神様と異世界旅行

ダグドガ星 取れちゃった・・・

俺達五人はタートさんの案内の下、タートさん宅を目指していた。
両側の腕は、いまだに茜さんとセレンさんに抱き着かれたままだが。
・・・村人の視線が痛いから、本当に離れて欲しい。
ちなみに先程、離れようとした所。

「そんなに嫌がらなくても、いいではないかのう?」
「私も傷付く心はあるのですよ?」

と、言われ抵抗を止めた。
・・・俺、立場が弱い気がする。
まぁ、相手は神属だし立場うんぬんは良いとして・・・流されまくってるよなぁ。
俺は抵抗を諦め、周囲を見渡す。
村人、デミルさんは獣人と言ったか・・・見える所に居る人達は皆、獣人だ。
ウサギ耳、猫耳、あれは・・・タヌキか?
家は木を加工しているのか、していない家は木をそのまま使っている家もある。
ただ、技術がないのか全ての家が地面がそのまま家の床になっている様だ。
家の前に畑が必ずと言っていい程、隣接している。
中には畑仕事をしている村人も居た。
それにしても外の正面からでは分からなかったが、このカセ村は丸い形をしていたのか。
そして、家の数だ。
いや、村ならば普通なのか?
歩きながら見ただけでも、10は越える。
これでも半分も歩いていない。
タートさんは歩きながら顔を少しこちらに向け、微笑み言う。
うん、その角度で見ると綺麗なお姉さんだな。

「私達の様な種族は珍しいですか」

俺は軽く頭を下げて、申し訳なさそうに言う。

「すみません、気分を悪くさせてしまいましたか?」
「いえいえ、そんな事はないですよ。こちらも珍しそうにタテさん達を見ているので、お相子です」

確かに見られているのは知っていたが、それは茜さんとセレンさんのせいだと思ってた。
違うのか・・・。

「あ、それもあると思いますよ」

・・・また、顔に出てたらしい。
顔を軽く隠したいが、両腕封じられてるし。
すると、茜さんは悪戯っ子の様にクックッ笑うと、俺を見て言う。

「手を貸して欲しいのかのう?」
「私の手で良ければ」
「二人共、止めてくれっ。そして、茜さんは後で頬を揉みしだくっ」

俺の言葉に茜さんはピタッと、動きを止めると
俯き呟いている。

「やってしまったのぅ」
「御愁傷様です」
「・・・セレン、心無しか楽しんでないかのう?」
「とんでもない、そんな事はありません」
「・・・」

茜さん、騙されるな。
セレンさん無表情だけど、絶対楽しんでるぞ?
タートさんは楽しそうにコロコロ笑い、言う。

「タテさん達は本当に、面白いですね。普通はないですよ?初めて訪問した村で、そこまで気を抜く事は」
「い、いや、一応・・・」
「大丈夫じゃ、ワシがおる」
「警戒としては、村の外まで気配察知しています」
「び、微力ながら」
「私達も居るしっ」

茜さんは得意気に言い、セレンさんは頷きとんでも発言をする。
そこに後ろに居たデミルさんが、ミリスさんの腕を引っ張りながら横から出てきて続けて言う。
・・・うん、気持ちは嬉しいんだ。
ただ、ちゃんと俺も警戒はしてるんだよ?
正直、貴女達4人はいつから俺の護衛になったのさって感じだよ。
そして、男としては情けなく感じて来る。
と、言っても俺に出来る事を全力でやるだけだが。
そんな俺達の姿に笑いを堪えれなくなったタートさんは、最後には声を出して笑っていた。



「さぁ、着きました。ここです」
「あ、はい。ありがとうございます。ほら、流石に離れてくれ、二人共」

茜さんとセレンさんは渋々そうに、俺の腕から離れてくれた。
俺から離れた茜さんとセレンさんは、後ろに付いてきている、二人と何かを話し始めた。
自由過ぎだろ、神様達。
今まで抱き着かれていたから、不本意だが。
・・・少し、人肌恋しくなりそうだわ本当に。
俺達の前には村人達よりも大きい建物があった。
作りや、素材は村の皆と同じだ。
他の者の家よりも大きいのは、村長の家というのもあるのだろう。
ただ、どの家も2階はないらしい、技術の問題なんだろうか。
タートさんは振り向き、優しく微笑み俺に言う。

