魔法の世界で、砲が轟く
第八十話 寝返り
「行くのかしら?」
「ええ。お世話になりました」
皆が寝静まった夜半に数人の兵士が、第一独立師団を目指し、兵士の服に着替えて砦を出ようとしていた。
スーザンは送り出すための人間としてどの場にいる。
「あなたたち、これを仲達に渡してちょうだい」
そう言ってスーザンは紙切れを差し出した。
「これは?」
「仲達への個人的な伝言を書いたモノよ」
「分かりました。しかとお渡しします。しからば、御免!」
そう言って兵士達は暗闇に姿をくらましていった。
「これで準備は完了ね」
スーザンは呟いた。
「おい、何か物音がしないか?」
そう言ったのは第三師団の一人の兵士だ。彼ら二人は夜間の哨戒任務を担当しており少し前線に近い場所にいた。
「ああ。何だ?」
「動物ではない。恐らく敵だ」
「敵か?こんな場所に?」
「この時間帯に周辺で哨戒任務を行う味方の部隊はいない。と言うことは敵だ」
「よし。方角は?」
「十一時方向。距離は分からん」
「見えるか?」
「……見えた! 距離四〇メートルほど! 撃て!」
静寂を破り、機関銃の連射音が森に響いた。
数名の人影は倒れ、見えなくなる。
「手応えはあったが、油断はするな!」
斥候の兵士は慎重に倒れた地点に近づいていく。
近づくにつれ、血の臭いがしてくる。
「死んでいる、ってこれは!」
一人の兵士が思わず叫んだ。
「これは第一独立師団の兵士じゃあないか!」
「まさか……そんな!」
「おい、どうするんだよ!」
「仕方ない、上に報告に行くぞ」
「いや、待て! こいつ何か持ってる」
そう言って死体が持っていた何かを取る。
「これは!」
それは何かを書いたメモであり、血に染まってはいたが、内容は読み取ることが出来た。
「急いで、上に報告せねば!」
斥候の二人の兵士は急いでその場から走り去った。
攻勢を再び開始して半日ほど。
既に要塞への攻撃は始まっており、今、ジーマン軍の本隊は王都へ向け進軍中であった。
進軍の指揮を執るミンシュタインはその隊列の中央で装甲車に乗っていた。
そのミンシュタインの元へ兵士近寄ってきた。
その兵士は手に電報のような紙を持っており、顔色は真っ青だ。
「どうした?」
「閣下、大変です! 統合本部より以下のような命令が!」
その電報を読んだミンシュタインは思わず、手に持っていた紙を取り落とす。
そこに書かれていたのは第一独立師団を攻撃、殲滅せよと言う命令であった。
命令の下にはこうなった理由が記されており、訳すと以下の内容になる。
第一に第一独立師団が保護した人間がハットラー元総統の暗殺に関わっていたこと。
第二に第一独立師団は魔国内部より師団へ向けた不審な電報が何度か確認されていること。
第三に第一独立師団が魔王軍のものと仲良く話しているところを複数の兵が確認したこと。
第四に第一独立師団へ向けて内通の内容を記した紙を持った兵士が前線の部隊によって射殺されたこと。
以上のことから第一独立師団は敵に内通している可能性が高く、一刻も早くこれを殲滅する必要があると判断されたことが原因であった。
「これは……」
ミンシュタインの幕僚達もその内容に絶句する。
「これは本当なのですか?」
「統合本部は特殊な電波で伝えてくるから間違いない。これは本当の命令書だ」
「しかし、第一独立師団は数多くの武勲を立てた上、我々の窮地を救った大切な仲間です! 彼らを殲滅せよというのはあまりにも……」
「……軍人は政治に口出しをしてはならない。これが上からの命令だというのであれば、それに従うしかあるまい」
「しかし、閣下、これに従うのですか! 仮に彼らと対決するとして第一独立師団はこの軍の虎の子です! 彼らを倒すにはかなりの兵力がいります!」
「分かっておる!」
ミンシュタインが動揺する幕僚達を怒鳴りつけた。
「万が一にも彼らが魔王軍に通じていれば、我が軍は魔王軍と挟み撃ちにあい、壊滅する。直ちに部隊を引き返し、第一、三師団と合流し判断をする」
「大変です!」
またも伝令が入ってくる。
「今度は何だ!」
「第一、三師団が第一独立師団と戦闘を始めた模様です!」
「早まった真似を! すぐに止めさせろ!」
「もう無理です、閣下!」
怒鳴ったミンシュタインを幕僚の一人が止める。
「戦闘開始後に戦闘中止命令が出れば、部隊に余計な混乱が起き犠牲は増えます! もし混乱しているところを見たら、あの第一独立師団のことです。容赦なく殲滅に移ります! そうなれば我が軍の退路は断たれたも同然! 戦闘中止命令だけはなりません!」
「っぐう! 撤退だ、急ぎ退けえ!」
ミンシュタインは急いで兵をバラーの町へと引き返すよう命令を出した。
その撤退するミンシュタイン達の元に続報が入る。内容は第一、三師団が苦戦中という内容だ。
「まさか第一独立師団は準備をしていたと言うことか! では、やはり!」
「まだ分からん。とりあえず現場へ急ぐぞ!」
「ええ。お世話になりました」
