紫陽花の咲く庭で

ラテリ

祭りの後に

星祭りが終わった。
私と切くんはお互いの秘密を話して
恋人同士になった。
彩たちにはなんて言おうかな。
黙っとくのもいいかな。
いつ気づくだろう。

屋台の片付けをしながら、
そんなことを考えてると、

「咲、お疲れ様!」

後ろから彩にポンっと肩を叩かれる。

「お疲れ様。あの後、忙しかった?」
「うーん、まぁ、ボチボチ」

交代したのはお昼過ぎてからだったし、
私たちよりは大丈夫だったかな。

「あのさ、何かあった?」
「え!?な、何かってなに?」

彩は私をじっと見た後、

「うーん、雰囲気変わったような。
あ、切とデートしたから?」

え。もう気づいてる?
私、そんなにわかりやすい!?

「デ、デートなんてそんな・・・。
ちょっと2人きりになっただけで」

ま、まぁ、告白されたし、告白したけど。

「それはデートって言うの。
で?何か成果あった?」
「・・・した」
「え?」

小声だったせいか、
彩には聞こえなかったみたいで、
耳を傾けながら聞き返した。

「告白したの!私たちは恋人なの!」

思いっきり言った。
別にそんな大声で言わなくてもいいのに。
周りにもバッチリ聞こえたようで、
拍手が起こる。

チラッと切くんのほうを見ると、
仁くんに思いっきり背中叩かれてる。
痛そうだけど幸せそうに笑ってる。

「ついにかぁ。長かったなー」
「・・・いろいろとありがと。彩」

彩・・・というより、2年生。
みんながいなかったら、
私も切くんもここまできてないかも。

「咲は鈍感だったから大変だった。うん」
「う〜。自分で言っておいてだけど、
なんか恥ずかしい」

でも、幸せ。
みんながすごく笑ってる。
良かったって声も聞こえる。
私もそう思う。

私を好きになってくれたのが
切くんで良かったって。

「切からはなんて言われたの?」
「え!?え〜とね」

余命のこと・・・だけど。
まだ、言いたくない。
こんなにみんなが良かったって
言ってくれてるのに。
笑顔、無くしたくない。

「わ、私から言ったの。・・・好きって」
「咲から言ったんだ。
切も度胸がないなぁ」
「そ、そうかなぁ」

切くんは
すごく勇気を出して言ってくれたはず。
今でもまだ、「生きていてほしい」って
頭の中に響いてる。

「それで?この後どこか遊びにいくの?」
「行かないよ。
・・・何想像してるの、彩」

彩の顔がニヤけてる。

「そりゃあ、ねぇ。夜の・・・」
「そんなことしないよ!?」

なんて言おうとしてるかわかったけど。
ま、まだそんな関係じゃないんだから。
・・・まだ?え、じゃあいつかは・・・。
あーーー、やめ!この話題はダメ!

「顔が紅いよ。からかうの楽しい」
「も、もう。やめてよ」

これ、しばらくこのネタで
おもちゃにされそう。

「じゃ、次は初めての
キス辺り目指して頑張ろっか」
「キ、キ、キ、キス!?」

当然したことなんてない。
しようと思ったこともない。
・・・どんな感触なのかな。
や、柔らかいのかな。
・・・やめよう。この話題もやめよう。

「そ、それよりさ!
部誌はどうだったの?捌けた?」

自分でも唐突って思うけど、
必死に話題を変える。

「ま、この辺で遊ぶのやめとこうか。
部誌は全部無くなったよ」

彩はニヤニヤしながらそう言った。
ダメだ。絶対しばらくイジられる。

「そっか。
あの野球本、読んで貰えたらいいなぁ」
「切も読んでるんだっけ?」

そういえば、貸したまま忘れてた。
すごいゆっくり読んでるみたいだけど、
さすがにそろそろ読み終わったかな?
今度聞いてみよう。

「うん」
「活字とは無縁そうだけどねぇ」

ゲームしてるのはよく見かける。
・・・まずい。
また切くんの話題になりかけてる。
ええと、他の話題は・・・
うう、咄嗟に思いつかない。
あ、そうだ。逃げよう。そうしよう。

「あ!私ちょっとトイレ!」
「ん。いってらっしゃい」

彩から逃げるようにトイレに行く。
チラッと切くんを見ると、私と同じ感じで
仁くんにイジラれてるみたい。

・・・次からどう接すればいいんだろう。
か、彼女らしく?彼女らしくって何?
悩めば悩むほど、答えは出てこない。

とりあえず、
いつも通りでいいの・・・かな。

いいよね。
きっとそれが、切くんが好きな私だよね。
そう言い聞かせながら、
トイレの鏡に映る、
顔が紅い自分を見てた。
・・・とても幸せそうだった。

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