空いた左手を埋める力

街は荒れ果てて焦げた残骸が無残無蔵に置かれていた
焦げ臭い町を見渡しながら一人歩いていた
数週間の間、レオが空翔の体を守って居たという


その間も、謎の襲撃が相次ぎ休む暇すらなかったらしい
奴らもまた次元を超えてこの場所へ来ている...向こう側の世界はそれだけ安定感がないと言わざる終えない状況を告げられてる様だった


まだそこまでの出来事は起きていないのが唯一の救い...ただこのまま奴を逃せば
向こう側で戦うハメになるに違いないだろうとは頭には浮かぶが具体的にどう対処すれば良いかは...定かではない


復讐の為に動いてるのか？
自らを死ぬ為に動いてるのか？
ただ戦うために動いてるのか？


空翔はそれだけがよく分からなく考える
ましてや自分自身も...同じ過ちを繰り返そうとしていたのだからだ
 

一度殺した相手をまた殺す...それもかつての師をこの手で...倒す
二度はやりたくない、でもこのままにしていたらまた殺しに来るだろう


考えれば深まるり、考えなければ忘れる
よくわからなくなるぐらい空翔は悩んだ


すると、レオとレイヤーが目の前に現れて喋り出す


『いつまでそうしてる気だ？』
『時間が無いのよ』
『分かってる...分かってる』
『何がわかってるんだ？』
 

空翔は、下を向いたまま黙りゆっくりと話す


『倒せない...奴を俺は...倒せない！』


その口取りは空翔らしくない力がない発言だった
レオは、静かにため息をついて言い放つ


『そうか、ならお前はここまでだな』
『違う...』
『何が違うんだ？『やつを倒せない』だと？不抜けてるのか？それとも...もう戦いたくないとでも言うつもりか？』
『それは...っ！』
『ガキか、そんな迷いがある奴は要らない。ここで運命を灯せ』


すると空翔は、レオの顔を思いっきり殴りつけた
そしてふらふらしながら、ゆっくりと歩きながら言う


『ならどうしろってんだよ？二度は戦いたくない師にもう一度殺せってかよ...。それでブレイカーは消えるし...反応すらない、こんな...こんな状況で立ち向かえだと？無理に決まってる、精霊の力すら遠くかなわない奴に...勝てるはずもなければ後は何がある...？』


レオは、口元を吹き立ち上がり拳を構えた瞬間レイヤーが現れて首を横に振った
そして後ろを振り向き言い放つ


『ある、折れない諦めない精神力...それが君にある力よ』
『はぁ...？それが何の役に立つんだよ、感情で物事なんて...動かせない...それくらい分かるだろ？』
『うん、でも君は今まで幾度の強敵に立ち向かい勝ってきたはずよ？それを自ら踏みねじるきかしら？』
『今はそれとこれは違う...違うんだよ！俺は強くなんかない、あいつに敵う力が無い...精神力だけで何もならないんだ！だからどうしろって聞いてるんだよ...なぁ、教えてくれよ？』


レイヤーは、呆れた顔を浮かべながら言い放つ


『諦めるとか、勝てないとか、教えてくれよとか...随分いい物言いだわ。それくらいの考える余裕があるなら、いくらでも答えが出たはずよ。自分の過去を活かさずに踏みねじり諦め、忘れたフリして挑まずただ逃げる...呆れた根性ね。それをどうにもならないで解決するとか正直馬鹿でしょ？分からないようなら君を叩いてまで思い出させてあげるわ』


レイヤーは、自らの剣を抜き出して構えた
空翔も、剣を抜き取り走り出す


無我夢中で連撃をする空翔を見てレオは話す
『意味もないそんなスカスカな連撃で迷いがある剣でレイヤーには勝てないぞ！』
『うるせぇ！これ以外何がーー！？』


レイヤーは、空翔の連撃を一瞬で見極めて柄で腹に一撃を入れた
空翔が怯んだ隙を首と足を引っ掛けて転ばせた、瞬間レイヤーは空翔の首に剣を突き立てた
レイヤーゆっくりと言い放つ


