ナイツオブソードオンライン

双葉エレン

第71話もう一つの物語

空は青く、雲が普通に流れる
そう、まだ軍に侵略されてない村外れ
毎日生き延びるため、作物や農畜の世話の日々は耐え難い。


そんな田舎で、一人の少年が居た
剣技もそこそこあり、村の中では一番っと言われていた。
軍に対抗すべく、日々鍛錬は欠かさない、そんな毎日を送っていたある日。


村に一人の少女が訪れる
軍に所属しているだろう、黒塗りの鎧を光らせて赤い髪とその青い瞳で少年にこう問いかける


『村一番の強い人って知ってるか?』


まるで、少年を知ってるかのような口調だった。少年はクワを肩に乗せて、苦笑いをしながら答える


『残念、僕は知らないよ?』


すると、少女は腰にある鞘をゆっくりと抜きとり、少年にその剣を差し向ける。赤い刀身が、丸で怒りを表すかのように少年の心に灯火が付く。


クワの丸い木を屈指して、少女が放つ剣閃を全て叩き落とす。
そして、クワの刃が付いている部分が、切断され無残に地に突き刺さる。


『なかなかだな、貴様の名は?』
『僕の名はーーー』


意識を示す様に、蛇行を打つモニター画面。頭には、無数の銅線が繋がれたヘットギア。腕には点滴、そして、ようやく自分の置かれた事態に鮮明に気付く。


視界に映る一人の研究者、名は一神一心。彼が手がける最新技術を、ファクトリーオンラインに反映させる為に研究に参加しているーーー。


『気づいたか?』
『あぁ』
『何を見せられた?』
『...ちょっとした田舎』
『そうか』
『なぁ?』
『ん?』
『何時になったら、終わるんだ?』
『海上都市の発展の為、まだしばらく人体データ化がまだ終わってない。それに、試運転も始まってないから...もう1ヶ月かかるか』


その回答を来ていて、もう何回目だろうか?新作の帝国戦記に新たな革命を起こすためとも言え、先が見えないことの繰り返しに...精神的に疲れた。
当然、あと何ヶ月保留されるのかさえ分からないーーー


『あぁ...また同じ答えか...』
『すまない』


そう口にした一心は、椅子から立ち上がり退室する。
嫌になるほど、見飽きたこの病室
窓辺は、今日も変わらない街並みがある。普段なら、そこに自分がいるはずなのに、なぜこの場所にいるのかさえ狂って分からなくなる。
そう、全ては彼女のせいだーーー


特に変わりながない高校生活
俺は《アフターライフオンライン》の激戦に触れた...っと言う訳ではない。
《ナイツ・オブ・ソードオンライン》と言う当時世間を騒がせた、あのデスゲームを上位補正版としてARにも対応した《オールスターオンライン》
にログインしたユーザーの一人だった


まだ、デスゲームの一環としての認識はなく、普通にゲームを楽しむユーザーが沢山いた。その《楽しむ》ユーザーをどん底に陥れた《アップデート》を行ったせいで、ログアウトは可能だが一撃でも腕にある拡張リストに触れるとキルされてしまう。っと言う妙な噂が立ち始めていた。


その実態を目の当たりにしたのは、時間差ボスが特定フィールドに出現
とあるユーザーが、活気よくボスに突っ込み振り落とす刃ーー


その刹那、秒針的にそのユーザーはボスへの攻撃が的中する代わりに腕にあるリストに攻撃を喰らってしまう。
すると、そのユーザーは手から剣を降ろしカランカランっと鳴らすのと同時にそのリストを手で抑えながら苦しむようにしゃがみこむ。


様子のおかしさを感じたのはごく数人で、周りにいるユーザーはそのユーザーのあとに続くようにボス討伐に奮闘していた。


声をかけようと、していたユーザーが一人いた。見た感じその子とPTを組んでいた人だろう...、肩にそのメンバーは触れた瞬間、体からありえない程の雷光がバチバチと放射。
閃光が眩く光り、目を開けていられないほど...強い光だった。


その後、そのユーザーは...膝立ちしたまま絶命していた。
この時、あの妙な噂は本物だと認識すること以外、紛れもない事実に直面した瞬間だった。


そっからだ、目の前に映し出される描画にファンタジー要素が追加され、夜はVR世界、朝はAR、昼は二つの世界が融合したMRに、時間差で様々な世界を楽しむように仕様変更された。


