朝起きたら妹が魔王になってました

猫撫こえ

第15話「魔王覚醒」

 ーー本当に…ごめんなさい…貴方はっ…


「リシッ… あれ、なんの夢、見てたっけ…」


 心の奥底に違和感を感じる。どこか懐かしい気持ちになる。これは…


「ミク」


「ぷはっ、なんでしょうか」


 当然のようにベッドの中から顔を出す。


「お前さぁ…いつもどうやって潜り込んでるんだよ」


「アレをこうして、ソッチをああしてるのです」


「わかんねぇよ」


「それより早く鍵乃ちゃんのとこに行きましょう。お腹が減ったのです」


「あぁ、そうだな」


 今日は城に行こうと思っている。写真のことも知りたいし、何より王を止めなければいけない。


 朝食を食べ終わり、一息ついて鍵乃に告げる。


「鍵乃、今日は城に行くぞ」


 鍵乃の顔が曇る。それもそうだ、鍵乃にとって城は初めて命を狙われた場所。トラウマが眠っている場所だ。


「やっぱり、嫌だよな」


「ううん、今は大丈夫。お兄ちゃんが守ってくれるから」


「…当たり前だ、死んでも守る」


 強い子だと思う。十四歳という若さで命の駆け引きに立ち向かえるのだから。


 俺も、怖い。鍵乃は俺以外に殺されない、だが、切り刻まれたら肉片になるし、十分に苦しむ。死ぬこともできずに苦しみ続ける鍵乃を見るのは、何より怖い。


「それじゃあ、れっつごーなのです!」


 ミクはなんだか燃えている。ブツブツ言いながら拳を握り、時々大声を出している。


「前回のようなことにはさせないのです…立ちはだかる奴らは皆血祭りに上げるのですよ…」


「俺も新しい魔法を手に入れたし、盾も自由に使えるようになった。大丈夫だ」


 そういえば、ベリアルと戦ってから全く敵が現れていない。いたって平穏な日常を送ってきた。明後日にはユミスさんのお祭りがあるし。


「何も無ければいいんだけどな…」


 ーーーーー


 そろそろ街が見えてきてもいい頃だ。だがいくら歩いても景色が一向に変わらない。


「燈矢くん、止まってください」


「どうしたミク、真面目モードか?」


「時間を切り取られています。おそらく、結界の類でしょう」


「敵か! クソッ、どこにいる…?」


 どこからともなく声がする。その声は歪んでいて、自然と不安になる。


「クククッ…妾を見つけることは不可能だ、貴様らは触れることも感じることも出来ぬ」


「誰だ!! 出てこい!!」


「妾は変幻の悪魔、イル。ベリアルがやられたと聞いて期待しておったのに…つまらんな」


「悪魔…天に仇なす愚者め」


 ミクが戦う気満々だ。でも、このままじゃ敵も見えないし、正直八方塞がりだ。あれ、待てよ…


「ミク、この結界って魔法なんだよな?」


「はい、魔法ですが」


「妾を無視してコソコソと…殺してくれるっ!」


 俺手に入れたじゃん。この状況を打開することの出来る可能性。


「イル!!! 悪いな、俺寝るわ」


「はぁ? 貴様…頭がおかしいのか?」


「来い、アイギス」


 指輪が輝き、純白の盾が現れる。俺の呼吸に合わせ、力を増していくその輝きは幾つもの魔法陣となって現れていた。


「精霊よ、我が元に集いその命を照らせ。その命は悠久の光となり、汚れを癒すだろう。闇夜に集う悲しみよ、憎しみよ。とざせ」


「何だ…この詠唱は…っ」


天翼セレスティア晶壁アゥル!!!」


 空間に亀裂が走る。その向こうには冷笑を湛えた女が立っていた。


「褒めてやろう! 妾の姿を見たのは、お前が初めてだ!!」


「そりゃ…どう…も…」


 意識が遠のく。全身が重い。全く力が入らない。あ、これじゃ守れないじゃん。俺、馬鹿だな。ミク、ごめん、頼んだ。


「褒美として寝たまま殺してやろうっ!!」


「おやすみ、お兄ちゃん。ゆっくり寝ててね…」


「鍵乃ちゃん!! 危ない!!」


「…来て、ヴォエルナ」


 瞬間、鍵乃の全身を闇色の武具が包む。その姿はとても。


「鍵乃ちゃん…えっちなのです」


「言わないでよぉ!!」


「確かにこの姿は燈矢くんには見せられないのです」


全身を武具に包まれ、さながらビキニアーマーのような格好の鍵乃がイルに立ち向かう。


「もう…覚悟しなさい、イル!!! 容赦しないんだから!」


「茶番に付き合うのも疲れた。そろそろ本気で終わらせてやる」


「そうだね、そろそろ終わるよ」


「何を言って… えっ?」


 魔法を唱え始めたイルの背後には先程まで正面に立っていた鍵乃がいた。


「あああぁっっ!!!」


「だから、早く終わらせるってば」


 イルの左腕は、鍵乃の足下に転がっていた。

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