魔法の世界で、砲が轟く
第三十八話 魔王軍第2軍
「それで、敵に攻撃を食らって部隊は壊滅したと……」
荘厳に彩られた部屋の一番奥に位置する場所から、低い声が聞こえた。
低い声は地面を揺るがすかのように重く静かな物である。
「はい。申し訳ありません!」
魔王軍参謀長のケルンが頭を下げる。
彼は魔王クロノスが見いだした将軍の一人であった。
見いだされる前は一つの部隊の副官の立ち位置でしかなかったが、活躍ぶりがクロノスの目にとまり参謀長にまで成り上がった人物であった。
兵の指揮統率や情報統合能力などが飛び抜けて優秀な人物である。
「別に構わん。勝敗は兵家の常だ。今後、同じ事を繰り返さないのが大事なのだ」
「御意!」
「今回の敗因は何だ?」
「敵の新兵器と新部隊による攻撃です。おそらく勇者の物と思われます」
「勇者だと?」
勇者という単語を聞いた瞬間、クロノスの眉がぴくりと動いた。
「勇者達はあの時に全員……」
「彼らは、どうもコットン王国の方で指名手配になっていた人物らしく、ジーマンに亡命した模様です。私もそのような自体があるとは思わず、油断しておりました」
「そうか。起きたことはやむを得ん。これからどう対策するつもりだ?」
「参謀部の方から一人参謀を派遣し、事に当たらせております。敵は、どうも強力な戦車を投じてきたらしく生き残った者の話では装甲は極めて厚く、エンジン部らしき部分に当たった攻撃のみが相手を行動不能にできたそうです。さらに敵の砲撃は強力であり、最新の防御魔法すら貫通してきたそうです。」
一瞬間を置いてから話し出す。
「敵の従来の戦車とは違いすぎます。我々が開発したB1も為す術もなく撃破されました。これらの情報から判断するに勇者による能力で生み出された物と思われます。こちらも彼らに対抗するために例の方法を試してみようかと……」
「うむ。構わん」
まだ、戦争は始まったばかりである。
魔王軍のジーマン攻略本隊として待機していた魔王軍第2軍司令部は、参謀部から派遣されてくる新しい参謀を心待ちにしていた。
「参謀の方はいつ頃いらっしゃるんですか?」
第2軍副官のグレイは軍団長に聞いた。
彼は元々はコットン国攻略戦の指揮官をしていたが、敗北の責任から(王国軍を城から逃がしたこと)降格処分を受け、この軍団の副官に任命されていた。
軍団長のニックはのんびりと答えた。
「今日の~、夕刻頃と~、言っていましたよ~」
亀のようにのろいしゃべり方で一見ふざけているようだが、彼にとっては、まじめにしゃべっている。
彼はこう見えても、かなり優秀な人間で士官学校においては次席で卒業をしている。
この話し方は彼の癖のような物であり、直しようがないのだが特に影響が出ているわけではないのでグレイは気にしないでいる。
「そうですか。となると、そろそろ来て……」
そう言いかけたところで、グレイは何か凄く嫌な気がした。
かつて、何度かこのような悪寒に襲われたことがある。
その時は、今後二度としたくないような経験が待ち受けている。
しかし、そのような可能性があるものなど、存在するはずがない。
気のせいかとグレイが気を取り直そうとするとにわかに外が騒がしくなった。
「何か~、外が~、騒がしいですね~。何か~、起きた~、のでしょうか~?」
そこで言葉を切るか!と突っ込みたい気持ちを堪えつつ、グレイは外の確認のため天幕を出ようとすると一人の兵士が駆け込んできた。
「報告!参謀部から派遣されてきた方がご到着為されました!」
「おお!すぐお迎えに行く!」
そう言って、外に出ようとするグレイを兵士は遮った。
「副官殿、今は出ない方がよろしいかと……」
「なぜだ!大事なお客様だぞ!私がお出迎えに行かねば失礼に当たるであろう!」
「そう言う問題ではなく、精神衛生上良くないかと……」
先ほどから訳の分からない態度を取る部下を怪訝に思いつつ、グレイは制止を振り切って外へ出た。
グレイはそこで兵士の忠告をよく聞くべきであったと心の底から思った。
(先ほどの悪寒の原因はこれだったか……)
そこで目にした物は……
「うっふ~ん!あなたいい男ね!今夜、私の部屋で……うっふ!」
上半身のみ制服で、下はブーメランパンツを穿いた男(怪物といっても差し支えないであろう)が近くの兵士を抱きしめながら口説いているという地獄絵図が広がっていた。
荘厳に彩られた部屋の一番奥に位置する場所から、低い声が聞こえた。
