紫陽花の咲く庭で

ラテリ

告白-2-

バスは初詣に行く人で混んでる。
気づけば切くんと密着するぐらいの距離。
ちょっと寄り掛かると、
切くんの顔が紅くなる。
ほんとにわかりやすくて面白い。

何か話そうかなって思ったけど、
混んでるから静かにする。
それが余計にいい雰囲気に見えたのか、
彩がニヤニヤこっちを見てる。
真紀ちゃんは本を読むふりをして
チラチラ見てる。
・・・余命のこと言ったら、
2人はどんな顔をするんだろう。

告白する覚悟はしてるとはいえ、
やっぱりまだ、怖いな。
私を見る目が変わったりしないかって。
特別扱いされないかって。
・・・大丈夫だよね。きっと。

いろんな意味でドキドキしてたら
バスが神社前の停留所に到着した。
みんなが一斉に降りる。

バスの中が暖かかったからか、
外は余計に寒く感じられる。
北風が冷たい。

「いやー、熱かったね」
「ラブラブでした・・・!」

ごちそうさまって感じで
私と切くんを見る2人。

「いや、別にそんなつもりじゃ・・・。
ほ、ほら、混んでたから!」
「またまたー」

・・・まぁ、少しわざとだけど。

「キ、キスとかしそうな雰囲気でした」
「いやあんなとこでしないよ!?」

・・・この間したけど。

「あんなとこでって
ことはもうした・・・と」
「え!?いや、それは・・・」

もう!いつも彩鋭い!
真紀ちゃんもニヤニヤしてる。
意外と好きなんだ・・・恋バナ。

「ほ、ほら、早くいこう。混む前に」
「そ、そうそう!」

切くんが必死に話題を
逸らそうとしてくらたからのっかる。
でも当然それは逆効果で。

「そうだね。もう結構、混んでるし、
並んでる間にいろいろ聞こうじゃない」
「楽しみです・・・!」

・・・クリスマスのこと、
どこまで話そう。


「も、もうすぐ順番くるよ」

結局、ほとんど話すことになった。
古書店のデートとか
公園でキスしたこととか。
話してないのは余命のことぐらい。

「思った以上に関係進んでた」
「お似合いだと思います」

切くんは照れながら頭をぽりぽり。
ま、まぁ、彩たちのおかげで
カップルになれたんだし、
その報告だと思えばいいか!
うん。そう思っておこう・・・。
あぁ、しばらく2人に
いじられそうだなぁ・・・。

「で、願い事は何にした?」
「ひみつ」

彩の問いに即答する切くん。
私は切くんがなんて
お願いしようとしてるのかわかった。
きっと、私の余命のこと。

「なに?咲ともっと・・・とか?」
「まぁ、そんなとこ」

追及されたくないように
適当な感じで答える切くん。
話がかみ合ってるようで
かみ合ってない。

「ふーん。咲は・・・同じか。
真紀はなんてお願いする?」
「私は・・・私も秘密です」

切くんと「ずっと」一緒にいたいって
お願いしようと思ってから、
スルーしてもらえてありがたい。

真紀ちゃんは・・・
気になるけどいいか。
咲先輩のが知りたい!
なんて言われたら困るし。

「みんな隠すねぇ。あたしは
今年も平穏になんだけど」

案外、みんな同じなのかもしれない。
形は違うかもしれないけれど。
生きてく以上、それを望むのかも。
私も・・・そうかな。

「咲、いつ言うんだ?」

お金を入れて、お願いをしてる時に、
切くんが小声で聞いてきた。

「この後。ほら、あっちに
少し開けた場所あったから」

木々に囲まれた、
パワースポットみたいな芝生の広場。
そんな場所を来るときに見つけた。

「わかった」

いよいよかぁって思うと緊張してくる。
2人はどんな反応をするのかな。
怖さも・・・さっきより大きいかも。

「さ!初詣も終わったし、どうする?」

お願いをすませた彩がそう言った。
深呼吸をして、心を落ち着かせて・・・。

「あ、あのね。2人に
話しておきたいことがあるの」
「まだ何かあるの?」

ついに言っちゃった。
いや、まだ本題にいってないけど。
これでもう、逃げられない。

「・・・うん。
あっちの広場で話すから」
「わかった」

私の雰囲気を察したのか、
彩の声が少し怖い。
さっきまでの恋バナと違って、
真面目な話。・・・余命の話。

広場までの数十メートル。
頭の中がぐるぐるする。
切くんに告白した時よりも
ずっとずっと。
ほんの数十秒が永遠に感じられる。

「で、なに?」

声が出ない。
切くんは知ってたから。
自分から言うのは・・・
あ、3度目か。
でも、あの時は1年先の話だったから、
実感がなかったのかも。
でも今は・・・数か月先。

怖い。
死ぬのが?
みんなと別れるのが?
よくわからない。

「咲?」
「あの、えっと・・・」

2人はどう思うんだろう。
悲しいのかな。私は悲しい。
心をギューッと掴まれる感覚。

「咲先輩?」

言わなきゃ。言わなきゃ。
わかってはいるんだけど。
これは可能性の話で、
必ず乗り越えて見せるって。
でも、改めて言おうとすると・・・。

「俺が言おうか?」

だめ。これは私の口から言わなきゃ。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
そう、言い聞かせて。

「私・・・余命宣告されてるの」
「え」

彩が絶句した。
真紀ちゃんもそんな感じ。
でも、違うの。
そんな顔させたいわけじゃない。

「あとどれくらいなの・・・?」
「数か月・・・ぐらい」

彩の表情がさらに険しくなった。
真紀ちゃんは顔を逸らしてる。

「何で隠してたの・・・」
「だって、悲しむと思って・・・。
切くんは・・・偶然知っちゃったけど」

今は違うの。
切くんのおかげで。

「もうすぐ・・・お別れ・・・?」

真紀ちゃんの悲しい声が響く。
ああ、私、みんなに愛されてたんだ。
私が死ぬって聞いて、こんなに
悲しんでくれてる。
・・・嬉しい。

「いや、そうはさせないさ」
「うん。私、生きる。
生きて、来年もここにいる」

なんの保障もないけど。
でも、切くんとなら乗り越えられるって
そう思える。

「だから、悲しまないで。
みんなが「生きて」って
思ってくれるだけで私、頑張れる」

きっと大丈夫。
もう、距離も取らない。

「信じてあげてほしい、咲を」
「切・・・」

かっこいい。
よかった。私を好きになってくれたのが
切くんで。本当に。

「そういうこと!
この話は終わる話じゃなくて、
奇跡の始まりだから!」

それに・・・

「みんな、数か月の間、
暗く生きたくないでしょ!」
「・・・そうだね。
その通り。うん、信じる。咲を」

2人に少しだけ笑顔が戻る。
よかった。生きたいってこと、
わかってもらえたみたい。
切くんもホッとしてる。

さぁ!あとは私次第。
逆転目指して。9回裏。
頑張れ、私!頑張れ!私の身体!

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