『君の剣なんて安い、私より精度も威力も技も遠い...師に何を教わったか思い出せないのか？』


空翔は、ゆっくりと思い返す


剣技よりも大事なのは...心ッス
キミの技はデタラメ過ぎて価値すらない雑種犬、でも見込みはある僕を超える実力を持っているのに使わないなんて勿体ない


何の話だよそれ？


時には判断が必要って意味ッスよ
君の弱点は『人に対しての優しいさ』ッス
そんなんじゃ、切る敵すら倒す奴すら判断出来ずに投げ捨てて勝てないって嘆いたなり他人に答えを委ねたり、最終的に戦う意思すら消える


渚は、空翔に近寄り肩を掴み言う


例え僕が敵になっても迷わず切って貰わなきゃ困るんッスよ
詰の甘さで仲間を見殺しにする気が無いなら...その空いた手にもう一本剣を握りなさい
目の前にいる人が仲間だとしても判断を間違えないで切って欲しいッス


いずれ忘れないうちに言っときましたよ？


ーーーーーそうか！そうだったのか！
空翔の奥深くで忘れていた記憶が蘇る
そして、空翔は首にあるレイヤーの剣を握り押し返す


『忘れていた...のを思い出したぜ！』


そして、レイヤーの刃先を握りつぶして破壊した
レイヤーは半歩後に下がる
空翔の左手が強く光り出して、手前に動かして突き出す
ひかりを放ちながら一本の剣の形をした武器が現れて手に取る
揺れる髪の毛の隙間から見える空翔の眼差しはさっきとはまるで別人物だった


それを見てレイヤーは少し笑みを浮かべて言う


『成程ね、その左手龍の刻みがあるなぁって思って居たけどね。まさかそんな所に隠されていたなんてね...波紋龍の刻み世界最強の人にしか出ない紋章...』
『悪いけど避けてくれよ？』
『ん？』
『左腕全体が魔力を放ちそうだ...』
『ちょっ...！？』


空翔は、左手を空に向けて翳した
すると雷が一直線に落ちてきた
剣は黄金色に輝きを放ちながら空翔は、ゆっくりとなぎ払ったーー


大地は削り取られるように消し飛びあたりに強い爆風が吹き付けた
一定の範囲で砕けたようだが、威力が絶大すぎるとうなずける位の地面の削れ壊れー 


間一髪で、レイヤーは回避してレオの元に行き顔を眺めたその眼差しは何かを確信していた様だった
空翔は、ゆっくりと膝を打つように地面に倒れて静かに呟く...


『ま、魔力の殆ど...消し飛んだ...』


それもまた彼が気付くーー


『ふふっ...目覚めましたね...ですが少し遅かったですね』


モニターに映るのは、元の世界...魔物が地を這うえげつない場所が映し出されていた
そして、ある場所を視点的に映し出されて部下が言う


『ありました』
『よろしい、では始めなさい...これが私の最後の計画が始まりますね』
『はっ、では始めまーー！？』
 

警報ランプ点滅して船内のモニターが切り替わり映し出された人物が言い放つ


『悪いけど彼の故郷を破壊させないよ』
『貴方は誰ですか？』
『さぁ、僕の居た世界を救ってくれたヒーローを守れずに見過ごすことが出来ない待ちゆく村人一人さ』
『そうですか...やはり一筋縄ではいけませんか..』
『気付いてるかもしれないけど、君の船は包囲されてる。逃げることは出来ないよ』
『ふ、いいでしょ...謎と言われた組織に楯突く度胸大したものです。では死んでもらいましょうか？』


こうして、元の世界は虚と全面戦争が勃発
攻防が続く中ーー
各書を持つメンバーは、それに気づき急いで仲間を集め始める
そう、食い止めなくてはならない...一人の主人公リーダーの帰還を待つためにーー