「時々ですが、来客もあるからなんですよ」
「・・・そんなに自分って、分かり安いですか?」

俺は苦笑しながら、タートさんに尋ねる。
下手すると心を読んでる勢いで、俺の心の言葉と会話してくる。
タートさんは困った様に微笑み、頬に片手を当てて言う。

「あら、ごめんなさい。私達の種族は人の表情、行動を読んだりするのが得意なんですよ。そして、私の場合は役柄的にも表情を読むのは重要になってきますので、自然に読んでしまうんです」
「・・・成る程」

ならば、と俺は顔だけ少し振り返りセレンさんを見る。
表情を読むのが得意なのであれば、俺達には無表情に見えてもタートさんには分かるんじゃないか?と。
俺はタートさんに視線を戻すと、タートさんは優しく微笑み首を横に振っている。

「タテさん、ダメですよ。女性は見るのではなく、知ってあげないと」
「ぁ、いや・・・はい」
「フフッ、さぁこちらへどうぞ」

タートさんは引き戸のを開けると家に入っていった。
なんて言うかタートさんに言われると妙な説得力があるというか、納得してしてまう。
俺は苦笑しながら、頭の後ろを掻きタートさんの後に続こうと足を出した所。
後ろから左肩に手を置かれて、そちらを顔だけで見る。
そこにはセレンさんの顔がドアップがあり、無表情のまま俺だけに聞こえる様な声で言う。

「残念でしたね」

そう言い、セレンさんは離れていった。
皆と話してるから気付いてないと思ったら、気付いてたんですね。
残念ではあるけど、まぁ、それは追々どうにかなるだろう。
あ、後でタートさんに彼女達とはそういう関係ではなく、からかわれているだけと弁明しとかなければ。
俺は皆を中に入る様に促し、先に建物へ入る。



木材の加工品のテーブルで、俺達は話しを始めた。
丸太を切り出した椅子に座り、タートさんの正面に俺、左右をミリスさんとデミルさんが座っている。
茜さんとセレンさんはというと、俺の真後ろで左右に立って控えている。
腕に抱き着かれた時と同じ、右側に茜さん左側にセレンさんだ。
座りなよと促したのだが・・・。

「疲れておらんから、ここで良いでのう」
「私もです、それに疲れたら肩をお借り致しますので」

と、言われ不本意ながら後ろに控えて貰っている。
取り敢えずで、話し始めたのは俺達は旅をしているという事。
そこからは、ミリスさんとデミルさん主導で話し始めた。
この世界の住人である二人の方が、話しをしたいだろうと思ったからだ。
まぁ、主に喋っているのはデミルさんだが。
セレンさんは時々補足する様に喋っている。
デミルさんが、まず取り出したのは俺が見せて貰った地図だ。
デミルさんはタートさんに地図を見せ、自分の国の周りには大陸はないとされていること。
そして、自分達以外には魔物位しか存在しないとされていると話す。
自分達が弱く非難される生活が嫌になり、旅に出る事にした事。
目的は本当に地図の通りなのか、それから遺跡の森に入り死にかけた所を俺達に助けられた事。
行動を共にし森を抜けた所で、このカセ村を見付けた。
そこまでデミルさんとミリスさん話し、それをタートさんは言葉を挟まずに真剣な表情で聞いてくれていた。
真剣な表情のまま、タートさんは言う。

「そうですか、あの森を抜けて来たんですね・・・」
「ご存知何ですかっ?」

タートさんの言葉にデミルさんは身を乗り出して、問う。
俺は苦笑しながらデミルさんの肩に手を置き、落ち着く様に言う。

「デミルさん、落ち着いて」
「ご、ごめんなさい・・・」
「すみません、タートさん出来れば知っている事を俺達に教えては頂けませんか?」

俺の言葉にタートさんは困った様に微笑み、言う。

「いえいえ、別に隠す事でもないので。そうですね、デミルさんとミリスさんが居た所には行った事はありませんが、あの森の事は多少なら知っています」

タートさんの言葉にデミルさんとミリスさんは、真剣な表情で聞いている。

「あの森から来られたならご存知だと思いますが、ここから直ぐの所にあります。ですが、この村ではあの森に近付く事を禁止しているのです。狩りの為でもです」
「それは・・・どうしてです?」

