最弱職がリーダーのパーティー編成は間違ってる

なちょす

第17話『究極の白魔法』


「テア・メルトッ!!」

詠唱し、体の内側から灼熱の魔粒子メアが杖を伝って赤く発光する魔導石の元で拡大し、放出される。

直径約1mほどの火炎の球体が、フレイアの持つ紅蓮の杖の先端に出現し、それが無数に放たれていく。

灼熱の炎をまといながら回転する球体は、次々とフリーダへ降り注いだ。

フレイアはその様子を見つめながら、しかし、油断はせずに、全速力で火炎球の後を追ってフリーダとの間合いを詰め、透かさず次の魔法を唱える。

「メルト・ブレードッ!!」

途端、フレイアが持つ紅蓮の杖が赤く発光し、杖の先端から紅蓮のごとき赤い炎が刃のように伸び、その全長を1m半まで引き伸ばした。

そして、気合いと共にフリーダに斬り掛かる。

「はああぁぁっ!!」

その時、降り注ぐ火炎の雨を避けながら、眼前にいるフリーダがゆっくりと口を開いたのを、フレイアは見逃さなかった。

まずい──。

「リリース・シール・テア・シェード」

瞬間、フリーダの落ち着いた詠唱と共に、彼女の首元に下げられている飾り物の白石が眩く発光した。

同時に、空中に白銀の魔法陣が展開し、その中心部から大量の水流が波動となって飛び出してきた。

「なっ…!?」

当然、フリーダを焼き尽くさんとして空中を飛来していた無数の火炎球は、突如現れた水流に呑まれて全て消滅してしまった。

しかし、迫り来る水流は火炎球を全て呑み込んだ後も流れを止めず、フレイアへ向けて飛んでくる。

「っ…!」

だが、その水流魔法は威力の割に範囲は狭いので、波動の届くギリギリのところで地面を転がり回避に成功する。

「良い反射神経だ」

顔を上げ、声のする方を見る。すると、右手をフレイアに向けたフリーダが、その表情を和らげ、微笑みながら翠色の瞳をフレイアの足元に向けていた。

「リリース・シール・テア・ロック」

瞬間、地面が揺れた気がして、フレイアは顔を落とす。そして、目を見開いた。

「これは…さっきの…っ!」

「少し違うぞ」

「なっ…!?」

驚愕し、急いで後方へ下がる。それとほぼ同時に、フレイアの足場に展開されていた魔法陣から細かい岩石が噴き出した。


                   ✲            ✲            ✲


──いったいどういうこと!?

次々と地面に展開される白銀の魔法陣を避けながら、私は必死に脳を回転させた。

しかし──、

「どうした、逃げるだけか?ディルフォードの娘」

問いかけられる言葉に思考を遮られ、このままでは埒が明かないと考えた私は、次々と展開される魔法陣を避けながら、早口に魔法を唱えた。

「フロートッ!」

すると、今度は杖の先端についている白い石の方が発光し、杖が自然と浮き上がる。

そして、片手で杖を握ったまま、意識を集中させて1m、2m、3m…と上昇し、ついに地面から6mほど離れたところで上昇を止めた。

──これが私が使えるフロートの限界ね…。

そう内心で呟いてから、顔を下へ向けて地上を見た。

濃い茶色の土が蔓延した地面には、今も無数の魔法陣が展開されており、その魔法陣が展開からわずか二秒足らずで微細な岩石を噴き上げる。

私は、それを見て確信した。あの地面から岩石が噴き出す魔法は、土魔法の基本形『ロック』だ。そして、先程テア・メルトを打ち消した水流の波動が、水魔法の基本形『シェード』。

彼女──フリーダ様は、現時点で三属性の魔法を使っている。私自身、炎と白の二属性のメアを持っているが、二種持ちの魔道士なんて、この世界にはいくらでもいる。でも、あの人は違う。あの人は、私が今まで一度も見たことがない、三種持ちの魔道士。

そこまで考えて、やはり疑問が頭をよぎった。

「随分と難しい顔をしているな、ディルフォードの娘。…だが、お前が疑念を抱くのも無理はない。私と初めて対峙する魔道士は、どの魔道士も揃ってお前と同じ顔をしていたからな。初見でこれを見破ったのは、私と同じく白魔法を極めた、同じ王国魔道士の女だったよ」

フリーダ様は、空中で杖にぶら下がっている私を見上げると、「一つ教えてやる」と言ってから、静かに目を閉じて魔法を詠唱した。

「フロート」

──!?

次の瞬間、フリーダ様の体が浮遊し、みるみる高さを増して、ついに私の高さを超えると、さらに上昇を続け、最終的に地上から10mほど離れたあたりで停止した。

そしてその位置から下を見下ろし、翠色の瞳に私を含め広い地上を映すと、無表情のまま言った。

「私の使える魔法は、白魔法のみだ。…だが──」

見上げた先で、背に陽を浴びながら、フリーダ様が右手を私に向けて言った。

「私は白魔法を極め、そして辿り着いた。──究極の白魔法にな」

「究極の…白魔法…?」

「ああ。これを使うと体内のメアのほとんどが一斉に放出されるため、あまり使いたくはないが、特別に見せてやる。……ちゃんと防げよ」

瞬間、フリーダ様の背後にある太陽が、いっそう強く光った。

そして──。

「メテオ・ホワイト」

聞いたことも無い魔導式句が囁かれた瞬間、上空に展開された巨大な魔法陣から、眩い光を放ちながら落ちてくる白い隕石が、私の視界を埋め尽くした。

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コメント

  • なちょす

    魔法の詳細についてはフリーダ様が後でしっかり説明してくれますので、もう少し待ってくださいm(。>__<。)m

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