そっからは、本篇通りに街がめちゃくちゃになり、国枝透が現れて自衛隊と全面戦争。最後に仮想世界からの英雄とその仲間達たった五人で、挑み勝って終結した。


俺も国枝透に挑んだけど、あっさり負けた。まさか、スキルを使われるとは思わなかったからな...。


海上都市に搬送されて、無事一命を取り留めて、新たな都市で日常を取り戻した矢先ーーー。


何故か、少年を知る少女が近寄ってきて
数ヶ月間説得させられた。
もちろん嫌味も握られて。
現在は...この有様っと言う事である。


病室の端っこに座るセーラー服を着た少女に目が止まる
俯いてコクリ、コクリと寝ている。
少年の妹で、中二...唯一の肉親。
少年は、ニヤリと笑いながら『わっ!』っと声を立て脅かす


ビクっ!っと驚き瞼を全開にして
『うひゃっ!??』っと声を裏返しながら椅子から滑り落ちる。
相変わらずオーバーリアクション、これが妹の見どころである。


『いたっ!?』
『ゆるい寝顔だったから起こしたぞ?ありがたく思えよ』
『な、なっ?!誰がゆるい寝顔していたってですてぇ!?』


妹からのスカイアッパーは少年の顎を直撃し華麗に空中を飛び背中から落ちる。


『何しやがる!?』
『それは、こっちのセリフよ!人の寝顔を見て何するつもり!!』
『何って...何もしないぞ』
『えっ?』
『とんだ勘違い野郎なのか、ただの妄想なのか...どっちなんだよ』
『妹にそれ聞くの?変態』
『変態は余計だ。んで、今日も一晩付いてくれたのか?』
『まぁ、その...一応お兄ちゃんだし?そんな感じ』
『ザックりだな...』


そんな会話中、一人の少女が入室してくる。黒のロングヘアでブレザーを着こなして黒い瞳でこちらを眺めながら話す


『大山大樹に雪ちゃん、今回の件に参加してくれてありがとう』
このブレザーを着た少女の名は
浅井川香澄、同級生で既にゲーム開発を執り行って居る一人。
勿論、生徒会の会長も兼ね持ち、一流企業の娘でもある。言わば、狂いも無いお嬢様で完璧なスペシャルリストだ
当然、敵視する人や目の敵にする奴も居ないわけじゃない、取り残された逸材は孤立主義を強いられる。


どの世界にもありゆる話だーーー


知り合ったきっかけは、なんか知らないがオールスターオンラインで唯一の要、MRを実装してかつ、参加したプレイヤーとして《人体データ化》と《人体擬似アバター計画》の人材協力として雇われた。
勿論、財政は浅井川香澄がすべて受け持ち、生活面等は全て支援を受ける
そんな感じで今彼は、病室に居る。



『認めたわけじゃないわよ、私はお兄ちゃんの付き添い出来てるだけ。万が一の事あったら困るしね』
『んでよ、何で阻止する為っと言えども俺が研究体にならなきゃならないんだ?』
『計画自体を根元から切らなきゃ無意味。それに、国家が敵視する6名がこの場所に集まってる地点で臭わないかしら?』
『そうかもしれねぇけど、俺の精神持たねぇぜ?生身だしよ、この病室...同じ風景だから飽きて時間すらわかんなくなる』
『癒しならいるでしょ?』
『むっ?!』
『あー、わるいな...妹はちょっと違う趣旨混ざってくるからダメなんだよ』
『なぬっ!?』
『なら、私が?』
『まぁ、それが妥当ーーー』
『ちょ、ちょっと待ってよ!』
『なんだよ?』
『わ、私は眼中に無いの?』
『いや、無い訳じゃないが...規格外だったらありなんじゃないか?栄光に降臨しないかもしれんが』
『規格外かぁ...悪くないかも...』
『あ、想像の世界に旅立たな...雪。で、暁の計画は上手くいってんのか?』


言うまででもない微かな笑を見て大樹は察した。
香澄は軽く手を振り、大山大樹の病室をあとにした。
廊下を歩き、階段を降りて、三階病棟から二階病棟に移動する。
二階病棟は、人体擬似計画のデータ収集とそれを仮想世界に反映させるのが目的とされている。
裏面はそれで、表面は普通の病室や患者さんなどが普通に入院するごく代わりがない。


そんな場所に、香澄がなぜ立ち寄ったのか...その答えは無菌室に入院する一人の少女だった。
名は浅井川香子、香澄の四つしたの小学6年生、数年前までは普通に学校生活を送っていた。変わりなくごく普通に元気に遊ぶ子だった、そんなある日...香子は普段どおり遊んでいたが突然鼻から大量の出血を流して倒れた。病院に緊急搬送され、担当医師から言われた一言。『急性白血病の疑いがあります』っと告げられ、余儀なく入院生活を送る内に、香子はどんどん元気をなくして...気づけば一日中壁に向かって話しかける様になっていた。


今日も変わりなく、壁と対話する妹を無菌室越しで香澄は眺める。
無菌室に居る妹と電話ができる白い通話機が設置されている
手に取り呼び鈴を鳴らすが、こちらを見るがベットから一歩も落ちてこない
目は虚ろいて、正気を宿さない瞳
笑もなく肌が透けてるように白い。
通話機を再び、同じ位置に静かに降ろして電話を終える。


