紫陽花の咲く庭で

ラテリ

夏合宿!-2-

夏休み。
それは長い長い休み。
俺にとっては苦しい時期。
だって、

1か月以上も咲に会えない!!

最近は咲と話す機会も増えたが、
勇気のない俺は未だに
連絡先を交換してない。
・・・彩とはしてるのにな。

ため息を吐きながら、俺は学校まで来た。
・・・重い荷物と重い空気と一緒に。

今日から夏休み。
さっそく、2泊3日の日程で
運動部夏合宿が行われる。

「お、切。なんか暗いぞー」
「あ、ああ、先生。
まぁ、その、察してください」

2年生はみんな俺の片思いを
知ってるらしい。
と、いうことは先生も知ってるだろう。
2年生の担任だし。

「あー。ま、荷物とその空気は
こっちに積んで。せっかくの夏合宿。
楽しんで行こうじゃないか」
「・・・はい」

・・・実際、積んでも
全然軽くならないけど。
重い足取りでバスに乗り込む。
1か月以上かぁ・・・。
こうしてる間にも咲は・・・。
くそう、やっぱり、勇気を出して
連絡取れるようにしておくんだった。
そもそも、あの時、
すき焼きとか意味不明な・・・

「やっほー、切。昨日ぶり!」
「ぶり!」

・・・思わず目を擦る。
え?なんで?
どうして咲たちがバスに乗ってんの!?
ド、ド、ドッキリ!?

「おーおー動揺してる。
あたしたちも参加するから!」
「いやいやいや。
文芸部って文化部だろ!?」
「だって、参加していいって言われたし。
まぁ、ほら、座りなよ」

そういって、彩は椅子を指差す。
1番後ろの隙間がない席。
窓際から真紀、彩、咲で座ってる。
・・・少しだけ冷静になった俺は気づく。
あ、これチャンスだ。
彩大せんせーがくれた大チャンスだ、と。
ならば、今回こそモノにせねば!!

「あ、ありがとう」
「これ、食べる?桃の飴」
「いただきます!」

咲の隣!飴も貰った!
ちょっとだけ太ももが当たる!
やばい幸せ!!
さっきまでの重いアレコレなんか、
とっくにどこかに吹き飛んで、
今、俺は幸せ有頂天!

「いやー、おいしいなぁ」
「桃、好きなんだ?」
「ああ、好きかな」

言ってから気づく。
咲に向って好きって言っちゃった。
ああ、これがあの時言えてれば・・・。

「私も好きなんだー」

と、俺に向かって言う咲。
危なく鼻血が出そうになった。
ああ、目的地まで数百キロの渋滞とかに
なってればいいのに!

「おいすー。
あぶねー、何とか間に合った」

そんな幸せ気分の中、仁がやってきた。
俺らの前の席に座る。

「間に合ってないぞー、お前待ちだった。あ、揃ったので出発できまーす」

先生がそういうと、バスは動き出した。
目的地まで数時間かかりそうだ。

「お、やっぱりきたのか」
「まぁね」

・・・文芸部がいることに
全く驚かない仁。
どうやら来ることを知ってたらしい。

「仁くんは驚かないんだね」
「彩にいろいろ聞かれたからな。
この合宿のこと」
「なるほどー」

体をこっちに向けながら、
会話に参加してくる。
彩もそうそうと言いながら頷く。

「まぁ、何で来たのかは
なんとなーーく察してるさ」

チラッと俺の方を見る。
く!やっぱりお前もか!
お前も知ってるのか!

