死神さんは隣にいる。
76.覇王の御旗
僕は、影覇というスキルが形を成すときについて、多大な勘違いをしていた。そう、最終的に形は自分で決められるものだと思っていた。
しかし、一番最初の全く身に覚えのない羽織袴から始まり、続いて今回のワンピース。この二つに共通点はないし、さらに言うなら最近印象深い出来事があったというわけでもない。
当然、家にこれらの服はある。羽織袴などは何に使うのかは知らないがヤヒメがコスプレに使うのだと言って作った物が確かにある。ワンピースは昔姉さんが着ていたものだと思うし、ヤヒメも何着か持っている。故に、恐らく僕の記憶とは何らかの関係があるのだろう。しかし、それをコントロールすることはできないようだ。
おそらくはランダム。あるいはそれに類する何か。そういうことだ。
そう、それだけならまだよかった。
「ああ、くっそ……」
しかし、事はそう単純には運ばない。
普通の家族ならば、まあ自分の普段着の方がきっと着慣れているはずだし、そっちの印象の方が強い。だからきっとこの制限はあまり苦ではないだろう。むしろ着慣れた衣服に変えられるのなら、鎧とかではない分マシかもしれない。
しかし、そう、しかしだ。
僕の家には、悲しいかな、女性服という物が多すぎる。
まず、姉さんがオシャレ好きということで、最近のトレンドの服はもちろんのこと、昔のものまで幅広く取り揃えている。それは服だけに留まらず、アクセサリーにも及んでいる。
そしてなにより、ヤヒメの存在が大きい。彼女はコスプレイヤーだ。作るのも着るのも好きな、それはもう大好きな少女がいる。それはただの衣服から、ナース服や府警コス、さらにはファンタジー物のコスまで、それはもう多岐に渡りまくる。
さらに最悪なことに、これは恐らくコーディネートがそのまま反映される奴だ。それはつまり、小物なんかも勝手についてくる。
巨大なボスと戦おうとして使ったスキルで万が一にでもビキニとかになってみろ、緊張感が吹っ飛んでボスすら失笑物だぞ……。
「こんな、こんな下らないデメリットが……」
思わず地に手を付き、ショックを隠せず。
ただ地面に向けて、己が不運を嘆く。
そもそも、どうしてこんなスキルなのか。せめてもうちょっと、もうちょっと融通が利くものではないか。少しでも可能性を見つけるべく知恵を振り絞ろうとするが、しかし無情にも時は過ぎる。
そう、二人が来た。
「あっ、シキメ! ……って、どうしたの?」
「あれ? 陛下、如何しました? 何やらショックを受けているご様子ですが」
「何でもない……」
ショックがにじみ涙がほろり。それを手で拭って、二人に向き直った。もういい、今は後回しだ。いや回したくはないものだが。でも時間が勿体ないし……。
僕は二人にボス戦の手ごたえを聞いた。
「どうだった、二人とも。まぁ盤骸については心配してないけれど」
「お褒めに預かり光栄です。もちろん、余裕でしたとも」
「まぁ、そんな難しくはなかったわね。あの化け物悪魔の方が強いと思うし」
「まぁそうだろーね」
そもそもあの化け物悪魔改めギガンテス・デイモンは推奨レベル40だ。ボスとはいえ推奨レベル10以下の雑魚とは比べてはいけない。タイプも違うし。あれは魔法の耐性がちょっと強いらしいし。まぁ誤差の範囲らしいけど。
それはともかく、盤骸は思ったより時間がかかった。もう少し早く行けると思ったけど。
「ああ、いえ、私は今確かに職業進化を行いましたが、β時代ほどの召喚獣は次の街からでして。今はまだ、アレイオスもハンドレッドも弱いですから」
「ああ、そうか」
そうだ、まだあの二体の騎士は弱っちいままなのか。
盤骸には、豪轍帝には、戦車と二人の騎士、勇猛な四体の戦馬に三体のドラゴンが居た。というより、その全てでようやく、彼は「帝」足り得る強さを誇っていた。ある意味、一番スロースターターな「帝」と言えるだろう。
他二人は、元の技術が強かった口なので、今でも十分な働きをするが、一方彼自身にそれほどの強さはないために、本人の強さだけを言うなら中の上といったところだ。
