紫陽花の咲く庭で

ラテリ

夏合宿!-7-



「肝試しかぁ。彩、
何を企んでるんだろう」
「怖いです・・・!」

夜。近くの学校。
別に廃校じゃなくて、現役の校舎。
それでも、夜の暗い校舎は不気味。
所どころ、窓から赤とか
緑の明かりが見える。
たぶん、消化器とか非常口の明かり。

「あ、切くーん」

切くんと仁くんが
仲良さそうにやってきた。
集合場所の正門前。私と真紀ちゃんは
少し早く到着してた。

「今夜は、よ、よろしく」

切くんがすごく震えてる。
怖いのかな?

「大丈夫?こういうの苦手?」
「え、い、いや。苦手じゃない。うん」

強がって・・・はなさそう。
あ。ああ!なるほど!
私と2人きりになるから緊張してる?
・・・そう思うと私も緊張してきた。
昨日の去り際を思い出す。
私、顔真っ赤で逃げるように
部屋を出た・・・気がする。
気が動転してて全然憶えてない・・・!

「わ、私の方こそ、よろしく・・・」

わーー、意識するとやばい。
えっと、切くんは私が好きで、
これから2人きりで肝試し。
別に私も切くんは嫌いじゃなくて・・・。
そして、彩が何か仕込んでる・・・。
ひょっとして、今日、告白される?
それともまたすき焼きが聞ける!?

「なんか、初めてデートする
初々しいカップルみたいだな」
「「ぶっ!」」

切くんも私も仁くんの感想に思わず吹く。
デート・・・。
そうだ。そうかも。そうなるのかも。
わーーーー!無理、無理!
緊張するなって方が無理!
切くんが私を好きって
知ってるから、なおさら!
顔、赤くないよね?
心臓の音、聞こえてないよね!?

「お、お前らはどうなんだよ!」
「俺と真紀?そりゃー、デートよ」
「・・・別にどうでもいいです。
余りもの同士ですから」

真紀ちゃんはあまり興味なさそう。
もうちょっと慌てる様子も
見てみたかったかも。

「・・・だから、こっちは
あまり興味ないです」
「はい、仁フラレたー」
「照れてるんだって!」

・・・何か言い方が引っかかる。
こっち?
あ、そういえば、
真紀ちゃんも切くんの想い
知ってるんだよね・・・?

「はーい、そろそろ時間なので説明!」

彩の声が響く。

「この学校の2階にある教室に
飴が置いてあるから、それを持って
帰ってきたらゴール。地図はこれ」

そう言って、彩は
プリントと懐中電灯を配る。
地図には、いまここ、とか
書かれててわかりやすい。
目的の教室へ行くには、当たり前だけど、
階段を登る必要があるみたい。