俺の問いに、タートさんは苦笑して続ける。

「理由の一つは、あの土地の魔力の高さです。デミルさんとミリスさんなら、分かりますよね?」

タートさんの言葉に二人は頷く。

「二つ目は、今の私達では役目を果たせないですから・・・」
「役目・・・?」

タートさんは少し悲しさを帯びた、微笑みをし続ける。

「私達は、あの森にある『門』の管理者なんです」

俺は驚き、目を見開く。
デミルさんとミリスさんも驚いている様だ。
つまりは俺と同じ。
俺は茜さんから直々に任命されたが、タートさん・・・いや、彼女達はいつから。
俺は驚きながらも、疑問に思った事を尋ねる。

「タートさん、今のって言うと?」

タートさんは右腕を前に出し、長袖を捲る。

「手錠・・・いや、枷か?」
「それは半減の枷ですかっ?」

ミリスさんが更に驚き、声を上げた。
・・・よろしくない名前の物だな。
俺は怪訝そうにしながら、ミリスさんに尋ねる。

「どういう効果があるんだ?」

ミリスさん俺の問いに凄く困った顔をして、言い淀んでいる。
タートさんはそんなミリスさんに微笑み、俺を見て言う。

「名前の通りですよ、装着者の能力を全て半減させてしまうんです」
「・・・何ですって?全てって、運動能力とか・・・」
「全てです。運動能力だけではなく、魔力、腕力。そういえば例外がありましたね、知識は半減されません」
「何でそんな物を・・・」

と、言いかけて俺は気付く。
・・・ん?あの鍵穴でかくないか?
俺が持ってきた一番小さい道具が、入るんじゃないか?
まさかな、まさか。
タートさんは苦笑しながら、俺に言う。

「見たいのでしたら、近付いて見てみても良いですよ?」
「・・・お言葉に甘えます」

俺は立ち上がると後ろに控えているセレンさんに、タートさんに背を向けてバレない様に道具箱を出してもらった。
そして、望む道具を持ちタートさんの右横に移動する。
道具と、言ってもL型の六角レンチ2本とマイナスドライバーだが。
茜さんとセレンさんも俺の行動が気になるのか、後ろから付いてくる。
すると、タートさんは右手をこちら側のテーブルに置いてくれた。
これなら良く見える。
タートさんは引き続き、デミルさんとミリスさんとの話しをしている。

これって、あれだよな。
ここを六角で押してやって、マイナスを差し込んで。
って、回るわけないだろ。
自分に自分でツッコミを入れていたのだが。
クルッと僅かに左側に回った。
・・・おや?
更に力を入れて見ると、やはり回る。
すると、後ろで見ていた茜さんが戸惑っているのか、そんな声で聞いてくる。

「の、のう、盾。おぬし、まさか開けれたりするのかのう?」

セレンさんは、そんな茜さんに言う。

「まさか、一応ですが魔力の流れを感じるのですよ?そんなに簡単に、開かないと思いますが?」
「ワシも、そう思ってたのだがのう?」
「何が疑問に思うのです?」

多分、セレンさんは俺の手元を覗こうとしたのだろう。

カチャッ

「「え?」」

茜さんとセレンさんの驚きの声が重なる。
俺の右手にはタートさんが付けていた、半減の枷が鍵が開いた状態で持っていた。
・・・開いちゃったんだけど。
俺は顔を上げると、正面に座っているデミルさんとミリスさんを見る。
あれ二人共、話しに夢中で気付いてない?
ちなみにタートさんも、気付いてなくない?
俺はユックリ立ち上がると、身体ごと茜さんとセレンさんの方に振り向く。
俺は小さな声で、二人に聞く。

「これ、幻覚とか?」
「い、いや、現実じゃぞ?」
「幻でもありません」
「3人、気付いてないんだけど・・・」
「話しが盛り上がってるからのう?」
「ええ、3人共に真剣ですからね」
「言った方が・・・良いよな」
「「もちろん」」

