始まりの物語…って？

　遠くから聞こえてくるサイレンの音。そんな音を聴きながら僕－真宮 隼人は自宅へと向かう道を歩く。

「つっかれた〜…つーか、なんで僕だけ居残り授業なんだよ…」


時刻は午後8時。本来ならばこの時間に食事や風呂を終わらせいつも通りゲームをやっているはずだった。
しかし、帰ろうとした矢先に先生に呼び止められ授業中に寝ている事を指摘され…結果、寝ていた分の授業をやるハメになった。

正直に言って授業は眠くなる。特に昼飯を食べた後がそうだ。更に僕の席は窓側ということもあり暖かい日差しと満腹感で眠気が襲ってくる…と、言っても学校ではほぼ寝てばかりだけど。

（さぁ、ゲームという名の冒険が僕を待っている！）


ウキウキ気分で足を1歩踏み出したと同時にブレーキ音が鳴り響く。
横を見れば車が突っ込んでくる。それと同時に僕は察した。

（あ、これ無理だわ。僕の人生ここで終わ────）

言葉を最後まで言わせてくれないで右半身から全身へと衝撃が伝わる。死ぬ瞬間、スローモーションの様に見えるって言うが本当だったんだな…。
力なく地面に横たわる僕は身体から流れていく血と猛スピードで去っていく車を見詰めた。

（身体が痛い…。血が止まらない、こんな所で死ぬ気はなかったのに…てか、轢き逃げされたし…）

ぼんやりと薄れゆく意識の中、僕はここがゲームだったら蘇生薬とかハイポーションとかで回復なのになぁ…と呟いてそっと目を閉じる。

僕の人生は17年という短い生涯で幕を閉めた……。






＊






暗い暗い底のない世界(僕の予想では死後の世界？)へ落ちていくような感覚を感じていると機械みたいな声が聞こえてきた。


《魔王の適合者を発見。種族を選んでください》

　種族…？何でもいいよ、死なない身体で性別も男だったけど無しでいい。…というか貴方はどちら様？

まるでゲームの設定みたいだな。あ、でもチートキャラだけにはなりたくないけど。


《了解。魔族、亜人、獣人から選んで────》

　何でもいいって！その前に質問に答えてよ！！あなたは誰なんですか！！


《…了解。種族を魔族 悪魔とします。種族を進化……進化不可能。種族を変更…成功しました。悪魔から堕天使になりました》

　え、堕天使って魔族！？というかこっちの質問無視！？


困惑している間も謎の声は淡々と話を進めて行く…。


《スキルを獲得中。……スキル『飛翔』を獲得。スキル『誘惑』を獲得。スキル『治癒』を獲得。スキル『瞬間移動』を獲得》

《マスターの意志により『瞬間移動』を変更……成功し『時空間操作』を獲得。更に『身体能力強化』『幻惑』『感知』『重力操作』の獲得に成功しました》

《身体能力の向上…成功。全ステータス最大値にする事を成功しました。スキル『賢者』を獲得。個体名：真宮隼人をスキル『賢者』となります》


…………へ？賢者？


そう思った瞬間、プツンと意識が切れた。













落ちた先で、僕は最高の主のスキルとして生きるとは思ってもいなかった。
この物語は、転生した人間が堕天使が持つスキルのひとつとなり共に生きて行く物語。
さぁ、ページをめくって彼らの物語を見に行きましょう。