豪轍帝の二体の騎士は非常に有名で、一人は騎士槍を、一人は大剣を振り回す。先程すり抜けた騎士が後者で、あんなでも進化すると、発動しなかったはずなのに何故か攻撃が当たる。今ではそれほどまでに魔力があるのだと気づくが。
まぁ、それでも今弱いことに変わりはない。それに、見たところまだ戦車しか呼び出せていないようだし、戦馬も二体だった。そこを見ると、大分弱体化しているのだろう。
あいつ自身が持っていた武器スキルも、召喚術スキルの方を育てていたためにそんな目立つこともなかった。あいつ自身、育てる気もあまりないようだけど。
まあ、そんな経緯も相まって、「帝」は三すくみ状態で、丁度いいバランスでもあったわけだ。「双剣帝」たるりゅーちゃんとタイマンを張ってこいつは一度も勝ったことがない。逆に「理外帝」とは手数の多さからほぼ負けなしだったが。
「まあ、もう少しの辛抱ですし。あの二人がいれば戦闘は大分楽になるでしょうし、待ちの一手ですね」
「ん、まぁそうなるね。頑張れー」
「激励の御言葉、身に余る光栄にございます」
「次それやったら舌を引き千切るから」
「ひぇっ」
そんな冗談はさておき、もうそろそろ見えてきた。リーフビッグスライムを倒した後に出現する道を通ると、ちょっとした街道になっていて、僕らはそこで合流した。
その先をずっと歩いていくとちょっと大きな農園が見えてきて、そこには非常に広大な畑が広がっている。まぁ作っている作物は多少のHPやMP回復効果が在ったりするから序盤は割と馬鹿にできない施設だ。
しかし、別に必須というわけでもない。現に僕はこの作物やら料理やらを抜きで第一エリアボスオークプラントウルフを討伐したし、必須というわけでもない。料理人志望のキャラは避けては通れぬ道だが、そうでなければ飛ばしてもいい場所だ。
さて、お目当ての人物を探そ……う……?
え、あれって……いや、でも……?
「……おい、盤骸」
「ちょっと何言ってるかわかりません」
「まだ何も言ってねえから当然だろ質問に答えろ――――あれはどういうことだ」
「…………」
僕が見たもの、それは――――「覇王の御旗」。
比喩でもなんでもなく、白い髪に王冠のレリーフの、巨大な旗。
そしてそれは――――クラン「覇王の御旗」のシンボル。
僕がブチ切れて皆殺しにして、とうに潰えたクランだった。
そしてその巨大な、立派な旗のもとに、数人のプレイヤーが傅いている。まるで何かを祈るように、跪き、手を組んで――――
「おい、なんであいつらがここにいる? 前にあいつらがしでかした事件、わすれたわけじゃないよな?」
「はい、それはもう、はい。あんなにキレた陛下を見たのは初めてでしたし……」
「じゃあ答えろ――――あれは何だ。どうしてここにいる?」
「……えっと、それは、私にもどうしてあのシンボルなのか、皆目見当もつかないといいますか……」
……なんだ、この歯切れの悪い返事は。まるで、知っていたが止められなかったみたいな……いや、盤骸は弱体化しているが「極限の三帝」。彼が止められない物なんてほとんどないと言える。ならこれはきっと何かの間違い――――
「あ、陛下。ご機嫌麗しゅうございます。如何なさいましたか?」
「……デスヨネ」
そうですよね。貴方しかいませんよね。こんなことできるの。というかやるの。まさかこいつらの復活とは思いもよらなかったけど。
「なんでこんなところにいるのさ、シオン」
案の定というかなんというか。そうだよね、あの宗教集団を蘇らせられる人間は、君くらいのものだよね。それくらい叩き潰したのに、なぜわざわざ復活させてしまったのだろうね。
口の端を引き攣らせながら、昨日のことを完全に忘れ、何をやっているのかをジト目で問いかける。
「むしろそれはこっちが聞きたいものですが……まぁいいでしょう。お喜びください、彼らはなんと、あのPK事件の報酬ですよ!」
「……ああ、なるほどね」
そういえば、そんな話もあったか。
