魔法の世界で、砲が轟く

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第十九話 尋問と交渉

 5人はすぐに駆けつけてきたジーマンの兵士によって近くの基地らしきところに連行された。
 基地には明らかに戦闘車両と思われる物や銃器の類が置いてあり、かなり前世に近い科学力を持ったと国と言うことが分かった。
 その基地の建物の一角にある小さな部屋に通され待つように指示された。


「俺たち、どうなるのかな?」


「少なくとも、すぐに殺したり何だりってのはないだろう」


「ええ、彼らにしてみれば貴重な戦力です。できる限り手放したくないはずだと思いますよ。我々の時代でも亡命してきた将兵をいきなり殺すというのは少なかったですから。」


「あくまでも少なかった、だろ。あったことには変わりないじゃん」


「ですが、考えてみてください。何者かが敵に追われて逃げてきた。そしたら、その者は何かしら敵にとって都合の悪い情報を握っているかもしれない。もちろん敵による罠も考えられますが、話だけでも聞いていようと思いませんか?」


「む、確かに」


「今、我々はその存在なんですよ。ですからできる限り自分重要性をアピールするのですよ」


 司馬懿が助言をした直後、部屋のドアが開き軍服姿の男が入ってきた。


「皆さん、こんにちは。私はカール少佐だ。この基地の副官をやっている。宜しく。」


 そう笑顔で自己紹介をしてきた。


「私は秋山真一と申します」


「僕は近藤譲と申します」


「俺は加藤幸一と言う」


「自分は伊藤守と言います」


「私は真一様配下の司馬懿にございます」


「うむ、分かった。話を聞きたいところだけど、不眠不休で逃げてきたみたいだしまずは、食事でもいかがですか?」


「かたじけない」


 そう感謝して、カールを含めた6人は食堂へと向かった。




「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」


 一気に料理を食べていく5人の姿を見て、カールは驚いていた。
 元々、カールはこの基地の副官などではなく、情報局の人間である。ジーマンはコットン王国に対してスパイを送り込んでおり、それ故、カールもある程度情報をつかんでいた。
 

 スパイの情報によると、コットン国は勇者を召喚したらしいがその中にステータスは致命的に悪いが、スキルが異常な4人の勇者がいるという情報が届いていた。最新の情報ではこの4人は護衛の任務中、魔王軍と交戦。途中で怖じけづき、逃げ出したためにコットン国の補給線は壊滅的となり、魔王軍との戦争は敗色濃厚となったという。なお、この4人は現在も逃亡中とのことだ。


 だが、カールは目の前の4人が間違いなくその4人だという確信にもにた勘が働いていた。しかし、1つだけ疑問があった。それは彼らが連れている少女のことだ。彼女に関しては何の情報もない。勇者には副官がつくのが通例らしいが、彼らはその能力ゆえ、つけられていない。
 にもかかわらず、配下がいるとはどういうことなのか。しかも、他の4人と違い、この少女だけは何かが違った。まるで歴戦の将軍を見ているような気になってくるのだ。自分の勘が彼女に対してだけは絶対に敵に回すなと盛大な警報を発してきている。こんなことはカールの人生で初めてのことだった。その異常さに震えそうな体を押さえ込みつつカールは切り出した。


「お疲れのところ悪いんだが、少し聞きたいことがある」


 5人はここからが正念場だときを引き締めた。


「単刀直入に聞こう。どうしてここに逃げてきた?」


「我々はコットン王国で輸送隊の護衛中ある事情により配下の部隊が殲滅され、
任務の続行を困難だと判断し退避することに決めました。しかし、我々は王国内
でも煙たがられていた身、あのまま国にいては危険だと判断し、亡命を決めました」


 あまりにも、あっさりと逃げたことを供述したことにカールは拍子抜けした。
ただ、よく考えてみるとここで供述した内容に嘘があれば、彼らのみの置き所は今度こそなくなる。故に本当のことを言っているのは当たり前のことかとカールは納得した。


「では、ある事情とは何が起きたのですか?」


「その情報を言う前に1つ条件がある」


「条件を出すとは良いご身分ですね。自分の立場をわきまえているのですか?」


「そちらこそお分かりなのか?ここで我々を王国に突き出せば、それこそあなた方にはカードがなくなる。王国はこのまま行けば間違いなく魔王軍に滅ぼされるでしょう。そうすれば、次の目標はどこになるかお分かりですね?その時に勇者を持たずして、どう戦うのですか?」


 司馬懿がそう言うと今度こそ、カールは驚きを隠せなかった。第一に自分たちが彼らを勇者だと分かっていることを知っていること。第二にその勇者こそジーマン最大の切り札だと言うことだ。
 というのも、魔王軍は攻撃関連にのみ特化させてきたため諜報活動などを苦手としてきたのだ。故に勇者の実力を測りかねる魔王軍はそう簡単に手出しできない。勇者とはそれだけ大きい存在あのである。
 これらを一瞬で見抜ききった司馬懿はさすがである。


「分かりました。では条件とは何です?」


「我々をあなた方の国の兵士に加えて貰いたい。こちらの4人方は前の世界の兵器と軍人を召喚できる能力を持っている。補給さえしっかりできれば役に立つはずだ」


「兵器とはどのくらいの威力ですか?」


「ご覧になりますか?我が世界の兵器を」


 司馬懿はそう言葉を放つと獰猛に笑った。


 後にカールは手記にこう記している。


 あのときの笑みから私は察するべきだった。その世界の兵器の恐ろしさを。



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