ナイツオブソードオンライン

双葉エレン

第67話凶悪な殺戮者

一向に晴れる気配がない...霧。
空を見あげれば、飛行タイプのモンスターが飛び交う
視線を落とせば、正気を失くした草木、枯れ果てた大地。
何かが出てきそうな、そんな感じが漂う空気感が無性に気味が悪さを覚える


手頃サイズの岩から腰を上げて立ち上がり背伸びをする。
肩を2度回し、生あくびをしつつ歩き始める、退屈しのぎで探索を始める


パーティーの通知ログはメンバーと共有されており、何らかの戦闘があれば更新されていく。
今の所は、何も無い...通知の音沙汰すらないーーー。



歩き進めて、5分弱。目の前に巨大な剣が聳え佇んでいた
高さはビル2階相当する約20mぐらいだろうか、それだけ巨大な剣だ。
刃幅も大樹相当する太さで、雷を撃つようなジグザグな剣身は歪さを感じさせる。


周りの異様な光景とマッチングする様なこの巨大な剣、眺めれば眺めるほど...不思議と吸い込まれそうな感覚になる。


レクトは眺めて、見上げていると...。突然、空が鳴り始めるーー
雷が雲を横は走り、音で大地を震わせる。次第に雨が見上げているレクトの頬に数滴落ち、一気に土砂降りの雨が降り注ぐ。
レクトは、隠れもせず、空を見上げたまま視線をそらさないで居た。


しばらくして、雷の音が強さを増して
紫色の雷光が巨大な剣に直撃する。
バチバチっと音を鳴らし、剣身に走る雷、眩い閃光が放たれ、瞼を閉じるレクト。


ゆっくりとレクトは瞼を開けると、巨大な剣の中心部に浮く少女に目が止まる。
妖精感あふれる、白いフリルと白銀に光る髪と瞳。頭上には白い輪っかをしている少女ーーー間違いなく天種族。


生あくびをして、気だるそうに開くその瞼でレクトを見下ろす。


この時レクトが感じた物を口にすれば


何故だろうか...。この少女から感じるのは...天使ってゆうより、自堕落ぽい怠惰を極めた異天使にしか見えない。
関わったら、なんかやばいーー。


レクトは、下を向き後ろを振り返って
逃げ出そうとした。
しかし、見えない何かの板に顔を強打
バンっと言う衝撃音がなる。


レクトの背中越しで、ケラケラと笑いながら少女は話す。


『引っかかった、引っかかった!私から逃げるとそうなるんだよね!』


レクトは、鼻を抑えながら、少女に振り向きムッとした視線を送る。


『バカにしてない?してない?してるよ?どっちだろうね?さぁ?』


自問自答してるやつ初めて見た...


フワフワと空中に浮く少女は言う


『さて、君の願いは?』
レクトはん?っとしたような表情で首を傾げながら『はぃ?』っと口にする
少女も、微かに首を傾けながら
『願いだよ?願い...。分かるよね?俗にいう願望って奴』
レクトは、目を点としながら少女を眺めたまま...ウィンドウを開きハラスメント申告を指でなぞりながらおそうとする。
その動作を眺めていた少女は、慌てながら『待って!待ってよ!』っと言い叫ぶ。
躊躇うレクトの眼差しを、少女は慌てながら『君は、なんでこの場所に居たのよ?私と会うためじゃないの?』っと言う。しかし、レクトの指はゆっくりと申告ボタンへと傾きを始める。


『わ、わ、やめてよ...。私を削除しないでよ!』っとーー口にした少女に、レクトの指の傾きは止まり、フワフワ浮く少女に視線を向けて言う。


『お前...NPCなのか...?』
『ま、まぁ...セキュリティー状、私は作られた人物かな。最近は、人間に近い知能を持ったNPC開発が進んでる...私もその一人よ』
『作られた理由は?』
『クリぼっちしている男性ユーザーを励ますっと銘に刻まれちゃいました...。何ですかね...私の扱い。理由の大半だと思う...』
『願いとは?』
『...この場所は、何故か『恋人がいないボッチに女神を!』って期間限定クエストで居ます、住んでます、こんな暗黒みたいな世界に、天使がいてもいいんですか!?』
レクトの目の前で顔を近づけて力説に言う少女に、レクトは苦笑いしながら
『ジンクス的な意味いだから、仕方が無いんじゃないか?』
『仕方が無いですむ話でーーーむぎゅ!?』