皆が寝静まった夜半に数人の兵士が、第一独立師団を目指し、兵士の服に着替えて砦を出ようとしていた。
スーザンは送り出すための人間としてどの場にいる。
「あなたたち、これを仲達に渡してちょうだい」
そう言ってスーザンは紙切れを差し出した。
「これは?」
「仲達への個人的な伝言を書いたモノよ」
「分かりました。しかとお渡しします。しからば、御免!」
そう言って兵士達は暗闇に姿をくらましていった。
「これで準備は完了ね」
スーザンは呟いた。
「おい、何か物音がしないか?」
そう言ったのは第三師団の一人の兵士だ。彼ら二人は夜間の哨戒任務を担当しており少し前線に近い場所にいた。
「ああ。何だ?」
「動物ではない。恐らく敵だ」
「敵か?こんな場所に?」
「この時間帯に周辺で哨戒任務を行う味方の部隊はいない。と言うことは敵だ」
「よし。方角は?」
「十一時方向。距離は分からん」
「見えるか?」
「……見えた! 距離四〇メートルほど! 撃て!」
静寂を破り、機関銃の連射音が森に響いた。
数名の人影は倒れ、見えなくなる。
「手応えはあったが、油断はするな!」
斥候の兵士は慎重に倒れた地点に近づいていく。
近づくにつれ、血の臭いがしてくる。
「死んでいる、ってこれは!」
一人の兵士が思わず叫んだ。
「これは第一独立師団の兵士じゃあないか!」
「まさか……そんな!」
「おい、どうするんだよ!」
「仕方ない、上に報告に行くぞ」
「いや、待て! こいつ何か持ってる」
そう言って死体が持っていた何かを取る。
「これは!」
それは何かを書いたメモであり、血に染まってはいたが、内容は読み取ることが出来た。
「急いで、上に報告せねば!」
斥候の二人の兵士は急いでその場から走り去った。
攻勢を再び開始して半日ほど。
既に要塞への攻撃は始まっており、今、ジーマン軍の本隊は王都へ向け進軍中であった。
進軍の指揮を執るミンシュタインはその隊列の中央で装甲車に乗っていた。
そのミンシュタインの元へ兵士近寄ってきた。
その兵士は手に電報のような紙を持っており、顔色は真っ青だ。
「どうした?」
「閣下、大変です! 統合本部より以下のような命令が!」
その電報を読んだミンシュタインは思わず、手に持っていた紙を取り落とす。
そこに書かれていたのは第一独立師団を攻撃、殲滅せよと言う命令であった。
命令の下にはこうなった理由が記されており、訳すと以下の内容になる。
第一に第一独立師団が保護した人間がハットラー元総統の暗殺に関わっていたこと。
第二に第一独立師団は魔国内部より師団へ向けた不審な電報が何度か確認されていること。
第三に第一独立師団が魔王軍のものと仲良く話しているところを複数の兵が確認したこと。
第四に第一独立師団へ向けて内通の内容を記した紙を持った兵士が前線の部隊によって射殺されたこと。
以上のことから第一独立師団は敵に内通している可能性が高く、一刻も早くこれを殲滅する必要があると判断されたことが原因であった。
「これは……」
ミンシュタインの幕僚達もその内容に絶句する。
「これは本当なのですか?」
「統合本部は特殊な電波で伝えてくるから間違いない。これは本当の命令書だ」
「しかし、第一独立師団は数多くの武勲を立てた上、我々の窮地を救った大切な仲間です! 彼らを殲滅せよというのはあまりにも……」
「……軍人は政治に口出しをしてはならない。これが上からの命令だというのであれば、それに従うしかあるまい」
「しかし、閣下、これに従うのですか! 仮に彼らと対決するとして第一独立師団はこの軍の虎の子です! 彼らを倒すにはかなりの兵力がいります!」
「分かっておる!」
ミンシュタインが動揺する幕僚達を怒鳴りつけた。
「万が一にも彼らが魔王軍に通じていれば、我が軍は魔王軍と挟み撃ちにあい、壊滅する。直ちに部隊を引き返し、第一、三師団と合流し判断をする」
「大変です!」
またも伝令が入ってくる。
「今度は何だ!」
「第一、三師団が第一独立師団と戦闘を始めた模様です!」
「早まった真似を! すぐに止めさせろ!」
「もう無理です、閣下!」
怒鳴ったミンシュタインを幕僚の一人が止める。
「戦闘開始後に戦闘中止命令が出れば、部隊に余計な混乱が起き犠牲は増えます! もし混乱しているところを見たら、あの第一独立師団のことです。容赦なく殲滅に移ります! そうなれば我が軍の退路は断たれたも同然! 戦闘中止命令だけはなりません!」
「っぐう! 撤退だ、急ぎ退けえ!」
ミンシュタインは急いで兵をバラーの町へと引き返すよう命令を出した。
その撤退するミンシュタイン達の元に続報が入る。内容は第一、三師団が苦戦中という内容だ。
「まさか第一独立師団は準備をしていたと言うことか! では、やはり!」
「まだ分からん。とりあえず現場へ急ぐぞ!」
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