会話をしなくなって、もう二年が過ぎた。心虚しく、無菌室を抜け出てちょっとした自動販売機が立ち並ぶ休憩場に寄り、クッション性がある椅子に静かに座る。


『今日は香子ちゃんと話せましたか?』っと不意に声が背中から射抜かれるように発してきた。
後ろを振り向けば、大山大樹の妹の大山雪の姿がそこにあった。
首を左右に振り『いいえ』っと答える香澄、それを残念そうに『そっか...』っと言いながら、雪は香澄の正反対側の椅子に腰掛ける。


静寂になり、会話がない二人。
病室に居る入院患者や、入れ違う看護婦や医師が忙しそうにしていれば楽しそうに余談する姿も見受けられた。


静寂が続き十数分後『ねぇ』っと香澄はようやく重い口を開く。雪は『ん?』っと言う。


『君達兄妹って、いつもあんな感じなのかしら?』っと香澄は雪に問う。
雪は、天井を少し見上げながら香澄の問に答える。


『何時も、そうだけど...最近は少し遠く感じるかな』
香澄は意味が少しわからなかった
どうゆう意味合いでそれを答えたのか
よく分からなかった。
そんな香澄だが、雪は話を続けた。


『いつまでも、いがみ合う中って長くは続かない。何時しか、大人になって離れ離れになれば...そのいがみ合う時間って結構楽しかったって思えるようになるわ。最近いがみ合うのも、会話するのも...違ってきてね、大人に近づいてるのが感じられる。もうその時間が帰って来ないって思うとね...案外さみしい物かな...時間の刻って儚く早い物って身にしみるわよ』


香澄は、その時間は数年前に止まっていた。だから、分からなくても無理が無い...。その意味、みじかによく居る、嫌な顔なその存在は、時を重ねれば何れ変わってしまう。
その実感がない香澄は、馴れ合う妹の姿の記憶にしか存在しない
成長過程が分からないし、当時のままだ...そう思えばどれだけ悲しい話なのだろうか。


実に、実に...耐え難い事実のだろう
それでも、香澄は涙を浮かべない
《おねぇちゃんは強いし、優しいから大好きーーー!!》っとその肉声と当時の笑が脳裏に焼き付いていた。
思い返せばそれが最後だった、入院する前の二年前の記憶しかない。
今思い返せば、最後に枯れるほど泣いたのは...医師に告げられ、話を聞いて病院でて外に出た時位だ。


だから、今は...涙なんて出ない...。


『雪ちゃん...私にはわからないわ』
『大丈夫、香子ちゃんが元気になれば...きっとーーー』


ざわめく院内、香澄はクッション性がある椅子から立ち上がり背中越しで
『今日はありがとう』っと言いながらその場を後にした。
雪はその背中を眺めながら見送り、肩にかけていたスクールカバンを地震の膝の上に起きチャックを引いて、一つの書類を手に取り中を見る。


『香子ちゃんの為にか...、上手くいくといいけどね』


『患者仮装医療計画』っと書かれた文字が1ページの裏側に書かれている
面表紙に載せないのは、計画がバレてしまい阻止されかねないからだ。
香澄の独自の計画で、各医療機関にその提案を提出しており、その内の二つの医療機関から返答があり、香澄の提出を乗る形になっていた。
最先端で患者にリスクの負担を掛けないのが素晴らしいっと声が寄せられる最中、反面まだ来ない返事に焦ってる香澄は今日も、ある場所に訪れていた


現実の世界では動きを見せるものの、依然としてレクトは動かない
アリスからのメッセージは、『召喚獣が現れて討伐したよ。でも、召喚獣ってこの世界に居たのかしら?』っと疑問抱くメッセージにレクトはシャルネットに問いかける


『なぁ?シャルネット』
『ん?』
『召喚獣ってこの世界に存在していたか?』
『居るわけないじゃん、この世界の始まりから居る私でさえその召喚獣って言う存在は...居なかった』
『だよな、変だな...。』
『ん?その口調からして...もしかして居た系かな?』
『らしいぞ、撃破したみたいだけど』
『未知なる生命体が...現れて、それをレクトの仲間が撃破。...なんかおかしい』


シャルネットはレクトにあの宝石をもう一度見せて欲しいと言う。
言われるがままに、レクトはストレージから取り出してオブジェクト化して手のひらに乗せる。


シャルネットは、その宝石に触れた瞬間...これまででもない険しい顔つきで言い放つ。


『これ、魔石なんかじゃない。記憶の破片だよーーー』
レクトはそれを聞いて驚き声を上げながら『何だってーー?!』っと言い放った。

          

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