サレッジがPK事件の報酬として新人教育を任せてくれたんだっけか。確か割と多くのPKが集まったと風のうわさで聞いたけれど、まさかこんなことになっているとは……。
「察するに、洗脳か」
「嫌ですね、人聞きの悪い。私はただ、陛下のすばらしさを熱心に説いただけです。そこからどうするかは彼ら次第という物でしょう。それで彼らは、傅くことを選択したのです。ああ、素晴らしい!」
人は、その説いた部分を洗脳と指さし恐怖するのだけども。
僕は、その言葉を聞いてさらに口を引き攣らせながら、それはもう盛大に引き攣らせながら、遠い目をした。僕は疲れているんだろうか……。
要するに、PKの残党を、ああして洗脳しているらしい。僕の素晴らしさとやらを僕の知らないところで広めて、過去の宗教団体を作り直しているらしい。もう何が何だかわからない。
頭がふらふらする。ああ、どうしてこうなった……。
「まぁまぁ覇王様。今回は私がこのクランの実権を、手綱を握りますから。覇王崇拝事件みたいな無駄極まりないことはさせませんよ」
「う、うぅ……そういう問題じゃない……」
……今の僕はその宗教団体が再誕したことにショックを覚えているんだけど。僕がマジギレした事件を掘り返さないでくれ……。
今の僕とはこれっぽっちも、ほんの少し足りとも関係ないが、念のために説明しておこう。「覇王崇拝事件」とは、僕を中心に興った宗教団体クラン「覇王の御旗」が起こした事件である。
その昔、僕のどこにそんなものがあるのか聞きたいくらいだったが、なにやら僕がご利益のある神様だと崇める団体が出てきて、そいつらが僕の為とほざいて僕のクランメンバーにちょっかいをかけてきたことがある。最初は軽くあしらっていたのだが、最終的にこの事件はリアルまで発展した。
クランメンバーの元へ、「覇王の御旗」構成員がリアルで向かったのである。それを聞いた僕がブチ切れて、徹底的に根絶したという結末を迎えたのが、「覇王崇拝事件」である。
二度とそんな下らない事が起きないよう、その後の対応は徹底的に手を回したのだが……。
「なんで、このシンボルなのか、聞いてもいい?」
「よくぞお聞きになってくださいました!」
怒りを抑え込むような声音でシオンに問うと、シオンは非常に嬉々とした顔でそれに返答した。
「これはですね、対策です!」
しかし、一番最初の全く身に覚えのない羽織袴から始まり、続いて今回のワンピース。この二つに共通点はないし、さらに言うなら最近印象深い出来事があったというわけでもない。
当然、家にこれらの服はある。羽織袴などは何に使うのかは知らないがヤヒメがコスプレに使うのだと言って作った物が確かにある。ワンピースは昔姉さんが着ていたものだと思うし、ヤヒメも何着か持っている。故に、恐らく僕の記憶とは何らかの関係があるのだろう。しかし、それをコントロールすることはできないようだ。
おそらくはランダム。あるいはそれに類する何か。そういうことだ。
そう、それだけならまだよかった。
「ああ、くっそ……」
しかし、事はそう単純には運ばない。
普通の家族ならば、まあ自分の普段着の方がきっと着慣れているはずだし、そっちの印象の方が強い。だからきっとこの制限はあまり苦ではないだろう。むしろ着慣れた衣服に変えられるのなら、鎧とかではない分マシかもしれない。
しかし、そう、しかしだ。
僕の家には、悲しいかな、女性服という物が多すぎる。
まず、姉さんがオシャレ好きということで、最近のトレンドの服はもちろんのこと、昔のものまで幅広く取り揃えている。それは服だけに留まらず、アクセサリーにも及んでいる。
そしてなにより、ヤヒメの存在が大きい。彼女はコスプレイヤーだ。作るのも着るのも好きな、それはもう大好きな少女がいる。それはただの衣服から、ナース服や府警コス、さらにはファンタジー物のコスまで、それはもう多岐に渡りまくる。
さらに最悪なことに、これは恐らくコーディネートがそのまま反映される奴だ。それはつまり、小物なんかも勝手についてくる。
