魔法の世界で、砲が轟く

spring snow

第七十九話 再会

「要塞を取り囲むようにして戦車隊を配置せよ! 決して誰も要塞から出すな!」


 要塞へ到着した第一独立師団の指揮官の真一はすぐに指示を出し、戦車隊を配備していく。
 その最中、斥候から驚くべき情報が入ってきた。


「魔国の兵士が白旗を揚げ、こちらに向かってきます!」


 その報告に思わず真一は近くにいた司馬懿を見る。


「分かりませんが、何らかの使者とみるべきでしょう。受け入れるべきです」


「分かった」


 そう言って真一はその兵士達の保護を認めた。
 その兵士達の中に魔王軍の高官がいるらしく、真一達に面会を求めていたため、真一達は会いに行くことにした。




「何のようだ!」


 真一がその兵士達に語りかける。


「私は魔王軍の参謀、スーザンよ~! 真一殿と愛しの仲達に会いに来たの!」


 兵士達の中央にいた筋肉だるまの男がそうのたまう。


「なあ、司馬懿。奴は本当に孔明なのか? 俺にはただの変態にしか見えないのだが……」


「ええ間違いありません。奴は孔明です」


 そう司馬懿が呟く。


「孔明! あんた私に何のようなの! もし、くだらない内容だったらこの場で撃ち殺すわよ!」


「あっら~、怖い怖い。仲達ちゃん、その性格未だに直ってないのね! まあ良いわ。本当の用はこの兵士達よ!」


 そう言って横の護衛のような兵士達を指さした。


「あれは……」


 真一達はよく目をこらして見てみる。
 どこかでよく見たことのある鎧だ。それに反応したのは司馬懿の方が先であった。


「李典隊のものだ!」


「何だと!」


 真一は司馬懿の言葉に思わず驚いてよく見る。すると確かに李典隊が身につけていた鎧であることが分かる。


「生きていたのか!」


 そう言って真一は思わず駆け寄りにいく。


「真一殿、危険です!」


 司馬懿は思わず叫ぶ。


「大丈夫よ! 伏兵なんて野暮な事はしないわ!」


 スーザンがいかにも心外とばかりに言う。


「お前達、生きていたのか!」


「おお、主殿!」


 兵士達は真一に臣下の礼を取る。


「よくぞ生きていてくれた!」


「我々は偶然、先の戦闘において助かりました。ですが、他の者達は……」


「そうか、私のせいで……」


「そのようなことは言わないでください! 隊長も主殿を生かすために戦ったはずです」


「ありがとう」


 そう言って真一達はしばらくの間、談笑をする。
 やがて、真一が言った。


「貴殿等が生きているのを確認できて本当に良かった。だが、今は敵同士。決して手は抜かんぞ」


「そのことなのですが……」


 その兵士達が言いづらそうに答える。


「実は我々は主殿と共に戦いたいのです。どうか、それを許してはもらえませんか?」


「え、何故だ?」


「隊長ならきっとそうしたと思うのです。どうか我々を主殿の配下に加わらせてもらえませんか?」


「スーザン、彼らの言っていることはアンタは構わないのか?」


「ええ。私が許可を出したからこの場に彼らはいるのよ」


「……少し待ってくれ」


 そう言って真一は司馬懿の元へ一旦向かい、事の成り行きを話して判断を仰いだ。


「正直なところ、賛同しかねます。今、彼らを招くところを見たらジーマン軍は確実に我々を疑うでしょう。ハットラー総統がご存命であれば、まだ出来たかもしれませんが後ろ盾がない今、疑いを招くような事を行うのは危険です」


「だが、彼らは元々仲間だぞ。ここで見捨てるのは……。他の兵士の士気にも影響すると思う」


「ですが、これは士気の問題以前に真一殿の命に関わります。早まった行動は危険です」


「司馬懿、思ってくれるのは嬉しいが彼らの居場所はここしかないのだ。どうにかできんか?」


「……策はあります。ただ、バレた場合が危険です。ただでさえ、今のジーマン軍は総統暗殺の件で神経が尖っています」


「それでも構わない」


「分かりました。では、私を彼らの元へ連れて行ってください。それから守殿をここへ」


「分かった」


 そう言って司馬懿はスーザンの元へ向かい、守を待つことにした。


「お呼びかい?」


 しばらくしてから守が到着した。


「守殿、申し訳ありませんがドイツ軍の軍服を出してもらえませんか?」


「ああ。構わないが……」


 守は少し戸惑いながら、軍服を召喚する。


「ありがとうございます」


 その軍服を司馬懿は李典隊の兵士達に渡す。


「こちらに来る際にその軍服を着て来なさい。その姿を絶対に誰にも見られてはならん。良いな?」


「「「御意」」」


「それでは、私はこれで失礼する」


「ねえ、仲達。久しぶりに話でもしな~い?」


「孔明よ。今、我々は敵同士。なれ合うつもりはない」


「あら~連れないわね~。あなたの主のことに関して重要な情報なのに……」


「っ! 何だ?」


「相変わらず主思いの忠臣ね」


「茶化すのなら話は聞かんぞ」


「ごめんごめん~。実はね、ハットラー暗殺の件に関して何だけど~、犯人はあなたたちがよく知る人物だわ~」


「何だと!」


「だから~、気をつけなさい」


「孔明、何が狙いだ?」


「ふっふ! 女は秘密を持っているほど輝くのよ!」


「ふざけるな!」


 そう言って司馬懿はスーザンに近寄ろうとする。
 しかし、そのスーザンを捉えたと思った手は虚空を切る。


「じゃあね、また戦場で会いましょう!」


 そう言ってスーザンは消えていった。
 後には数名の兵士と司馬懿達が残された。


「お前達は行け」


 そう言って兵士達には一旦退かせる。


「我々も戻りましょう」


「「分かった」」


 司馬懿は第一独立師団の人間以外に見られぬよう、すぐにその場を後にした。


「おい、今のを見たか?」


「ああ、確かに。あれは第一独立師団の参謀だったはず」


「つまり奴等は裏で……」


「上に報告に行くぞ!」

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