レクトは、少女の顔に手を伸ばして押し当てながら『はいはい、NPCにはあるある悩みだろ?それを俺にいっても無意味だぜ』っと若干笑いながら言う


少女は、再び空中をフワフワと浮遊飛行を始めた。少し残念そうな顔を浮かべつつも、レクトに言う


『そっか、残念...。でも、なんでこの場所に君が居るの?』


発言的に普段この場所には、入れないっと遠回しで言ってきた少女。
レクトは、躊躇いもなく、真っ直ぐした視線で『転送ワープでこの場所に飛ばされたんだ』っと告げる。
少女は、レクトを眺めたままじっと眺めて数十秒、何かを納得したような口取りで話し始める。


『君達、エクストラクエストの真っ最中なのか。十人居るジャッチマスターの一人と接触したんだ...』
『なんでわかったんだ?』
『情報を少し見させてもらったよ、私はこの世界で長く居る人物だからね。ながめてるだけでわかるんだよ、それで帝国戦記は、誰もクリアをしたことがないクエスト...攻略難高いって言われガチかな』
『どうゆう意味だ?』
『そのまんまよ、帝国はこの世界だと100年前...いや、10年前に滅んだとされてるわ。ジャッチマスターが生き延びていたとすれば、彼一人位かしら?帝国を滅亡させたのは他でもない、次期帝国を任されるはずだった王子だからね』
『何だってーー?』
『知らなかった見たいね...。まぁいいや、私は《見ていた》範囲しか話せないけどね。お駄賃くれたら話すよ?』


いくら渡しますか?っと言う文字が目の前に現れる。


金とんのかよ!?


仕方がない感じで、1回だけ桁を上げた。その額を手のひらに取り出して浮く少女に投げ渡した。


少女は、受け取った銀色に輝く銀貨を眺めながら『1...Gだと...?』っと苦言を漏らした。


『貯めれば、大金になる』
『た、確かにそうだけどさ...私の生活がかかってるんだけど?』
『不満があるなら、敵モンスターと向き合え』
『わ、私に働けと?』
『働けじゃない、倒せだ』
『で、でも...仕様的にそれは不可能じゃ...?』


レクトは、ウィンドウを開き上杉将軍に一通の文をホロキーボードで手早く打ちこなして送信。返事が来るのを待つこと5秒、早くも返信が来る。
メッセージを開き、返事内容を確認したレクトはにやけながら言う。



『不服なら、俺と付いてこい。今なら、飼い慣らしてやる』
『へ?』
『そんな顔するな、ちょとした知り合いに言って、君を自由に出来るようにナビやアシスト出来る様にした』
『えっ?どうゆう意味かな?』
『話が飲み込めないか?詰まり、君をこっから連れ出す。それも、ナビとしても戦闘のアシストとしてもな。つーか、金が欲しいなら戦えば稼げるだろ』
『???』


意味すらわからない表情を浮かべる少女に対して、溜息をこぼしながら説明を始める。


『簡略的にまとめていうぞ、お前はこの場所にいることに不満がある』
『う、うん』
『んで、この場所から別なところに行きたい』
『うん』
『で、エクストラクエストの情報で俺から金を巻き上げた』
『......そーなるよね』
『結論的に、俺はお前を《使える》って思いナビゲーションも兼ねて戦闘のアシストとして、俺はお前を買ったんだ。で、俺の知り合いに頼み込んだら了解と来たから大丈夫だろうって事で勝手に決めたんだがいいよな?』



少女は、否定する仕草をせずに
目を丸めてレクトを眺めながら
『ありがとうって感謝の言葉って。このタイミングで言えばいいのかな...?』っと言う
それに対してレクトはこう思った


まだ完全に、人間に近い知能は無い部分があるのか...。
感情なんて、人間にしかないからな...それを作るとなると、相当凄い事で表情まではハッキリしてるのにな。
これでまだ未完成ーーって酷さを感じるよな。


レクトは、頭を描きながら


『気持ちがない存在にしては、なかなかだな』
『うっ...うぐぅぅぅっ!』
『な、なんだよ?』
『そうだとしても、同じく生きてるんだからそうゆうこと言わないでよ!』


飛びつく少女は、レクトの手を噛じる


『な、なんで噛じるんだよ!?』
『はりゃへっちゃっ...!』
『腹減った?!だから、俺の手を噛じるのかーー納得するが。流石に痛いからハズレろ!』


腕を振り回すレクト、ハズレない少女
ブンブン振り回すが、ハズレない少女


どーなってやがる!?
呪われた装備した感じみたいなんだけど?!!
いや、落ち着け...奴は餌が欲しんだ


レクトは左手でウィンドウを開き
一つのおにきりを手に取る
ピクっとする少女、レクトはニヤニヤしながら言い始める。


『ほらほら、おにきりがあるぞーー?食べたくないなら、俺がくってしまーーう...ぞ?』


左手に何か噛じられてる様な、痛覚が左腕を通して伝わる。
左手に、視線を降ろすと...少女が食いついていた。
代わりに右手がヨダレでデロデロな状態になっていた。
レクトは、思わず苦痛フェイスを浮かべた