巨大なボスと戦おうとして使ったスキルで万が一にでもビキニとかになってみろ、緊張感が吹っ飛んでボスすら失笑物だぞ……。
「こんな、こんな下らないデメリットが……」
思わず地に手を付き、ショックを隠せず。
ただ地面に向けて、己が不運を嘆く。
そもそも、どうしてこんなスキルなのか。せめてもうちょっと、もうちょっと融通が利くものではないか。少しでも可能性を見つけるべく知恵を振り絞ろうとするが、しかし無情にも時は過ぎる。
そう、二人が来た。
「あっ、シキメ! ……って、どうしたの?」
「あれ? 陛下、如何しました? 何やらショックを受けているご様子ですが」
「何でもない……」
ショックがにじみ涙がほろり。それを手で拭って、二人に向き直った。もういい、今は後回しだ。いや回したくはないものだが。でも時間が勿体ないし……。
僕は二人にボス戦の手ごたえを聞いた。
「どうだった、二人とも。まぁ盤骸については心配してないけれど」
「お褒めに預かり光栄です。もちろん、余裕でしたとも」
「まぁ、そんな難しくはなかったわね。あの化け物悪魔の方が強いと思うし」
「まぁそうだろーね」
そもそもあの化け物悪魔改めギガンテス・デイモンは推奨レベル40だ。ボスとはいえ推奨レベル10以下の雑魚とは比べてはいけない。タイプも違うし。あれは魔法の耐性がちょっと強いらしいし。まぁ誤差の範囲らしいけど。
それはともかく、盤骸は思ったより時間がかかった。もう少し早く行けると思ったけど。
「ああ、いえ、私は今確かに職業進化を行いましたが、β時代ほどの召喚獣は次の街からでして。今はまだ、アレイオスもハンドレッドも弱いですから」
「ああ、そうか」
そうだ、まだあの二体の騎士は弱っちいままなのか。
盤骸には、豪轍帝には、戦車と二人の騎士、勇猛な四体の戦馬に三体のドラゴンが居た。というより、その全てでようやく、彼は「帝」足り得る強さを誇っていた。ある意味、一番スロースターターな「帝」と言えるだろう。
他二人は、元の技術が強かった口なので、今でも十分な働きをするが、一方彼自身にそれほどの強さはないために、本人の強さだけを言うなら中の上といったところだ。
豪轍帝の二体の騎士は非常に有名で、一人は騎士槍を、一人は大剣を振り回す。先程すり抜けた騎士が後者で、あんなでも進化すると、発動しなかったはずなのに何故か攻撃が当たる。今ではそれほどまでに魔力があるのだと気づくが。
まぁ、それでも今弱いことに変わりはない。それに、見たところまだ戦車しか呼び出せていないようだし、戦馬も二体だった。そこを見ると、大分弱体化しているのだろう。
あいつ自身が持っていた武器スキルも、召喚術スキルの方を育てていたためにそんな目立つこともなかった。あいつ自身、育てる気もあまりないようだけど。
まあ、そんな経緯も相まって、「帝」は三すくみ状態で、丁度いいバランスでもあったわけだ。「双剣帝」たるりゅーちゃんとタイマンを張ってこいつは一度も勝ったことがない。逆に「理外帝」とは手数の多さからほぼ負けなしだったが。
「まあ、もう少しの辛抱ですし。あの二人がいれば戦闘は大分楽になるでしょうし、待ちの一手ですね」
「ん、まぁそうなるね。頑張れー」
「激励の御言葉、身に余る光栄にございます」
「次それやったら舌を引き千切るから」
「ひぇっ」
そんな冗談はさておき、もうそろそろ見えてきた。リーフビッグスライムを倒した後に出現する道を通ると、ちょっとした街道になっていて、僕らはそこで合流した。
その先をずっと歩いていくとちょっと大きな農園が見えてきて、そこには非常に広大な畑が広がっている。まぁ作っている作物は多少のHPやMP回復効果が在ったりするから序盤は割と馬鹿にできない施設だ。
しかし、別に必須というわけでもない。現に僕はこの作物やら料理やらを抜きで第一エリアボスオークプラントウルフを討伐したし、必須というわけでもない。料理人志望のキャラは避けては通れぬ道だが、そうでなければ飛ばしてもいい場所だ。
さて、お目当ての人物を探そ……う……?
え、あれって……いや、でも……?
