紫陽花の咲く庭で

ラテリ

アナタイロニソマッテク-3-

古書店での時間の後、私たちは
近くの公園にやってきた。

小さいころからよく来る公園。
身体のこともあるから、
そんなに激しく遊べなかったけど。
いつも座ってたベンチに座る。

「冷たい!」

ベンチはひんやりしてた。
座ると動かなくなるせいか、
足元がさらに冷える。

「な、何か温かい飲み物でも
買ってこようか?」

切くんが照れながらそう言った。
でも、残念だけど、
この辺、自販機がないの。

「大丈夫。それよりね」

私はカバンの中をガサコソ。
え~と、あ。あった。

「ほ、ほら。クリスマスデート
だから・・・ね?」

初めて同じくらいの
男の子にプレゼントを贈る。
何買えばいいかほんとにわからなかった。

お父さんは仕事の関係で
殆ど家にいないし・・・。
他にプレゼントを贈るような男の人だと、
さっきの古書店の・・・。
でも、贈るものは決まって
本だったし・・・。

「ありがとう・・・!」

切くんも女の子からプレゼントを
貰うのはきっと初めてなんだろうなぁ。
すごく照れてる。
顔が紅くなってるのがわかる。

「これ、何?開けてもいい?」
「もちろん!」

切くんがガサゴソと包みをはがす。
もちろん中身は知ってるわけだけど、
なんかドキドキする。
・・・告白と違って、
喜んでもらえるか不安だからかな。

「あ・・・タオル?」
「うん。高級なタオル」

肌触りがとてもいいらしいお高いタオル。

「今は冬だけど・・・切くん、
陸上部でしょ。夏とか
たくさん使うかなぁって」

それを使っている切くんを
見たいっていうのもある。
それはつまり、私が来年も
生きてるってこと。

「ああー、たしかに。肌触りが
いつものと全然違う」

切くんにはわかるらしい。
ほっぺでタオルを感じてる。

「喜んでもらえたようでなにより」
「今度から使うよ。必ず」

そういいながら、切くんはカバンから
小さな箱を取り出した。

「それはなに?」
「当然、俺からの・・・その・・・
クリスマスプレゼント」

切くんはうつむきながら、
徐々に小声になりながら、
プレゼントを渡してくれた。

「そのさ、女性にプレゼントなんて
初めてだから、その、
変なものだったらごめん!」

それは私も同じ。
でもきっと切くんは「変なもの」でも
私から貰ったってだけで喜んだと思う。
私もそう。こうやって、貰えることが
何よりも嬉しい。
・・・なんて恥ずかしくて言えないけど。
でも、言った後の切くんの反応も
見てみたい気がする。面白そう。

「きっとすごいものなんだろうな~
・・・なんて、ハードル上げてみる」
「う・・・」

自信ないらしい。
そんな切くんを見ながら、
包装をはがす。
箱を開けると中には
小さな髪飾りが入ってた。

「紫陽花?」
「うん・・・。ほら、前に
彩の家で見たじゃん。それで・・・」

小さなピンクの紫陽花がついた髪飾り。
かわいい。さっそく付けてみる。

「どうかな?似合ってる?
・・・って、切くんが似合ってない
ないなんて言うわけないか」
「可愛いと思う!」

予想通りの反応。
でもそれが嬉しい。お世辞でも嬉しい。

「毎日付けちゃおうかなぁ。
あ、彩にいじられるかな?」
「いじられるだろうなぁ」

ラブラブ!とか。
まぁ、いっか!その通りだし。

「大事にするから!
お墓まで持っていくから!」
「え・・・」
「あ。違う違う!絶対!
何十年も先の話!」

余命のこと、完全に忘れてた。
それぐらい嬉しかった。
ずっと、一緒にいたい。

「そういえば、聞いて
みたいことがあるの」
「なに?」

切くんの彼女になった後、
ふと、気になったこと。
それは・・・

「いつから私のこと好きになったの?」
「え!?えーと、それは・・・」

予想外の質問だったらしい。
すごく言いづらそうにしてる。
やっぱり動揺する
切くんは面白いと思う。

「え~、言えないの?」

ちょっとあざとく言ってみる。
案の定、効果バツグンだったようで
切くんは顔を紅くしながら
首を横に振った。

「あの日からなんだ・・・」

深呼吸をした後、切くんは
あの日とやらを話し始めた。

「学園」の人気作品

コメント

コメントを書く