兄と妹の両片思い

ソリィ

兄と妹の両片思い

「おにいちゃーん!」
可愛い可愛い妹の声がする。寂しさのあまりでついに幻聴が聞こえるようになったか?幼い頃に呼んでくれた懐かしい呼び名だ。
「あ、またやっちゃった。アキ君、久しぶり」
「理紗!?なんでここに…」
「お母さんのお遣いの帰りだよ?」
近所のスーパーのロゴが入ったビニール袋を持ち上げ妹…理紗は笑う。
「というか、もう兄とは呼んでくれないのか?」
「だってアキ君をアキ兄って呼んでたらいつまでも…」
そこまで言って、しまったとでも言うように理紗は口を押さえてしまう。
「いつまでも、なに?」
問い詰めようと俺は無意識に一歩近寄る。
「う、ううん、なんでもない!」
急に顔を赤くして、妹は慌てた様子だ。
「…? 風邪引いたか?顔が赤いぞ。体調が悪いならウチで休んでくか?」
「えと、いいの?」
「いいぞ?」
「じゃあ、おじゃまします」
ほほえむ妹はとてもキレイで。
俺は見惚れてしまっていたのだった。


***
(わぁ、ここがアキ兄の部屋かー)
わたしは1人暮らしを始めたアキ兄の部屋をずっと見てみたいと思っていた。
だからアキ兄の提案に好都合とばかりに乗ったのだけれど。
「ちょっと待ってな。なんか作ってやるから」
「ホント!?」
「あ、ああ…。余り物で作る簡単な料理だけど、それで良ければ」
「食べたい!」
あれ、アキ兄赤くなってる。なんでだろう?




「はい、めしあがれ」
「わぁ、美味しそう!」
十数分ぐらいだろうか?しばらく待った後に出てきたのは、白菜などの野菜のお鍋料理だった。


短時間で作ったとは思えないほど美味しかったです。
「ねえアキ君、こういう料理ってカノジョにも作ってあげるの?」
「そ、そもそもカノジョがいませんが」
「そうなんだ!」
嬉しいな、まだチャンスはあるんだね。
「…ってなんで敬語?」
「あ、あはは、なんでだろうな?」
(言えない…惚れてる女性を突然招きいれて物凄い緊張しだしたとは言える訳無い…)
(ここ…おにいちゃんの、好きな人の部屋なんだよね……な、なんか緊張してきた)
**
「え、えっと、美味しい料理ありがとう。今日は帰るね! …また来ても、いい?」
「もちろんいいよ。事前に連絡くれれば何か作って待ってる」
うん、その上目遣いは反則だぞ妹よ。
「やったー!」
飛び跳ねるように喜ぶ理紗、可愛い。
「…じゃあ、またね、アキ君」
「またな、理紗」


****
半年後。
「理紗」
「…? アキ君、どうしたの?」
「君が好きだ、付き合ってくれ!」
たっぷり3秒は間を開け、理紗は顔を喜びに染めた。
「はい!わたしも大好き!」
理紗が抱きついて来て、慌てて踏ん張る。
「ちょっ……」
「やっと私たちは血が繋がってない、って気付いたんだね」
「え、知ってたの?」
「うん、何年か前から」
「ずっと、悩んでたんだ」
「そうなの?」
「血の繋がった妹にこんな気持ちを向けちゃいけない、って逃げるように1人暮らしに踏み切っても寄ってくるし」
「それで1人暮らししてたの!?」
「母さんが自分には子供出来ないと思って養子にとったのが俺だなんて、知らなかった」
「お母さん、アキ君が養子になる前に妊娠してたらしいんだよね。あの天然さでスルーしてたしお父さん出張してたから気付かなかっただけで」
「ああうん、普通に想像出来ちゃうのがアレだけどな」
「そうだねー」


呆れたように、でも幸せそうに笑う2人は、沢山の子供の囲まれ、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしました。


END





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