神様と異世界旅行

訪問者は、龍神でした

女性は微笑んだまま、続けて言う。

「おぬし、面白いなぁ」

まだ喋り続けようとする女性に俺は片手で、言葉を遮り苦笑しながら言う。

「すみませんが、そこに座らせて頂けますか?」

遮った違う方の片手で後ろを指差す。
家に上がるために一段高くなっている所をだ。
威圧されているのだろうか、膝が笑っていて立っているのは限界だったのだ。
情けないが。
それと、と俺は続けて言う。

「出来れば『力』を抑えて欲しい、色々厳しいんですよ」

女性はクックッと笑いながら、片手でどうぞとする。
俺はそのまま後退り、腰を下ろす。
身体も先程よりは楽になってきた。
多分、『力』を抑えてくれたのだろう。
少し下を向いていた顔を上に戻すと気付く。
引き戸から、外から中に女性は入ろうとしないのだ。
俺は首を傾げて、不思議に思い言う。

「入らないんですか?」

女性は微笑みながら、床を指差しながら言う。

「なら、家に入るのを『許可』してもらえるか?」

俺は首を傾げたまま頷く。
だけど、一向に入って来る気配がない。
ん?許可?声に出して言った方がいいのか?

「『許可』します、どうぞ」

すると、ようやく女性は引き戸から玄関の中に入ってきた。
人ではない様な気配を出しておきながら、まぁ、律儀な事で。

「それで、どの様なご用件で?」

女性は微笑んだまま俺に近付くと片手を前に出すと、そこには綺麗な藍色の玉が握られていた。
外にあった石柱と同じ色だ。
玉の大きさはゴルフボール程だろうか。
俺はそれを見て、女性の顔に視線を戻す。
その時、女性は微笑みながら。

「合格を、与えるぞ」

と、気付いた時には女性の顔は目の前に迫っていた。
次に腹部に熱さを感じる。

「熱っ!?」

あまりの熱さに腹部に手を当て様としたが

(身体が動かない!?)

なんとか視線だけを腹部に落とすと、女性の片手が手首の所まで差し込まれていた。
頭が追い付かない。
熱い、これは痛みから来る熱さなのか。

「のう、おぬし」

不意に呼ばれ、苦痛に堪えながら女性に視線を向ける。
女性は微笑みを崩さず、更に言う。

「ワシの名前を呼んでおくれ?」

名前?
なにを、言ってるんだ?
今、初めて出会い、初めて話したというのに名前など知るはずがない。
ヤバイ、意識が飛びそうだ。
ふと、頭の隅に単語が思い浮かぶ。
それを、俺は口に出す。

「・・・茜」

俺が意識を保てたのはそこまでだった。
だが、意識がなくなる前に声を聞いた気がした。
楽しそうな、満足した様な声を。

「これから、宜しくな?」



冷たい風で、俺は目を覚ました。
仰向けで寝転がっているようだ。
首を振り、周りを見渡すとリビング、もとい客間まらしい。
庭に出るための窓を見ると、窓が開いている。
網戸はしてある様だが。
外は暗くなっており、風もやはり冷たくなっている。
上半身を起こし、立ち上がり電気を点け様とスイッチに手を掛ける。
スイッチを押して驚いた。
そりゃもう、マジで驚いた。
先程見た、窓の所を網戸を開け腰掛ける女性が居たからだ。
女性は後ろを確認する様に、少し振り向くと微笑み言う。

「起きたみたいだのう?」

驚いたまま頷く。
驚き過ぎて声が出ない、なにせ夢だと思っていたのだから。
俺の様子を知ってか、クックッと笑うと話し出す。

「現実だぞ、先程の事も」

俺は急いで腹部に触る。
何ともない、痛みも違和感もない。
俺は顔を上げ女性を見る。
女性は立ち上がり部屋に入ると網戸を締め、こちらを振り向く。

「まず自己紹介からかのう?ワシは龍神の茜、宜しくな?」

龍人?
俺の表情から何かを、察したのか続ける。

「人ではない、神の方の・・・な」

おいおい、神様が来ましたよ。

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