深く溜息をついて自室に行く。中に入り旅人の服に着替え、鞄にポーションや毒消しに少量のお金を入れベッドに腰掛ける。


「…ステータス」


━━━━━━━

ハヤト 大賢者(魔王:アンジュのスキル)
Lv. 48

HP:2500/2500
MP:∞

スキル
鑑定 Lv. MAX
偽造 Lv. MAX
隠蔽 Lv. MAX
光魔法 Lv. MAX
闇魔法 Lv. MAX
火魔法 Lv. MAX
水魔法 Lv. MAX
草魔法 Lv. MAX
錬金術 Lv. MAX
力魔法 Lv. MAX
剣術 Lv. MAX
体術 Lv. MAX
回復魔法 Lv. MAX


特殊スキル
大賢者
堕天使の加護
龍人の加護
アンデッドキングの加護
大妖精の加護
悪魔の加護


━━━━━━━


……うん、チートかな?
正直、これはやりすぎたと思う…。折角の初めてのダンジョンだから少し変えようかな。
レベルを15に変更…HPやMPはそのままにしておこう。理由を聞かれたら加護のおかげって言って加護を…堕天使、悪魔、アンデッドキングの加護を隠す。
魔法は全部……Lv.5でいいかな。この位の人が居そうだと思うし。あ、でもいくつか消して…。


「ああ、もう悩むなぁ……」















試行錯誤しながら考えた結果、こうなった。


━━━━━━━

ハヤト   旅人
Lv. 15

HP:2500/2500
MP:∞

スキル
鑑定 Lv. 5
偽造 Lv. 5
闇魔法 Lv. 5
火魔法 Lv. 5
錬金術 Lv. 5
剣術 Lv. 5


特殊スキル
龍人の加護
大妖精の加護

━━━━━━━


これが妥当かな。そこまでチートに見えないだろうし…怪しまれたりしないよね…。
まぁ、いざとなれば諜報員が今勇者達と行動してるらしいからその人に話しかけて混ぜてもらお。

それにしても、勇者…かぁ…。どんな人達だろう。優しい人達ばかりだといいのだけど…。勢いよくベッドに倒れそっと瞼を閉じ学校に通っていた時のことを思い出した。


━━━━━━━━━━━━━━━

『おい、隼人ぉ。ちょっと飲み物買って来いよ』
『い、いや…授業始まるし…後でいいかな?箕浦君』
『今買ってこいって言ったよな?ナメてんのか?』
『……分かったよ…』

『またパシられてる…』
『いつもだよねぇ〜』
『ゲームしかやってないし友達が少ないからじゃない?』
『アハハ、言えてる。それに被害来ないから楽だわ〜』

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……もし、もしも、僕や親友の雨宮君を無視したりパシリ扱いにしたり馬鹿にしてきたクラスメイト達だったら僕はその時どうするのだろう。

我を忘れ敵として攻撃するだろうか?
平常心を保ちながら仲間に入れてもらうのだろうか?
笑顔で白旗でもあげながら無害アピールでもするのだろうか?
それとも……復讐をする、と決め一人ずつ消していくのだろうか…?
いや、復讐からは何も生まれないって分かっている。例え復讐を果たしたとしても心は満たされず、その後幸せは無い…と僕は思う。
…今は、勇者達に会う事を考えよう。その後の対応次第で決めよう。

急に襲ってきた眠気に僕は身を委ねるよう不安と期待の気持ちの中眠りについた…。

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