「それに書いてあるけど、
帰りは来た道じゃなくて違う道を
通るように!質問は?」
「なんで飴なんだ!」

仁くんが手を上げて質問。
たしかになんでだろう。

「・・・誰かさんがバスで面白い
飴を教えてくれたから。特に意味はない」
「げ、あの飴か」
「ビミョーに違うやつだけどね」

切くんをチラっと見ると、
遠い目をしてる。
・・・ほんとに辛かったんだなぁ。アレ。

「じゃ、時間も押し気味だから、
順番に出発!
まずは切と咲。いってらっしゃい」

トップバッター!
なんか、周りの視線が温かい気がする!
・・・みんな切くんの想い
知ってるんだよね。
心の中で頑張れとか思ってるのかも。

「いきなり・・・行こうか」
「よ、よろしくお願いします」

緊張しながら、私たちは校舎内に入った。

校舎内は当たり前だけど暗かった。
私たちの足音だけが響く。
懐中電灯を頼りに目的地を目指す。

「あ、足元気をつけて」
「うん」

切くんの声が震えてるけど、
怖いのか緊張してるのかはわからない。

「声、震えてるけど、大丈夫だよ。
別に廃校とかじゃないんだし」
「え?あ、うん・・・そうだな」

あ、この反応は緊張の方だ。
面白そうだから、
ちょっとからかってみようかなぁ。

「あ!なんか音聞こえたかも!」
「え?どこ!?」

そう言って、反対側を向いて
隙ができたところで

「こっちこっち!」

と、言って私の方を向かせると
ムギュッと私の指が
切くんのほっぺに刺さる。

「なーんてね」
「っ!」

彩に言われてわかったけど、
切くんはわかりやすい。
・・・どうして今まで、
気づかなかったんだろうってくらい。
薄暗いけど、切くんの
顔が赤いのがわかる。

「どうだった?」
「やわら・・・びっくりした・・・」
「本音でてるでてる」

私の指はやわらかいらしい。

「あ、いや。ごめん」
「別に謝らなくても。
仕掛けたのは私だし」
「え、じゃあ・・・ありがとう?」
「ぷっ!本音出すぎ!」

切くんは髪をかきながら下を向く。
私の指の感触が嬉しかったらしい。
思わずお礼言うぐらいに。
ああ、やっぱり、私の事が
好きなんだろうなぁ。
・・・私もあまり変わらないかも?

「あ、あのさ」
「うん?なに?」
「咲、楽しい?」

どこか遠慮がちな声で聞かれた。
・・・なんでだろう。少し寂しそう。

「えーと、うん。楽しいけど・・・
あ、ひょっとして、
何か嫌なこと言っちゃった・・・?」
「え!?い、いや、そうじゃなくて。
えーと、その、俺と一緒で
楽しいのかなって・・・
不安になったというか」
「うん。
あ、今の楽しいって意味だから!」

切くんはホッとしてる。
でも、寂しそうに感じるのは変わらない。
むしろ、切くんが楽しく
なさそうにも見える。
こう、うーん、何だろう。
何か私に隠してる・・・?

「でも、どうしたの?いきなり」
「いや・・・えーと。
ほ、ほら、肝試しだから
怖くないかなって」
「切くんと一緒だし、大丈夫」
「お、おおう」

切くんは反対側を向いた。
たぶん、照れてるんだと思う。
うーん、やっぱり私の勘違い?
怖いだけなのかな。

「あ、ひょっとして、切くんが怖い?」
「い、いや!怖くない怖くない!」

そう言いながらこっち向く切くん。
懐中電灯を向けると、
切くんの顔は真っ赤だった。
うーん、わかりやすい。
もっと、からかってみたくなる。
だって、男の子に
想われるなんて、初めてだし。
特に切くんは反応が面白いから。

「ほんとに〜?あ、手つなぐ?」
「!?無理無理無理!」

凄い勢いで断られた!

「そ、そんな全力否定しなくたって
いいじゃん!」
「あ、ごめん・・・」
「おしおき!」

シュン・・・となった切くんと
手をつなぐ。
・・・自分からして
おいてあれだけど、
冷静に考えてみると、
男の子と手をつないだの
初めて・・・かも?
やばい。たぶん、私も顔、
赤いかも・・・。

「・・・切くん?」

切くんを見ると、固まってる。

「あ。いや、その、女の子と手を
つなぐなんて初めてで・・・」
「私だって同じだよ!」
「無理っていったけど、その、
よかったらこのまま行こうか・・・」

すごく嬉しそう。
なんだか私も嬉しくて、頷く。
そして、そのまま雑談してたら、
目的の教室に到着!

「これかな?」

ボウルに入った飴を1個、適当に取る。

「切くん、舐める?」
「え、いや、いい!」

昨日の飴を思い出したのか、全力で
否定する切くん。
・・・ほんとに辛そうだったもんなぁ。

出口までの道は思ったより短くて、
すぐに出口が見えてきた。
こう、誰かが追いかけてきたり
するかと思ってた。
・・・とういうより、
誰も脅かしたりしてない!
暗い校舎を切くんと歩いただけじゃん!

「・・・そういえば、脅かし役とか
いなかったな」
「そうだね・・・彩のことだから
何か仕組んでそうだったのに」

出口をでると、彩がいた。そして、一言。

「そりゃあ、そんないい雰囲気を
邪魔しちゃ・・・ねぇ」

聞かれてた。
ていうか、脅かし役、控えてたんだ。
・・・あ。雑談に夢中で忘れてたけど、
ずっと手をつないでた。
・・・これか!

「手なんかつないじゃって」
「い、いや、これははぐれないように!」
「はぁ〜、そっか。そこまでか」

・・・彩が落胆してる。
なんとなく、何を考えてるかわかる。

「私は楽しかったよ。切くん」

笑いながらそういうと、切くんは

「良かった」

と、言いながらホッとしてた。

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