低い声は地面を揺るがすかのように重く静かな物である。
「はい。申し訳ありません!」
魔王軍参謀長のケルンが頭を下げる。
彼は魔王クロノスが見いだした将軍の一人であった。
見いだされる前は一つの部隊の副官の立ち位置でしかなかったが、活躍ぶりがクロノスの目にとまり参謀長にまで成り上がった人物であった。
兵の指揮統率や情報統合能力などが飛び抜けて優秀な人物である。
「別に構わん。勝敗は兵家の常だ。今後、同じ事を繰り返さないのが大事なのだ」
「御意!」
「今回の敗因は何だ?」
「敵の新兵器と新部隊による攻撃です。おそらく勇者の物と思われます」
「勇者だと?」
勇者という単語を聞いた瞬間、クロノスの眉がぴくりと動いた。
「勇者達はあの時に全員……」
「彼らは、どうもコットン王国の方で指名手配になっていた人物らしく、ジーマンに亡命した模様です。私もそのような自体があるとは思わず、油断しておりました」
「そうか。起きたことはやむを得ん。これからどう対策するつもりだ?」
「参謀部の方から一人参謀を派遣し、事に当たらせております。敵は、どうも強力な戦車を投じてきたらしく生き残った者の話では装甲は極めて厚く、エンジン部らしき部分に当たった攻撃のみが相手を行動不能にできたそうです。さらに敵の砲撃は強力であり、最新の防御魔法すら貫通してきたそうです。」
一瞬間を置いてから話し出す。
「敵の従来の戦車とは違いすぎます。我々が開発したB1も為す術もなく撃破されました。これらの情報から判断するに勇者による能力で生み出された物と思われます。こちらも彼らに対抗するために例の方法を試してみようかと……」
「うむ。構わん」
まだ、戦争は始まったばかりである。
魔王軍のジーマン攻略本隊として待機していた魔王軍第2軍司令部は、参謀部から派遣されてくる新しい参謀を心待ちにしていた。
「参謀の方はいつ頃いらっしゃるんですか?」
第2軍副官のグレイは軍団長に聞いた。
彼は元々はコットン国攻略戦の指揮官をしていたが、敗北の責任から(王国軍を城から逃がしたこと)降格処分を受け、この軍団の副官に任命されていた。
軍団長のニックはのんびりと答えた。
「今日の~、夕刻頃と~、言っていましたよ~」
亀のようにのろいしゃべり方で一見ふざけているようだが、彼にとっては、まじめにしゃべっている。
彼はこう見えても、かなり優秀な人間で士官学校においては次席で卒業をしている。
この話し方は彼の癖のような物であり、直しようがないのだが特に影響が出ているわけではないのでグレイは気にしないでいる。
「そうですか。となると、そろそろ来て……」
そう言いかけたところで、グレイは何か凄く嫌な気がした。
かつて、何度かこのような悪寒に襲われたことがある。
その時は、今後二度としたくないような経験が待ち受けている。
しかし、そのような可能性があるものなど、存在するはずがない。
気のせいかとグレイが気を取り直そうとするとにわかに外が騒がしくなった。
「何か~、外が~、騒がしいですね~。何か~、起きた~、のでしょうか~?」
そこで言葉を切るか!と突っ込みたい気持ちを堪えつつ、グレイは外の確認のため天幕を出ようとすると一人の兵士が駆け込んできた。
「報告!参謀部から派遣されてきた方がご到着為されました!」
「おお!すぐお迎えに行く!」
そう言って、外に出ようとするグレイを兵士は遮った。
「副官殿、今は出ない方がよろしいかと……」
「なぜだ!大事なお客様だぞ!私がお出迎えに行かねば失礼に当たるであろう!」
「そう言う問題ではなく、精神衛生上良くないかと……」
先ほどから訳の分からない態度を取る部下を怪訝に思いつつ、グレイは制止を振り切って外へ出た。
グレイはそこで兵士の忠告をよく聞くべきであったと心の底から思った。
(先ほどの悪寒の原因はこれだったか……)
そこで目にした物は……
「うっふ~ん!あなたいい男ね!今夜、私の部屋で……うっふ!」
上半身のみ制服で、下はブーメランパンツを穿いた男(怪物といっても差し支えないであろう)が近くの兵士を抱きしめながら口説いているという地獄絵図が広がっていた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
15254
-
-
238
-
-
755
-
-
2813
-
-
381
-
-
549
-
-
63
-
-
20
-
-
1978
コメント