紫陽花の咲く庭で

ラテリ

悩みと想い-1-

カキーン!

その音と同時にテレビから
歓声が伝わってくる。
夏休み。大好きな高校野球を見る日々。
今の1打で逆転に成功したチームは
大盛り上がり。
そんなすごくいいタイミングで、
私のスマホが鳴った。

(いいとこなのになぁ)

内心、出たくないけど、そういう訳
にはいかない。

「もしもし?」
「あ、咲?あたし」

電話の相手は彩だった。

「いきなりなんだけどさ、
空いてる日ある?」
「え?えーとね・・・」

試合がない休養日は・・・明日。
テレビを見つつ、日程を確認する。

「明日なら空いてるよ」
「お、じゃあさ、宿題やらない?」

彩が?私と?
頭がいい彩なら1人でも
余裕そうだけど・・・あ。

「私の心配してる?苦戦してないか」

私はバカな方なのでたいてい詰まる。
去年は・・・思い出したくもない。
彩、教えてくれるのかなぁ。

「うん、それもある。
去年はあたしの写しただけだったでしょ。
切もやってるか怪しいし。
でも、本音は切と咲を合わせる口実」

あ。なるほど。
スマホで連絡を取っているとはいえ、
夏合宿が終わってから数週間。
直接、切くんとは会ってない。

「連絡先は交換できたんだしさ。
次はもう1歩踏み込んで
見ようかなって。会ってないでしょ?」
「うん・・・でも・・・」

これ以上、切くんと
仲良くなっていいのかな。
来年の今頃、きっと私は居ない。
それを知ったら、切くんきっと悲しむ。

「でも?」
「え?いや、ほら、切くんだって
暇じゃないだろうし」
「えー、どうせ予定なくて
ゴロゴロしてるか、
仁辺りと遊んでるでしょ」

・・・ちょっとひどい。
でも、切くんにとって、
私は愛しの女性だ。
自分で言うのもアレだけど。
そんな女性が、来年は死んでる、
なんて知ったら。私なら耐えられない。
だけど、断ったら断ったで、
勘がいい彩のことだから、探られそう。
誘導尋問なんてされたら喋っちゃいそう。
・・・なるべく、
「その日」まで普通でいたい。

「わかった。じゃあ、明日。
彩の家でいい?」
「うん。あ、切は咲が誘っておいて。
きっと喜ぶから」

・・・そりゃあ、喜ぶだろうなぁ。
予定があっても来るっていいそう。
切くん、私にバレてるって
知ってるのかな。

「うん。誘っておくね。
午後からでいい?」
「午後からで。
宿題、忘れないようにね」
「は〜い」

彩との通話が終わってすぐ、
切くんにメッセージを送った。
・・・すごい速さで行く!
って返ってきた。
彩の言うとおり、ゴロゴロしてたのかな。

・・・このまま「順調」にいけば、
いつか私は切くんの
彼女になる・・・かも。
でも、本当にいいの?
仲が深まれば深まるほど、切くんに
辛い想いをさせてしまう。
少し、距離を取って、
親しくなりすぎないように。
その方がいいんじゃないかな・・・。
くっつけようとしてる彩には悪いけど。
・・・明日、バレない程度に切くんに
聞いてみよう。もしも、好きな人が
そんな境遇だったらどうする?って。
・・・なんて答えるんだろう。

少し・・・怖いな。

「紫陽花の咲く庭で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「学園」の人気作品

コメント

コメントを書く