「でさ、気になってんだけど、
その子は?」
「え?ああ!初めてだっけ。
この子は1年生の水野真紀ちゃん。
大の読書好き」

読書をやめて、
仁のことをじっと見つめる真紀。
軽く頭を下げた後、

「よろしくお願いします」
「おう!俺は花背仁!
切たちとおなじ2年生!
仁って呼んでくれよ!」
「はい、仁先輩。
私は咲先輩達から名前で呼ばれて
るので真紀でどうぞ」
「よろしくな、真紀!」

仁は右手を上げて挨拶した。

「仁は2年生の・・・
ムードメーカー的なやつ。
切とは仲いいんだ。同じ陸上部だしね」
「ちょっとうるさいかも
しれないけど悪いやつじゃないから」
「そういう感じだ!」

・・・うるさいは否定しないのかよ。
真紀は仁を見ながら、はぁ、
といった表情をしてる。

「それにしても、よく車内で本読めるな。
俺なんか酔って無理だわ」
「仁は車内じゃなくても無理でしょ」
「いやいや、俺だって本くらい読むぞ」

それは意外だった。
俺が言うのもなんだけど、
仁が本を読む姿が想像できない。
あってもマンガくらいか?

「どんな本を読むんですか?」
「そりゃ、ほらエ」
「あーほら
俺が最近読んでるような
スポーツものじゃないかな」

こいつエロ本って言おうとしたぞ!絶対!
慌てて俺は会話を遮る。
が、真紀は気づいたらしく、
少し顔が赤い。

「ごめん、切。わかっちゃった」
「切くんもそういうの読むの?」

なんかこっちにキター!
仁はニヤニヤしながら俺を見てる。
クソッ、これが狙いか!

「いやいや。咲から借りてる本が
あるし読まないって」
「ほんとにー?私から借りた本以外にも、
そういうの読んでるんじゃない?」
「読んでないって!」

ほんとに読んだことはない。
なぜなら、咲で妄想が膨らむから・・・
なんて口が裂けても言えない。

「こいつは読まないだろ。さ」
「あー真紀は?
いつもどんな本読んでる?」

こいつほんとに危ない!
どうせ、咲がいるからとか
言おうとしてた!
いつものことだけど、
今日は一段と危ない!

「仁先輩がなんて言おうとしたか、
気になりますが、私は小説です・・・!」
「おー読書っ娘!」

真紀は少しだけ笑いながらそう言った。
・・・ああは言ってるけど、
仁が何て言おうとしたか気づいてそう。

「そうだ、お近づきの印にさ、
飴食うか?」

仁はカバンから飴のような
物を取り出した。黒い。怪しい。

「ありがとうございます」
「ほらよ、みんなも食えよ」

そう言いながら咲たちにも配っていく。
最後に俺へ渡したあと、

「あ、これ1つだけハズレあるから」
「うふぉ!?」

すでに食べてる咲が驚く。可愛い。
が、咲のは大丈夫だったらしく、
特に追加のリアクションはない。
残念。いや、良かった・・・か?

「咲は大丈夫・・・ということは」

俺と彩と真紀が顔を合わせる。
包みをよく見ると、
俺だけ小さな赤い星が付いてる。
・・・あ。

「え、なにこれ、
俺からいけばいいの?」
「うん。きっと仁のことだから、
ハズレは切に渡すでしょ」
「あとで食べます」

逃げ場がない。
咲もワクワクした目で俺を見てる。
辛いのか甘いのかやばいのか
よくわからないけど、ここは一気に
行くしかない!ひょっとしたらこの星は
たまたま付いてただけかもしれないし。

「・・・・・・」
「ど、どう?切くん」

4人が俺を見てる。
そして仁がニヤけてる。
あ。あー。ああーーーー。

「かっらっっっっっっっ!」
「食べようか、真紀」
「はい」

あいつら・・・!くっそ、ほんとに辛い!
悶てると仁が何か袋を出してきた。

「えーと?色々飴。
はずれは激辛とうがらし味・・・
だって、切くん!」

そう言いながら、俺の肩を叩く咲。
嬉しい。嬉しいけどまじ辛い・・・!

「カリン味かな、これ」
「リンゴだと思います」
「あ、私はキャラメルぽかった」

くっそー、覚えてろよ・・・仁。
唐辛子に悶絶しながらも、
咲の太ももの柔らかさを堪能しながら、
バスは目的地に向っていく。
・・・残念ながら道路は順調だった。

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