紫陽花の咲く庭で

ラテリ

秀才だとわからない問題-4-

「体験入学申し込みはこちら」

私はそこをクリックした。
名前とかを記載して終了。
怖いぐらいあっさりと、
あっという間に申し込みは終わった。

よく考えれば、
私のしたことは結構、大きいことだ。
第一志望だった学校の
受験を急遽やめて、
他の学校に行こうとしてる。

それでも、後悔はない。
ただただ敷かれたレールの
上を歩いてただけだったって、
気づいたから。

今までの私なら、
自分のやりたいことは?と聞かれても
答えられなかったと思う。
頭も良くて、生徒会とか
いろいろやってるけど、
それに追われて、夢がない。
だから、見たことない
世界へ言ってみたい。
友達作って、笑ってみたい。
当日が楽しみだった。

「ほんとにそれでいいんだね?」

後ろから姉の声が聞こえた。

「うん」
「別に、反対してるわけじゃないけどさ。
一応、経験者として言うと、
辛い道を選んだよ」

姉はドアに寄りかかりながらそういった。

「辛いか決めるのは私でしょ」
「うーん、若い!私も若いけど。
ま、彩なら何とかなるでしょ!」

小言を言いに来た訳では無さそうだった。

「ま、父さんたちは
少し嫌な顔してたけど。
私は彩の味方だから。
困ったら美里おねーさんに頼りなさい」

そう言って、自分の胸をポンっと叩く。
確かに父さんたちは嫌な顔してたけど、
猛反対ってわけでもなさそうだった。
きっとちゃんとわかってくれる。

「うん。頼りにしてる」
「お、おおう!」

姉は少し顔を紅くした。
心配させないように、
自分の道は自分でしっかり決めないと。

体験入学当日。
場所は近所だった。
いつもとは逆の、駅南口の方。
そこから商店街をまっすぐ抜ける。
大通りが見えてくる。
小さな橋を渡ると、目の前に町の図書館。
そこを曲がって真っ直ぐ行くと学校だ。
うん。無理なく歩いて通えそう。

「ここ・・・?」

何度も印刷した地図を見る。
そこにあったのはプレハブの建物。

「これが校舎?」

ホームページには校舎全体が
写ってた画像が無かったから戸惑う。
2階の窓に貼られてる紙を見ると、
確かに私の目的地ってことがわかった。
少し不安になりながら、入口を探す。

「ここかな」

奥に進むと引き戸があった。
ガラガラと音を立てながら開ける。

「失礼します」

そう言いながら中に入る。
キョロキョロしてると、
教師らしい男性に声をかけられる。

「おはよう!体験入学かな?」
「はい。そうです」

元気な人だった。声も大きい。

「じゃあ、そこの教室で待ってて」
「はい」

指を指した方にある教室に入る。
教室内には同じくらいの
歳の人が数人座ってた。
たぶん、
私と同じ体験入学に来たんだろう。
バラバラに座ってるから
特に指定はないみたい。

「あ」

どこに座ろうか見渡していると、
咲さんがいた。

「こんにちは」

私は声をかける。
読書に夢中だった咲さんは
私の声に気づいて、振り向く。

「えっ?あーーー、この間の!」

私を見た瞬間、すごく驚く。
目が丸くなってるってこういうこと。

「また会えたね」
「うん!この間は
本当にありがとうございました!
え〜と、名前何だっけ?」

そういえば、名乗ってなかった。

「星月彩。あ、呼ぶときは彩でいいから」
「わかった!あ、私は天織咲。
さんとか付けないで咲でいいよ」

偶然の再会。そして、同じ学校。
呼び捨て・・・。
きっと些細なことなんだろうけど、
すごく嬉しかった。
これが、友達なのかな・・・。

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「その後はずっと一緒にいたんだ。
咲の身体も心配だったし」
「そうだったんですか。
友達を学びに・・・」

あたしは頷いた。

「間違ってなかったね。
あのまま、進学校の方に言ってたら、
つまらない生活してたと思う」

年相応のこともしないで勉強三昧。
今思えばゾッとする。

「面白いのが、わざわざ
一人称変えたんだよ。
「あたし」の方が砕けた
自分を出せるって」

そんなこともあったあった。
最初は慣れなかったけど、今はもう、
自然に「あたし」って言っちゃう。

「彩先輩が凄いのも納得です」
「でしょ!勉強わからなかったら、
彩に聞けば解決!」
「・・・咲はもう少し自力で頑張って」

あの日。咲が倒れてなかったら。
あたしはこんな風に
笑えなかったんだろうな。
本当にここに来てよかった。

「・・・そういえば、
咲先輩はどうして倒れてたんですか?」
「あ。そういえば、
あたしもそれ知らない」

今まで疑問に思わなかったけど。
あの日以外で咲が
倒れるのは見たことない。

「え!?あ〜、え〜と、内緒」
「残念です」

・・・この反応は
結構、恥ずかしい
理由なんだなって思った。
でも、理由なんてどうでもいいか!
咲のおかげは変わらないんだから。

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