「……おい、盤骸」
「ちょっと何言ってるかわかりません」
「まだ何も言ってねえから当然だろ質問に答えろ――――あれはどういうことだ」
「…………」
僕が見たもの、それは――――「覇王の御旗」。
比喩でもなんでもなく、白い髪に王冠のレリーフの、巨大な旗。
そしてそれは――――クラン「覇王の御旗」のシンボル。
僕がブチ切れて皆殺しにして、とうに潰えたクランだった。
そしてその巨大な、立派な旗のもとに、数人のプレイヤーが傅いている。まるで何かを祈るように、跪き、手を組んで――――
「おい、なんであいつらがここにいる? 前にあいつらがしでかした事件、わすれたわけじゃないよな?」
「はい、それはもう、はい。あんなにキレた陛下を見たのは初めてでしたし……」
「じゃあ答えろ――――あれは何だ。どうしてここにいる?」
「……えっと、それは、私にもどうしてあのシンボルなのか、皆目見当もつかないといいますか……」
……なんだ、この歯切れの悪い返事は。まるで、知っていたが止められなかったみたいな……いや、盤骸は弱体化しているが「極限の三帝」。彼が止められない物なんてほとんどないと言える。ならこれはきっと何かの間違い――――
「あ、陛下。ご機嫌麗しゅうございます。如何なさいましたか?」
「……デスヨネ」
そうですよね。貴方しかいませんよね。こんなことできるの。というかやるの。まさかこいつらの復活とは思いもよらなかったけど。
「なんでこんなところにいるのさ、シオン」
案の定というかなんというか。そうだよね、あの宗教集団を蘇らせられる人間は、君くらいのものだよね。それくらい叩き潰したのに、なぜわざわざ復活させてしまったのだろうね。
口の端を引き攣らせながら、昨日のことを完全に忘れ、何をやっているのかをジト目で問いかける。
「むしろそれはこっちが聞きたいものですが……まぁいいでしょう。お喜びください、彼らはなんと、あのPK事件の報酬ですよ!」
「……ああ、なるほどね」
そういえば、そんな話もあったか。
サレッジがPK事件の報酬として新人教育を任せてくれたんだっけか。確か割と多くのPKが集まったと風のうわさで聞いたけれど、まさかこんなことになっているとは……。
「察するに、洗脳か」
「嫌ですね、人聞きの悪い。私はただ、陛下のすばらしさを熱心に説いただけです。そこからどうするかは彼ら次第という物でしょう。それで彼らは、傅くことを選択したのです。ああ、素晴らしい!」
人は、その説いた部分を洗脳と指さし恐怖するのだけども。
僕は、その言葉を聞いてさらに口を引き攣らせながら、それはもう盛大に引き攣らせながら、遠い目をした。僕は疲れているんだろうか……。
要するに、PKの残党を、ああして洗脳しているらしい。僕の素晴らしさとやらを僕の知らないところで広めて、過去の宗教団体を作り直しているらしい。もう何が何だかわからない。
頭がふらふらする。ああ、どうしてこうなった……。
「まぁまぁ覇王様。今回は私がこのクランの実権を、手綱を握りますから。覇王崇拝事件みたいな無駄極まりないことはさせませんよ」
「う、うぅ……そういう問題じゃない……」
……今の僕はその宗教団体が再誕したことにショックを覚えているんだけど。僕がマジギレした事件を掘り返さないでくれ……。
今の僕とはこれっぽっちも、ほんの少し足りとも関係ないが、念のために説明しておこう。「覇王崇拝事件」とは、僕を中心に興った宗教団体クラン「覇王の御旗」が起こした事件である。
その昔、僕のどこにそんなものがあるのか聞きたいくらいだったが、なにやら僕がご利益のある神様だと崇める団体が出てきて、そいつらが僕の為とほざいて僕のクランメンバーにちょっかいをかけてきたことがある。最初は軽くあしらっていたのだが、最終的にこの事件はリアルまで発展した。
クランメンバーの元へ、「覇王の御旗」構成員がリアルで向かったのである。それを聞いた僕がブチ切れて、徹底的に根絶したという結末を迎えたのが、「覇王崇拝事件」である。
二度とそんな下らない事が起きないよう、その後の対応は徹底的に手を回したのだが……。
「なんで、このシンボルなのか、聞いてもいい?」
「よくぞお聞きになってくださいました!」
怒りを抑え込むような声音でシオンに問うと、シオンは非常に嬉々とした顔でそれに返答した。
「これはですね、対策です!」
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