魔法の世界で、砲が轟く

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第二十話 機甲部隊誕生



「で、その勇者達がこの砲弾を用意しろと言ってきているのか?」


 そう聞いたのは機械国ジーマンの総統アデルフ ハットラーだ。
 彼に渡された


「ええ、彼らにとってこのサイズの砲弾が標準サイズだそうで…」


 答えるのは情報局長のレイトンだ。


「75㎜が標準だと…。まあ良い。とりあえず、用意はさせてみようじゃないか」


 そう言ってハットラーは電話で兵器局に問い合わせた。




3日後
 ジーマンの首脳部がこの日、ジーマンの首都ベラリンの郊外にある兵器試験場へと集められた。理由は言うまでもなく、真一達の兵器の威力を確かめるためである。
 彼らがたどり着いて最初に目撃した物は未だ見たことのない戦車だった。


四号戦車F2型
旧ナチスドイツ軍の主力戦車(MBT)として各地の戦場を戦い抜いた四号戦車の43口径75㎜砲の長い砲身を搭載した戦車である。
四号戦車はその働きぶりから別名ワークホースとも言われ、時代を経るごとにそのニーズを満たす進化を遂げてきた。故に信頼性などは高い。


 こうした理由からこの戦車を最初に召喚した。
 ジーマンでは長年、魔王軍との戦に備えて多くの兵器を開発してきている。その兵器の戦車の中でもでも最高の火力は56㎜砲であった。もともと、魔国はそれほど好戦的な国ではなかったためにそれほど軍事力は持っていなかったため、これぐらいの砲でも十分に対応できた。
 しかし、今の魔王クロノスに変わってから状況は一転した。クロノスは急激な軍拡を始め、防御魔法もより強力な物をあみだした。もちろんジーマンも対抗しようと新兵器の開発を急いでいたが、そう簡単に兵器開発というのは進む物ではない上、開発を怠っていたせいで兵器開発の経験者が少なくなってしまい、その技術を再構築するのに多くの時間が掛かり開発が遅れているのが現状であった。
 故に完成品を見せてある程度その作りなどを理解させて独自の戦車を後に設計して貰おうと言うのが、真一達の考えである。


「それでは、これより射撃試験を行います。目標は800m地点に魔王軍の防御壁と同じ強度の鉄板を置かせていただいております」


 守はそう説明をして全員に戦車から離れさせた。


「撃て!」


 四号戦車から砲撃音がして、遠方に煙が上がった。
 しばらくすると無線で


「鉄板の破壊を確認」


 というアナウンスが聞こえてきた。


「まさか、本当に撃破できるとは…」


 ジーマンの首脳部はしばし絶句した。


「これが、我々の召喚できる兵器の威力です」


 するとハットラーは前に出て、真一達の手を握りつつ言った。


「どうか、我々に協力していただけないだろうか」


「そのために我々はここにいるのです」


 真一達はそう言って、ハットラーの手を握り返した。
 こうして無事、真一達はジーマンに認めて貰うことができた。


 射撃試験の後片付けも終わり、後は召喚を明日に控えるのみとなった真一達は新庄からの連絡を待っていた。
 新庄にはコットン国の状況と李典達の消息に関しての情報を集めるよう指示していた。前回の反省を踏まえ、今回は射撃試験までの空いた時間を使って無線の中継地点を作っている。
 時間通りに連絡が来た。守が鉛筆で紙に書く音だけが部屋に響いている。


 しばらくして守は鉛筆を机に置いた。


「どうだった?」


 真一がそう聞くと守は黙って紙を渡した。
 そこに書かれた内容を要約すると
・李典以下の将兵は殲滅されていたのを確認した。
・補給部隊も殲滅されており、増援の4万の将兵は撤退した。
・籠城をした勇者達は未だ戦闘を続けているが、落城するのは時間の問題である。
 以上のことであった。


「やはり、李典はだめだったか…」


 そう呟いた真一の目には涙が浮かんでいた。元々は、真一達の事情に巻き込んだ形であるにも関わらず、結局何もできぬまま死なせてしまったことに強い責任を感じていた。
 そして、誓った。決してこのような犠牲は二度と出さぬと。
 そんな真一達を見守るように星達が煌めいていた。








翌日
 真一達は召喚を行うため、昨日と同じ場所に来ていた。
 今回はジーマンの将校達が参列しており、戦車や将兵の召喚を今か今かと待っている。


「それでは、これより召喚を行います」


 真一がそう告げ、守と真一は召喚を行った。
 今回召喚したのは四号戦車F2型100両、およびそれを運用するドイツ戦車兵600名(内、100名は予備)、ドイツ歩兵1万(榴弾砲15cmsFH18の40門の運用を含む)である。これらは完全に機甲化しており、使う兵員輸送車はM3ハーフトラック1200両(内200両は補給物資輸送用)である。小銃はM1ガーランドとM1 60㎜バズーカを3本を装備している。
 これらの弾薬や補給物資はジーマンで全て補給できることが確認されている。
 これらの指揮官として選ばれたのは、ハインツ・グデーリアンである。
 彼は第1次大戦から戦車の有効性を確信しており、ドイツ戦車隊の生みの親の一人である。数々の作戦の指揮を執り、あだ名は韋駄天ハインツであった。
 こうして、ジーマンは着々と魔王軍との戦争に向け準備を整えていくのであった。



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