紫陽花の咲く庭で

ラテリ

悩みと想い-2-

夏休み。
合宿も終わって、咲に合わなくなった。
とはいえ、スマホで連絡は取れる。

「おはよう」

とか

「おやすみ〜」

とか、来るだけで幸せ。
とはいえ、すでに夏休みも中盤を過ぎ、
直接会いたい気持ちも強くなってきた。

(会いたいなぁ)

が、それを言う勇気など無く。
うだる暑さの中、アイスを食べながら、
時間だけが過ぎていった。
その時、俺のスマホに着信。
・・・咲からだ!

「明日、彩の家で宿題やらない?」

・・・これはきっと、
彩が発案したんだろう。
ありがとう!彩大せんせー!
そう思いながら、高速で行く!と、
うって返答。
宿題は順調に進んでる。
咲や彩がその事を知ったら、

「意外!」

って、言うだろうか。
そんなイメージを持たれてる気がする。
ルンルン気分でアイスを食べつつ、
意味も無くカレンダーの
明日の日付に丸をつける。ついでに、
咲と宿題!なんて書いちゃう。

(夏休み中に会えるなんて・・・)

去年の今頃は想像もつかなかった。
1年で進展したなぁ。
いや、ここ数カ月か。
彩には感謝しかない。
カレンダーを遡りながら、
数カ月を振り返る。
夏合宿、七夕、紫陽花・・・

(あ・・・)

5月のカレンダーで手が止まる。
咲の余命を知った月。
咲との仲が始まった月。

(もう3か月か・・・)

つまり、4分の1過ぎた。
あっという間だった。
話すのが楽しくて忘れることもあった。

(あと9ヶ月・・・)

俺には治すことなんてできないから
せめて残りを笑っていてほしい。
そんな決意をしたけれど、
咲は俺といて楽しいだろうか。
いや、楽しくなかったら、
誘って来ないかな・・・。

咲は俺の想いを知らない。
余命のことを知っていることも。
このまま、仲のいい「友達」のままで、
その日を迎えればいい。
そうすれば、咲は苦しまない。
俺も夢を見れて、
咲もきっと最期まで笑っていられる。
今、告白なんてしても、
咲を苦しめるだけだ。

夏合宿で、仁からおばあちゃんの
話を聞いて、そう決意したんだ。
だけど、なんか、こう、モヤモヤする。
ほんとにそれでいいのかって。
何が?って聞かれたら答えられないけど。

結局、少し考えたけど、このモヤモヤが
何なのか、答えは出なかった。

翌日。宿題をカバンに入れて、
俺は二宮の彩の家に向かう。
咲に会うのは夏合宿以来。久々だ。
あ、もちろん彩も。
ひょっとしたら、真紀もいるのかな?
・・・1年生の宿題教えてとか
言われたらどうしよう。自信ない。

とりあえず、彩に文句を
言われないように、
コンビニでお茶とお菓子を買う。
これで気がきかないとかは
言われないだろう・・・。

で。ええと、どういくんだっけ。
記憶を頼りに住宅街に入る。
俺の記憶は意外と頼りになる様で、
無事に彩の家に到着する。
ながーーい直線があることを
憶えていたおかげだ。
インターホンを押すと、彩の声。

「あ、切だ。待ってて」

カメラが付いてるらしい。
何も言わなくても俺だってわかった様だ。
ガチャっていう音と同時に、
ドアから彩が出てきた。

「早く入って、暑いから」
「あ、うん。お邪魔します」
「お邪魔はあたしじゃない?」

彩はニヤニヤしながらそう返す。
いや、まぁ、うん。そうかもしれない。

「咲はもう来てるよ」
「そうか。あ、これ、おみやげ」

家の中に入りながら、
コンビニの袋を彩に渡すと、
驚いた表情で

「うわー、珍しく気がきくじゃん」
「そうだろう!」

って、言われた。
・・・予想通りの反応だった。
いつもどう見られてるかがよくわかる。

室内は冷房が効いててすごく涼しかった。
ザ・天国。

「あ、あたしはこれ入れてくるから。
この間の部屋でやってるから」

彩は俺が渡した袋を持ち上げながら、
紫陽花のよく見える部屋を指差す。

「ほい」

部屋の中には咲がいた。
真紀はいない。呼ばれてないらしい。
しかし、咲の服が可愛い。
ちょっとレース?がついた半袖。
肩も少し膨らんでる。
宿題に集中してたが、俺に気づくと、
手を振ってくれた。

「久しぶり〜」
「ああ。なんか、そんな感じしないな」

ほぼ毎日やり取りはしてたので、
久しぶりに話す感じがしなかった。
それでも、やっぱり生で見る咲は可愛い。
・・・決意が揺らぎそう。
咲の目の前に座り、カバンから
宿題と筆記用具を取り出す。

「切くん、どこまでやったの?
全く手を付けて無さそうな気がするけど」

・・・予想通り、俺のイメージは
宿題やらない系らしい。

「いや、毎日やってるから
結構、進んでる」
「え!?」

・・・そんな驚かなくても
いいんじゃないか。
しかも、すごく意外って顔もして。

「勉強する感覚って言うの?
そういうの忘れないようにするため
宿題ってあるんじゃないの」
「切くんが変なこと言ってる・・・」
「いや、変じゃないでしょ」

そう言いながら、お盆の上に
俺のおみやげを載せた彩がきた。
俺と咲の前に飲み物を置く。

「長い休みと大量の宿題。
って言っても、毎日数時間、
コツコツやれば終わる量。
要は、勉強する事を習慣
づけることが目的でしょ」
「そうそう。そういうこと」

それを聞いた咲は、
少し慌てた様子で、宿題を再開する。
・・・31日タイプなんだなと思った。

「まー、去年、宿題写させて〜って
言ってた咲にはわからないかな」
「う〜、だから今年はこうやって、
彩の誘いに・・・」
「あたしが誘って無かったら、
同じことしてたでしょ」

咲は図星を付かれたようだ。

「うぐっ。
やるよ!頑張るよ!
・・・だから、間に合わなかったらさ」
「はいはい。写させてあげるから」

・・・彩も甘いな。
まぁ、彩はすごく頭いいから、
間違いとかないだろうし。俺も写したい。

「と、言うわけで、あたしは最終手段。
実は真面目な切に教えてもらうように!」
「一言多いな!」
「よろしくお願いします!切先生!」

そう言うと咲は、俺の隣に寄ってきた。
いい匂い可愛い心臓破裂しそう。

「な、な、なんで隣に?」
「わ、わからないとこだらけだから・・・」

よく見ると、咲は全然進んでないし、
ちょっとだけ書いてある
答えも間違ってる。

・・・自分の宿題は置いといて、
咲の宿題を手伝うことにした。
決意と理性、保てるか・・・。

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