そ、そう来たか...!!
俺はてっきり、手でおにきりを食べるとばかりに思っていたが、とんでもねぇ誤算が...いや、非常識な奴がいた!!っと思い更けているといると、少女はようやくレクトくわえていた左手を外して言う。


『我を忘れてしまったわ。名前まだだったよねーーってどうしたの?』
『あ、な、何でもねぇよ...』
『シャルネットって名前よ...貴方は?』
『レクト...だ...』
『そう、なんで疲れきってるのよ?』
『それは、お前のせいだ...』
『噛じったから?』
『当たり前だろ!見ろよ、この両手...ヨダレでデロデロじゃねぇかよ!いくら可愛いからって、非常識が許されると思うなよ』
『まぁ、ゆるく生きるそれがモットーなので...気にしたら負けっすよ』
『お前がそれゆうな!』
『えっ?もう一度?それは...恥ずかしいっすよ』
『誰も頼んでない、てか、照れんなよ!イラつくからさ』


空の趣き加減はあまり宜しくない
雷鳴の音が成り止む気配がない
轟く雷鳴は、やがて...地に落ちる。


白煙が上がり、その地に降り立つ一人の男が姿を現すーー。


レクトは、拍子抜けに現れた男に驚き
左手を伸ばし柄に触れる。
シャルネットは重い口取りで話し始める。


『帝国戦記に居た...最悪な殺戮者の一人。デモン・ヘド・ペルガモットーーそれが彼の名です』
『シャルネット、ベルガモットについてどのくらい知ってる?』
『私が知る限り...帝国軍の軍隊を一人でぶっ潰した野蛮な人物って覚えてる。その、悲鳴をあげる人に対して...ぶっちゃけ楽しそうなあの笑が何ともね...。』
『そんな覚え方してるのかよ...。なぁ、シャルネットってこいつと関わりある系か?』
『いや、私は聖者...って建前な部分があるけど、実際は少し遊んでみたけどね』
『あ、遊んだ...?』
『それは、戦闘って言う遊びよ』


おぞましい何かを悟ったレクトは、剣を抜き取り構える
シャルネットは、自分に魔法をかけて小さくなりレクトの髪の毛に紛れ込む
片手に斧を持ち、筋肉質が計り知れないそのベルガモットはレクトを見るなり


『貴様は最強か?それとも、雑魚か?』っと問い出す。
『戦って見ればわかる』っと強気な姿勢をベルガモットに向ける。
歩みを止めたベルガモットは
『その辺にいる雑魚とは、ひと味違うようだな。その目、幾つ者の死線を超えた強者にしかない。名は何ていう?』っと言い地面をズンっと鈍い音を鳴らした。
澄ました顔付きで、自分の名を言う
『レクト』


『そうか、レクトか。なら貴様に与えられた死にざまを決めるのは、このベルガモットが引き受けようーーーさぁこい!強気武人よ、その誇りの刃を差し向けよ!!』


レクトは、地面を蹴飛ばし走り出して剣をベルガモットに振り抜く。
驚愕な出来事に、レクトは戸惑いをあらわにしてしまう


左腕に剣の刃が止まり、ビーンっと握る剣を震わせる。
普段は痺れるはずも無い、右手が微かに痺れる、一瞬の出来事に声も出ない


『温い、鋭さが足りんな...。どれ、一つ揉んでやるーーー』


レクトが振り落とした剣を、ベルガモットはチョンっと軽く触れた瞬間ーー何かが消し飛ぶような感覚に晒されて、音もなく吹き飛ばされる。


バキバキと枯れた木に背を向け破壊
一瞬にして、石壁に背を強打する


がはっ...!!


HPゲージは、ベルガモットの一撃で大半以上奪われた。レットゾーンを指し示し赤く点滅する視界の先に、ベルガモットはニタリと狂人な笑みを浮かべる。
シャルネットは、慌てながら回復呪文を唱えてレクトを回復する。
何とか立てるぐらいまで回復して、剣を目の前に突き刺して体を支える。


『なんだ今のは...?』
『イルミスって言う、ベルガモットの得意技で...酷い人では一撃で死に至らせるスキル。簡単に言えば《一撃必殺》って事かな』
『一撃必殺!?そんなスキルあったらイレギュラーだぞっ?!』
『今はそうかもね、当時だったら違うかもしれないでしょ?』


当時って事は、開発当初か...。
こんなバカ強い、敵居るなんて...流石下側の世界、地獄だな。
甘くはないって事か...。

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