紫陽花の咲く庭で

ラテリ

あの日あったこと-1-

2月になった。
もうすぐあのイベントの時期。

(バレンタイン・・・)

去年までは彼氏どころか
好きな人もいなかった。
でも今年は切くんがいる。

(どんなチョコあげればいいんだろう)

彩と友チョコとか
同性になら贈ったことはある。
でも、異性に贈ったことはほとんどない。
お父さんは・・・ほぼ家にいないから。
単身赴任だし!
彩に聞いてみよう。
参考になるかわからないけど。

「ね~、彩」

お昼休み。
切くんがお昼を買いに行ってる
その隙に、彩のところに行く。
あんパン食べてる。こしあん。

「なに?」

後ろから話しかけると、
そう返事をしながら、
彩はこっちを向いた。
指たてて、プニってやればよかった。

「切くんにどんなチョコ
贈ればいいと思う?」
「彼氏いないあたしに聞く?」

まぁ・・・そうなんだけど。

「他に聞けそうな人もいないし~」
「うーん。切なら単純だし、
なんでも喜ぶと思う」

まぁ・・・それもそうなんだけど。

「でもやっぱり、好きな味とか
あげたいじゃない」
「手作りしてみるとか」

手作りかぁ。喜びそう。
顔赤くして、心の中でガッツポーズ
してる切くんが見える。

「お湯で溶かして型に入れて
固めるだけで大喜びでしょ」
「そう言われるとなんか罪悪感が・・・」

でもやっぱり、手作りにしたほうが
切くん喜ぶよね。

「大丈夫だって!単純・・・もとい、
咲が大好きなんだから」
「そうだよね!」

なんか、切くんがすごくバカにされてる
気がするけど、いっか!

「そうだ、今日の放課後、材料
買いに行く?あたしも家族に
作ろうかなって」
「行く行く!どこに買いに行く?」

この辺には・・・そんなお店ない。
せいぜい、スーパーで板チョコが
売っているぐらい。

「茅ヶ崎でいいでしょ。
駅ビルもあるし」
「ちょうど、特設コーナーの
看板見た気がする」
「決まり。じゃ、放課後に。
文芸部は・・・少し早く切り上げようか」

ついでに真紀ちゃんも誘おう。
・・・誰かにチョコ上げる真紀ちゃんは
想像がつかないけど。

放課後。
真紀ちゃんは誘ったけど、
用事があるらしい。残念。

「じゃ、いこっか」

学校から出ると、北風が寒い。
さっきまで、ぬくぬく暖房部屋に
いたからなおさら。

「まだ5時前なのに暗いなぁ」
「冬だからね」

寒さと暗さの中、
私たちは二宮駅に向かう。

「真紀ちゃん、用事ってなんだろね」
「最近、なんか楽しそうな気がするね」
「そう?あまり
変わらないように見えるけど」

いつも通り読書してる。
表情とかもあまり変わらないと思う。

「ま、真紀のことはいいでしょ。
で、どんなチョコ作る予定?」
「え~と、ハート型がいいのかな」

彩がため息をつく。
え?なんで?

「もう、それだけでごちそうさまって
言いたくなる」
「う~、せっかく彼氏に贈るんだもん」

ホワイトチョコで「切くんへ」って
書こうと思ってたとか、
手紙付けようかとか。
そんなこと言ったら
彩はどんな反応見せるんだろう。

「ラブラブだよね。教室でも」
「べ、別にそんな
イチャついてるつもりは・・・」

・・・クリスマスの時もそうだったけど。
周囲から見たらそう見えるのかな。
いや、見える。絶対。
そう思うと急に恥ずかしくなってきた。

「・・・イチャついてるね。うん」
「でしょ」

からかうのが楽しくて。
反応が面白くて。
ついつい。

「それがいいんだけどね。
ああ、2人うまくいってるんだなって
わかるから」

それはもうとてもとても・・・。

「話変わるけどさ」
「うん?」

彩が改まった感じで
話題を変えようとする。
なんだろう・・・暗い話かな・・・。

「気になってることがあるんだけど」
「な、なに?」

余命のこと・・・かな。
いや、そうだよね。
それぐらいしかないよね。
彩が私に気になることあるって。

「あの日のことが知りたい」
「あの日?」

違うらしい・・・?
あの日ってどの日だろう。

「咲と初めて会った日。
そう、なんであんな場所で倒れてたのか」

・・・予想外の質問がきた。

「いや、それは、ほら。ね?」
「そんなあざとく首傾げられても。
切じゃないんだから逃げきれないよ」

うう・・・。
誰にも言いたくないぐらい
恥ずかしい話なのに・・・。

「どうしても知りたい?」
「うん。あれであたしの人生
変わったわけだし。いい方にね」

・・・たしかにそうかも。
それなら話してもいいかな・・・?

「わかった!
あの日あったこと話すよ」

彩の人生を変えた衝撃の事件!
道端に倒れる謎の少女!
果たしてその訳とは!?

・・・頭の中でそんな盛り上げをしつつ、
私は話を始めた。

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