紫陽花の咲く庭で

ラテリ

筋肉祭!-1-

夏休みが終わった。
教室では久しぶりといった声が聞こえる。
あと、宿題を写そうとする姿も見える。

ひょっとしたら、
咲も俺か彩辺りに宿題写させてと、
来るんじゃないかと思ってたが、
今のところその動きはない。
今日もとても可愛い。

咲とは宿題を彩の家でやった日から
直接会ってないから、久しぶりの生咲だ。
スマホでのやりとりも文字だから、
声も久々に聞いた。ああ、やっぱ可愛い。

可愛い咲を見ると
やっぱり気持ちが揺らぐ。
本当にこのままでいいんだろうか。
あと8ヶ月くらいしかない。
笑顔を守るためとは言え、
自分の気持ちを殺して、ただただ、
その日を待つしかないんだろうか。

とはいえ、俺にできることは限られてる。
近くにいて、少しでも余命のことを
忘れられる時間を作るぐらいだ。
結局、この2つがずっとループしてる。

咲とずっと一緒にいたい。
その気持ちは前よりも強くなってる。
咲って呼ぶことにもう恥ずかしさもない。
話すこともできるし、
連絡先だって交換してる。
春先と比べたらすごく進歩してる。
それに、周囲も応援してくれてる。
知らないのは咲だけ。

「はぁ・・・」
「どした?咲を見ながらため息ついて」
「え?いや、別に」

隣に座ってた仁にため息を聞かれる。
別にいいけど。こいつは余命のこと
知らないんだよなぁ・・・。
俺も知らなかったらこんな悩み・・・
いや、知らなかったら春先と何も
変わってないな。間違いなく。
余命のことを知ったのをきっかけで
距離が縮まるって、
嬉しいのか悲しいのか・・・。

「そんな顔するならもう告っちゃえよ」
「・・・どんな顔してんだよ」
「今にも吐きそうな顔」

間違っちゃいない。
想いを吐きそうだ。

「うーん、そうだ」
「なんだよ仁。その気持ち悪い顔」

何か良からぬことを思いついた顔だ。
気持ち悪い。

「お前の咲を見る顔も結構、
キモいと思うぞ」
「それは自覚あるから大丈夫」
「あんのかよ!」

そりゃあ、鼻の下伸ばしながら、
ニヤけてたらキモいだろうよ。
鏡で見たわけじゃないけど、
想像はできる。

「で?何を思いついたんだ?」
「ああ、あのな。今度、筋肉祭あるだろ」

筋肉祭。一般的には体育祭とか
運動会って呼ばれるイベントだ。

「それで?」
「そこでさ、俺と一騎討ち。
一応、俺らって、
陸上部でも早いほうじゃん」

たしかにそうだ。
まぁ、長距離が好きなのが多いとか
そもそも部員が少ないってのもあるが。

「で、それに勝って、
咲にいいとこ見せてみろよ!」
「手加減してくれるのか?」
「いや、する気はねえよ。
本音を言うと、合宿のリベンジだ」

本気の勝負か・・・。

「ほら、咲ってスポーツ観戦するの
好きだろ?」

たしかに。よく野球の話してるし、
読んでる本もスポーツモノだ。

「合宿の時も、切を応援してたし」

あの声援で仁に勝てたきがする。
実力的には、仁の方が上なんだけど。

「どうよ。勝てばかっこいいぞ」
「よし、のった」

咲にいいとこ見せたいし、
楽しんでほしいが、
純粋に仁と勝負してみたい。
そう思った。

「じゃ、彩とかにも話しておくから」
「え?」

彩に話すと大事になりそうな予感。

「ちゃんと練習しとけよ?
俺も本気で走るから」

・・・なんか、
思ってたのとは違う形になりそうだ。


放課後。
陸上部に来ると、仁は先に来てる。
すごく真面目に練習してる。
何度もスタートの確認をしてる。
・・・こんなガチな部活だったっけ?

俺も俺で、
咲の前で負けたくないから、
いつもより真面目に
練習をすることにした。
・・・こんな真剣に、
陸上に取り組んだのは
初めてかもしれない。

筋肉祭まであと1か月ぐらい。
練習、練習、練習で
時間はあっという間に過ぎていった。

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