ですよね~。
ふむ、なら取引じゃないが・・・そういう話しでもしてみるかな。
俺は元々居た場所にユックリ戻ると、デミルさんミリスさんの言葉を遮りタートさんに言う。

「タートさん、取引しませんか?」

・・・デミルさんミリスさん、睨まない。
タートさんは怪訝そうに俺を見る。
多分、ここに来て初めて見せる表情だろう。

「・・・内容は、どの様な?」
「あの森までの、道を作って頂きたい」
「・・・先程も説明しましたが枷が」

ぇ、本当に気付いてないの?
俺はテーブルの上に解錠した、枷を置く。
すると、タートさんは凄く嫌そうな表情をする。

「タテさんも、持っていたんですねっ」
「最低だよっ」
「タテさん、流石にそれはないです・・・」

・・・本当に、気付けよ。
そこまで気にされない枷って、本当に重要なのか?
俺は苦笑し、枷を指差しながら言う。

「これ、タートさんのですよ?」
「嫌味ですかっ?」
「いや・・・もう、面倒臭い。腕を見て、腕を」
「腕がなんなんですっ・・・ぇ、え、え」

タートさんは枷があった所と、テーブルの上にある枷を驚きながら忙しそうに見比べる。
デミルさんとミリスさんも、驚いた様だ。
少しして3人の視線が俺に戻ってきた。
そして、苦笑しながら頭の後ろを掻き言う。

「取れちゃった」
「「「・・・え?」」」

3人は俺の言葉に、俺を見ながら呆然とする。

「いや、開くと思わなくて・・・取って良かったんだよな?」

俺は確認する様に左右に居るデミルさんとミリスさんを、見る。
勢い良く頷いてくれているのだから、取れて正解みたいだ。
いや~、いじくってみるもんだよな。
・・・真面目に取れると、思ってなかったんだがね。
タートさんは俺を呆然と見ているかと思ったら、瞳に涙が浮かんでいた。
そして、顔を隠す様に両手で顔を覆う。
まぁ、そうだろうなぁ。
どういう理由で着けられていたかは聞いてなかったが、あの話す表情を見る限りでは枷のせいでかなり困ったのだろう。
ただ、泣かれるとどうして良いか分からない。
俺は立ち上がり左右に居る二人の肩を軽く叩き、頼むと手振りすると頷いてくれた。
俺は茜さんとセレンさんの方に振り向くと、外を苦笑しながら指差し歩き出す。
外に出る時、タートさんに二人が駆け寄っていた。
あの空間に男性は俺だけだったから、同じ女性ならという俺なりの配慮なんだが。
その前に、こういう雰囲気は苦手なんだ。

外に出ると夕暮れでタートさんの家を警護している人達だろう、2人位と目が合う。
訝しげな表情をされたので、取り敢えず愛想笑いしておく。
警護が通り過ぎてから、俺はタバコを取り出し吸う。
一応、誰にも見られてないか確認した後にだ。
ほら、ライターとかタバコとか色々聞かれそうだし。
ちゃんと、携帯灰皿も持ってるしな。
ちなみに、地球から持ってきたゴミは全て回収しています。

一服しながら辺りを見回すと、子供達だろうか楽しそうに親と手を繋いで歩いて家に向かっていた。
その他にも農作業をしていた、人達も帰路についていた。
・・・子供、結構居るんだな。
良いなぁ、こういうの。
平和だ。

「平和だのう」

不意に後ろから声を掛けられ、そちらを見る。
茜さんとセレンさんが建物から出てきた所みたいだ。
俺はタバコを消しながら微笑み、頷く。

「ああ、凄い平和だよ。それより、中はどんな感じ?」

茜さんは歩いて俺の右横に来ると苦笑しながら、首を横に振る。

「もう少し、時間をおいた方が良いと思うのう」
「しょうがありませんよ。着けられていた年月が、年月ですから」

茜さんに続く様に左横に移動してきたセレンさんが、言う。
・・・話しを聞いていなかったから、後で二人に聞くか。

「そういえば、取引とは・・・どんな事を頼むのかのう?」
「私も気になりました」

俺は苦笑する。
まぁ、気になるよな。
俺は考えている事を二人に話す。

正直、ここまで来たらフラグうんぬん言ってる場合じゃない。
乗り掛かった船だ、とことんフラグ回収してやるさ。

「神様と異世界旅行」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く