紫陽花の咲く庭で

ラテリ

秀才だとわからない問題-2-

あたしがこの学校に
入学することを決めたのは、
中学3年生の時。
当時のあたしは学校1の
秀才と言われてて、
生徒会長もやってた。
そんなあたしも進路を決める時がきてた。

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「星月さんは秀才ですから、
どの高校でも行けると思います」

進路相談。そう先生に言われた。
と、言っても私の進路は決まってる。
近所にある県内有数の進学校。
両親にも話してる。

「大丈夫です。
どこに行くかは決めています」
「星月さんはしっかりしてますし、
心配はなさそうですね」

私も周りと違って心配はしてない。
不合格・・・はないだろうし。
私に見合った学校だと思うから。
それに、自宅からも近い。

「では、入学試験が
終わるまで頑張ってね」
「はい」

進路相談はあっさり終わり、
私は生徒会の仕事に戻った。

全て順調にいってた。
何の問題もなく、
私は入学試験の日を迎えた。

「彩、忘れ物ない?」
「大丈夫。いってくる」
「あ、これ。
彩なら大丈夫だと思うけど、一応ね?」

入学試験当日。姉に見送られて家を出る。
合格祈願と書かれた御守を貰った。
カバンに結びながら試験会場に向う。
家から出て、長い直線道路を抜け、
駅を通り抜ける。
その後、坂道を登って・・・

「ん?」

その坂道に誰か倒れてた。

「誰?」

ふざけてるのか、何かあったのか。
急いではいるけど、後者だったらまずい。
とりあえず、声をかけることにする。

「どうしましたか?」

女性のようだ。私と同じくらいの。
返事がない。・・・生きてるよね?

「どこか悪いんですか?」

やっぱり返事がない。
私は女性の心臓を触って確かめる。
・・・ドクドク動いてるから生きてる。

ええと、こういうときは・・・
ああ、救急車か。
スマホを取り出して、呼ぶ。初めてだ。
数分後、サイレンとともにやってきた。
素早い動きで担架に乗せて、
救急車に載せる隊員の方々。

「話を伺いたいので一緒に
来てもらえますか?」
「あ、はい」

初めて救急車に乗る。
中は意外と広い。
私が乗ったのを確認すると、
隊員の方がドアをバタンと閉めた。
そして、サイレンが鳴ると同時に
動き出した。
あ、スマホの電源切っておこう。

・・・動き出してから思い出したけど、
私、受験しにいくんだった。
・・・いいか。
この女性の命には代えられないし。

病院に到着するまでの
時間に色々聞かれた。
と言っても、倒れてるのを
見つけただけだから、
大したことは答えられない。

雰囲気から察するに、
命に直結するような
症状ではなさそうだった。

病院につくと、
女性はベッドに寝かせられて、
看護師の方が何かデータを取っていた。
私はそれを見ながら、
女性の無事を祈ってた。

しばらくすると、
女性の母親と言う方がやってきた。
看護師の方から容態を聞くと、
ほっとしてた。
慌ててやってきたのか、
ちょっと寝癖がある。

「あなたが咲を助けてくれた方?」

母親は咲と呼んだ女性の近くにいた
私に気づくと声を掛けてきた。

「はい。そうです。
無事なようでよかったです」
「本当にありがとう。
この子、生まれつき身体が弱くて。
なんで倒れたかはわからないけど・・・」
「多いんですか?倒れること」

母親は首を横に振った。
いつものことって訳じゃないみたい。
・・・何があったんだろう。

「あ、咲!心配したんだから!」
「お母さん・・・?」

話してると、咲さんが目を覚ました。
母親と認識してるし、特に問題なさそう。

「この人が道端で
倒れてるあなたを助けてくれたの」
「通りかかっただけで・・・」
「あ、ありがとうございます」

咲さんは顔を背けながら、
恥ずかしそうにそう言った。

「あ!その格好、学校に行く
途中だった・・・とかじゃない?」

ん?ああ、そういえば私、制服か。
まぁ、たしかにそうだったんだけど。
・・・本当のこと言ったら落ち込みそう。

「帰り道だったから。大丈夫」

私は嘘をついた。
受験すっぽかしたなんて
言わないほうがいいと思うから。

「そっか、良かった」

咲さんはにっこり笑った。
・・・笑顔が眩しい。
かわいいなって思う。

「大丈夫そうなので私はこれで・・・」
「はい。本当にありがとうございました」

母親と咲さんはお辞儀した。
部屋から出るとき、振り向くと、
咲さんは手を振って、

「またどこかで会えるといいね」

と言ってくれた。
私もまた会えたらいいなって思った。
短い時間だったけど、
咲さんの近くにいると気が楽だったから。
・・・何故かはわからないけど。



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