人間から(堕天使の)スキルになりました!?

雨夜

遺跡の中での出会いと変化…って?

ヒンヤリと冷たい石の感触。
天井からの水滴が頬を濡らしその冷たさを感じながら閉じていた体の主は瞼を開いた。

視界に入るのは暗闇。天井は結構高いみたいだ。
視線だけで周りの確認をし体をゆっくりと起こした。うわぁ……祭壇の上で寝てたのか体の主…。
祭壇から足を下ろすその人は石畳の冷たい感触を感じながら周りを見渡した。


「……暗いな、フラッシュ」


右手を上に向けて呪文を唱えた瞬間、突然明かりがついたかのように周りが見えるようになった。
ふむふむ、フラッシュは洞窟とか暗いところで使えば見えるようになって逆に戦闘中に使えば相手への目眩しになるというわけだな。
誰かの中で一人、納得をしていると足音が聞こえてきた。体の主は足音と喧嘩してる声を聞いて嬉しそうにしてるのを感じた。


「ですから………方の世話は私が…」
「何を言う!!あの方の……はこの俺…!」


……というか、仲良いのかわからない会話だな。世話とか聞こえたから……この人の使用人?
疑問に思いながらじっと誰かの視点を通して見てると姿が見えてきた。黒髪の男と銀髪の男の様だ。

黒髪の男は髪は肩くらいでよく見れば紫色のメッシュが入ってる。身長は180cmくらいで筋肉とかなさそうだけど…強そう。
銀髪の男は髪が黒髪の男と同じくらいで身長は黒髪の男より少し高い…後、腰に剣が見える。

性格とかも違いそうだけど…二人が共通してると言えるところは
・隙がひとつもない。
・立ち振る舞いが優雅に見える。
・主と呼ばれる人が同じらしい。
って所かな…。

ぼんやりと見ていると、黒髪の男がこっちに気付いて苛立っていそうな表情を驚愕してる表情に変えた…え?なんでこっち来るの?ちょ待って、銀髪の男も同じ様にこっちに気付いて来るんだけど…て、跪いた!?え、な、なんで!?

困惑している僕を他所に彼らは声を揃えて体の主に言った。

「「お帰りなさいませ、アンジュ様」」
「……あぁ、久しいな…」



その名前を聞いて、心の中で(この人が僕のマスター…?)と感じた。
それと同時にマスターの目の前に居る人の情報が流れ込んでくる。
黒髪の男は、天使でありながらマスターを称え自らマスターと同じ堕天使へとなった執事のモルテ。
銀髪の男は、龍人であり家族に捨てられ死にかけてる所をマスターが助けた最古幹部のリブロ。

いつまでも顔をあげずにマスターの言葉を待ってる二人にマスターは少し笑いそうになるが口を開いた。

「ただいま、二人共。我がいない間変わりはないか?モルテ」
「はっ!アンジュ様が封印されてる間我々魔族は一時衰退をしましたが魔王代行者を作り今尚、勢力は昔と変わらず衰えておりません」
「そうか、次にリブロよ。人間の動きは?」
「はい、アンジュ様を封印した勇者共は死にました。今は我々魔物に怯えながら生きてる人間が多いです」

勇者か…僕は知らないんだよなぁ…。もしかして、異世界召喚された人とか?…テンプレだし無いよね!


「そうか……。やはり人間の寿命は短く時が過ぎるのは早いな。…………残念だ、我を楽しませてくれた者がいなくなったとは」
「アンジュ様…」
「城は今、誰が守っておる?」
「はい、私とリブロ…他の幹部全員で話し合った結果私と幹部全員で守っております。もちろん、アンジュ様が幹部の方々に与えた土地をちゃんと管理しております」
「おぉ、それは楽しみだ。特にリブロ、お前に与えた土地には美味い魚がたくさんいるからな。楽しみにしておる!」
「有り難きお言葉……っ!」


魚が好きなのは僕と同じだった。凄い嬉しいな…マスターと同じって。


「今は誰が城を?」
「ベンダの奴が守っています。奴は幹部だけど土地を貰わず武器や金を貰って城を守っていたので…」

不服そうにそう言うリブロを見てマスターは笑いそうになったが堪え、ベンダを思い出していた。
僕はマスターの記憶からそのベンダさんを見たけど…。


《ががが骸骨!?て事はアンデッド系モンスター!?》
「!!(今の声は……スキル『賢者』か?)」
「アンジュ様…?どうされましたか?」
「いや、なんでもない。それよりモルテ、お前は他の幹部を城に集めよ。リブロは城まで我の護衛をしろ」

さっさと空いた時間を埋めるために仕事等を済ませてしまおう、そう考えてマスターは指示を出したのだが…。

「お言葉ですが、リブロより私の方がアンジュ様の護衛が向いてるかと…。この“脳筋”が出来るとは到底思えません」
「何だと!!……そう言うが俺は貴様より力がある。もし、アンジュ様が倒れたら抱えること出来るというのか?」
「くっ…!……おやおや、アンジュ様が倒れる?そんな事は無いですよ、それに貴方のペースは速い。アンジュ様が途中で転けてこの綺麗な体に傷がついたらどうするつもりで?」
「なーに、そうならないようにするのが護衛の役目であろう?あぁ、お主のようなすぐ折れそうな細い腕では無理な話であったなぁ。これは失礼失礼」


険悪な雰囲気になっていくのを感じて僕は慌てて声を上げた。

《か、解答!この2人の口論が続く確率87%です。ひ、1人で行くことをオススメします。マスター!》
「(ふむ……そうだな。賢者…いや、真宮隼人よ。だが、2人の前に出なくても大丈夫か?)」
《いえ、大丈夫です。僕が出ようとしてもマスターの体を借りる事になり彼らは混乱するので…》
「(フフッ、そうかもしれぬな。さぁ、行こうか…隼人)」
《!!……YES、我がマスターアンジュ様》

マスターは歩きだし、口論をしながらもついてくる2人の声を聴きながら遺跡の出口へと足を進め……外へ────。







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   「さぁ、新たな歴史を作ろう」    













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