End
第1話 30作目攻略完了─31作目攻略開始
眩いほどの明るさで思わず目が眩んでしまうほど赤く輝く太陽は月と入れ替わるように登ってきている。その輝きはつい数分前まで夜だったことが嘘のように思える。
「ようこそ、神の塔『End』へ…。初めましてと言うべきか、おはようと言うべきか分からないが、強いて言うならおかえりと言うのはどうだろう?」
「そうね、おかえりなさいが1番適切ね。元気にしてた?」
男のカッコつけたようなセリフに半ば被せるように女の声がする。
そして、画面の中の女性は自分に向かってひらひらと手を振る。
それはあくまでもゲームでのモーションに過ぎないのだが、パソコンの画面は霞んで見えてしまう。眠いのもあるが、少し涙が出てくる。もちろんその涙はゲームクリアによる感動の涙だ。
「よし…ゲームクリア…ゴホッ!ゴホッ!」
覚えている限り2日ぶりに声を出したため、喉を痛めてしまったらしくいまいちきちんとした声が出ない。
ズキズキと痛む喉を抑えながらかなり大きな咳をするも、隣の部屋に寝ているであろう両親は起きることは無かった。
それもそのはず、いくら休日といえどまさか子供が二徹もしているとは思ってもないだろう。
(まぁ、もともと放任だし関係ないか…)
マウスのカチカチという音が部屋に響く。
その音と連動するようにゲームのキャラクターはあらかじめ用意されていたセリフを話し続ける。
薄暗がりの中、時計の針の音とマウスとキーボードを叩く音だけがその部屋で響いていた。
乱雑に置かれた菓子パンの袋やカップラーメンの残り香は、ゲームのクライマックスを楽しむ彼に届くことは無い。
空腹を訴える胃も、乾いては涙を流す目も、耐え難い異臭により麻痺した鼻も、つばを飲み込みすぎて苦味が広がる舌も、マウスの生暖かさと部屋の冷たさにより鳥肌が立つ皮膚も、自分の高鳴る心臓の音とマウスとキーボード、そして、時計の音に支配された鼓膜でさえ、無きものとして、パソコンの画面に釘付けになる。
彼がそこまで熱中するのは『End』というRPGだ。
そして、彼はついにその記念すべき30作目の最新作をクリアする。
「今回もいいゲームだったなぁ。」
ゲームクリアの余韻に浸り感慨に耽っているとパソコンに一通のメールが届く。
『本ゲームをクリアした方には特別特典として、先着2名様に限り【End~リアル異世界~】を配布致します。これは、Endシリーズ31作目という立場であり、その名の通り異世界に行ってしまいます。現実世界に未練のない熟練のEndプレイヤーの皆様が応募していただくことを待っております。』
怪しいスパムメールのような内容だが、彼はすぐに食いついた。
もちろんこの世界での未練がない訳では無いが、それはちょっとした冗談だと考えメールの案内するURLをクリックする。
彼は新しい塔へと挑戦する。
本当に現実世界に戻れなくなってしまうのにも関わらず
……To be continued
「ようこそ、神の塔『End』へ…。初めましてと言うべきか、おはようと言うべきか分からないが、強いて言うならおかえりと言うのはどうだろう?」
「そうね、おかえりなさいが1番適切ね。元気にしてた?」
男のカッコつけたようなセリフに半ば被せるように女の声がする。
そして、画面の中の女性は自分に向かってひらひらと手を振る。
それはあくまでもゲームでのモーションに過ぎないのだが、パソコンの画面は霞んで見えてしまう。眠いのもあるが、少し涙が出てくる。もちろんその涙はゲームクリアによる感動の涙だ。
「よし…ゲームクリア…ゴホッ!ゴホッ!」
覚えている限り2日ぶりに声を出したため、喉を痛めてしまったらしくいまいちきちんとした声が出ない。
ズキズキと痛む喉を抑えながらかなり大きな咳をするも、隣の部屋に寝ているであろう両親は起きることは無かった。
それもそのはず、いくら休日といえどまさか子供が二徹もしているとは思ってもないだろう。
(まぁ、もともと放任だし関係ないか…)
マウスのカチカチという音が部屋に響く。
その音と連動するようにゲームのキャラクターはあらかじめ用意されていたセリフを話し続ける。
薄暗がりの中、時計の針の音とマウスとキーボードを叩く音だけがその部屋で響いていた。
乱雑に置かれた菓子パンの袋やカップラーメンの残り香は、ゲームのクライマックスを楽しむ彼に届くことは無い。
空腹を訴える胃も、乾いては涙を流す目も、耐え難い異臭により麻痺した鼻も、つばを飲み込みすぎて苦味が広がる舌も、マウスの生暖かさと部屋の冷たさにより鳥肌が立つ皮膚も、自分の高鳴る心臓の音とマウスとキーボード、そして、時計の音に支配された鼓膜でさえ、無きものとして、パソコンの画面に釘付けになる。
彼がそこまで熱中するのは『End』というRPGだ。
そして、彼はついにその記念すべき30作目の最新作をクリアする。
「今回もいいゲームだったなぁ。」
ゲームクリアの余韻に浸り感慨に耽っているとパソコンに一通のメールが届く。
『本ゲームをクリアした方には特別特典として、先着2名様に限り【End~リアル異世界~】を配布致します。これは、Endシリーズ31作目という立場であり、その名の通り異世界に行ってしまいます。現実世界に未練のない熟練のEndプレイヤーの皆様が応募していただくことを待っております。』
怪しいスパムメールのような内容だが、彼はすぐに食いついた。
もちろんこの世界での未練がない訳では無いが、それはちょっとした冗談だと考えメールの案内するURLをクリックする。
彼は新しい塔へと挑戦する。
本当に現実世界に戻れなくなってしまうのにも関わらず
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