クリームソーダ的恋愛事情。

アビコさん。

2章。3



僕らは、身支度を終え、準備を整えたのち、宿を後にした。
その時間は15分ほどで、あっという間のことで、11時半にもならずにホテル街を後にした。
平日ということと、早めの時間ということがあいまり、どこの飲食店も店内は混雑を迎えていないようであった。大都会といえどこの時間は、好きな店へ入れるようだ。
ただ、ラーメン屋を覗いては。


なぜ、ラーメン屋にはあれほどの長蛇の列が出来てしまうのかが疑問でならない。
ボクは生まれてこの方、ラーメンを美味しいと思ったことがない。
塩辛いし、麺で胃がもたれるし、なんだか落ち着いて食事が出来ない雰囲気がどこの店にもある。


最近は、女性向けの店舗も増え、お洒落であり、外観では一見、普通のカフェに見えたり、レストランに見えたりするところもある。
だが、そういうことをするとなんだか余計に行く気が無くなってしまう。
どうせ食べるなら、いかにもな油臭い店で食べたいし、黒の半袖シャツ姿で腕を組み仁王立ちしている親父がいるようなところがいい。
これはラーメン屋に対する完全なる偏見であるが、変に消費者に擦り寄ってくるよりも、それくらいの潔さのあるラーメン屋が良い。


「あー。ここ一度行ってみたかったんだよね。結構人気でさ」
なんて彼女が隣で話すことが聞こえてきた。


ラーメン屋とは思えないやはりカフェのような店が目の前にある。
店の前に出来た列の大半は女性であり、OL風な装いをしている。
ボクはOL風という言葉が好きでないのだが、どうしても働いている女性を表現するなら総じてOL風とつい言ってしまいたくなる。店からはニンニクの臭いも立ち上っていないし、食べた後でも、口臭が気になることも無いのだろう。


彼女がラーメン屋に興味を示したのを見て、女性はラーメンが好きという話は本当なんだなと感じた。今までに、出会った女性は総じてラーメンが好きであった。だが、ボクはあまり好きでないので、毎度誘われても気乗りがせず大抵は断っていた。しかし、今回は少々事情が異なる。結構ボクのお腹は空いてきている
のだ。ならば、別に食べてもいいかなと思えてくる。






ただ、一つ問題がある。それは---―…




「でも、結構人並んでるね。やめておこうかな」




彼女はそう言うとボクの手を引き、店を離れた。


「え、今のセリフ。ボクが言おうと思ったのに」
思わず、心のなかで出た言葉を口にしてしまう。




「ほんとに?ウケるー!」
彼女は、なんだか嬉しそうにボクの腕につかまってきた。


ああ、これでは完全にカップルだ。
はたから見れば、完全なる恋人同士以外の何物でもない。
そして、この現在、ボクらがいるエリアに、ボクの通う大学は存在する。
もし誰か知り合いに見られれば、間違いなく、付き合っていると思われることであろう。まあ、友だちはほとんどいないので、そんなに心配する必要も無いとは思うが。













コメント

コメントを書く

「文学」の人気作品

書籍化作品