朝起きたら妹が魔王になってました
第11話「お風呂イベント襲来!!!」
鍵乃に無理やり連れられ、一緒にお風呂に入ることになってしまった。この家の浴場は無駄に広い。目を閉じて、遠くにいれば大丈夫だろう…多分。
「脱いで」
「えーっとあのー…」
「いいから脱ぐ!!」
「はぁ…」
俺は半ば強制的に脱がされ、残りはパンツ一枚というところまできた。
「脱いだら先に入ってて」
「分かったよ…」
俺は促されるままに風呂場に入る。さて、どうしたものか。これは待っているのが正解なのか、むしろ体を洗っていればいいのだろうか。
「隠れてみるか」
浴槽にはドラゴンの頭からお湯が注がれていた。その辺りがドアから死角になっている。
俺は息を潜め、鍵乃の行動を観察することにした。
「あれ? お兄ちゃん…どこ? まさかっ…逃げた!?」
「グフフッ…慌ててる慌ててる」
「はぁ…せっかくお話したいこといっぱいあったのにな…」
なんかスゲー落ち込んでる。ちょっとだけ罪悪感感じちゃうわ。
「んんっ…ごほっ、うぉっほん」
「お兄ちゃん! なんで隠れてたの?」
鍵乃が走って向かってくる。マズイ。このままじゃ絶対転ぶ。確実に転ぶ。
「あっ…」
ほれみろ転んだ。まぁ、助けるんですけど、ここで一つ問題が発生する。俺らどっちも裸じゃん。
「危ねぇっ! ってうおっ!」
瞬間、全てを把握する。俺は今何故か足元に設置されていた石けんを踏み、見事に転んでいる。足の裏にフィットした石けんは前に進み、さながらスライディングの様な芸術的な転び方を演出している。
「いてて…ってお兄ちゃん!!」
「ん? 全然痛くねえ…ってか、鍵乃!!」
説明しよう。今寝そべっている俺の体の上には鍵乃が馬乗りになっているのだ。
ラッキースケベにも程がある。しかも体が密着していて、とてもじゃないが動ける状態じゃない。
「わわっごめん…すぐどくから、わあっ!」
「おふぅ…」
説明しよう。俺の上からどこうとした鍵乃は足を滑らせ、俺の方に倒れ込んできた。
俺は慎ましやかな胸に顔を埋めている状態になっているのだ。
「も、がっ…うっ…ってあれ? 息ができる。こういう時って普通息できないんじゃないの?」
「それは私の体をバカにしているのかな?」
怖い怖い怖い。とりあえずこのままじゃ二人共風邪を引きかねない。ちょっと寒い。お湯が欲しい。
「よいしょっと…ふぅ…」
体勢を立て直し、体を洗うことにする。
「あの…今さら言うのもなんだけど目瞑るわ。このままじゃ俺の理性が持たない」
「ねぇ、背中…流してあげる。あの、ほらっ最近色んなことあって疲れてるでしょ?だからその…」
「じゃあ目は瞑ってるから一瞬で終わらせてくれ、あとなるべく下は触らず、見ないようにしてくれ」
「ま、まかせなさいっ!」
泡を纏った鍵乃の細い指先が、俺の体を駆け巡る。耳には吐息がかかり、とてつもなく恥ずかしい。
心臓の動きが速くなる。多分シャトルランが終わった直後よりも速い。ドキドキしているのがバレてるんじゃないかと考えると余計にドキドキしてしまう。
「ねぇ、お兄ちゃん。ドキドキしてる?」
「あ、当たり前だろ!? 血管が千切れそうなくらいドキドキしてるよ」
「私ね、この世界に来てよかったなって思っちゃったんだ」
「危険で溢れてるのに?」
「うん、日本にいた頃はこうやってお兄ちゃんとお話できなかったでしょ? ほら、お兄ちゃん部屋から出てこなかったから」
それを言われると心が痛い。
「う、うん…」
「私、もっとお兄ちゃんとお話とか買い物とか一緒に遊んだりしたかったんだよ?」
「それは…ごめん…」
「あのねお兄ちゃん、私今好きな人がいるの」
この流れ…アニメで見たことあるやつだ。やべぇ心の準備しないと。
「その人はとってもかっこよくて、優しくて、一緒にいられるだけで幸せになれるんだ…」
「ほうほう、続けて」
「でもその人はとってもポンコツで、鈍感で、私の気持ちになんか気づいてないんだ」
誰のことだろう。俺ルートじゃないのか? 俺普段から鍵乃に愛の言葉を囁いてるつもりなんだけど。
「私と一緒にいるときも他の女の子と楽しそうにお話するし、エッチな視線送ってるし」
「うんうん、そいつは酷いな」
「知らない間にボロボロになってるときもあるし、私のことをとっても不安にさせる人」
ふーん。なんか聞いたことあるような話がちょくちょく出てくる。
「で、誰なんだ?」
「そういうところ…とかね」
「なんだって?」
「何でもない! ほら、早くお風呂入ろうよ。寒いよ」
「それもそうだな」
俺たちはお湯に浸かり、疲れを癒した。
「なぁ、鍵乃。母さんと父さんってどうしてるのかな」
「探してくれてるんじゃないかな。絶対に見つからないけど」
「タダでさえ親不孝だったのに、心配かけちゃうな」
「アハハッ、親不孝なのはお兄ちゃんだけでしょ」
笑った顔、やっぱり可愛いな。
絶対に死なせるわけにはいかない。生きて、母さんと父さんにもう一度元気な姿を見せてやらなきゃならない。それが今の俺に出来る最高の親孝行だ。
「じゃあ、俺はそろそろ上がるよ」
「私はもうちょっと入ってるね」
俺はドアの前まで歩き、ふと思い出したかのようにサラッと告げる。
「あぁ、そうだ鍵乃。俺は鍵乃のこと好きだよ」
「えっ…」
風呂から上がると着替えが準備されていた。ミクだろうか、養ってくれって言われてたのにこれじゃ俺が養われてるな。
「おかえりなのです。見るのです! この美しい髪を! 神様の力で髪を伸ばしてやったのです!」
「神様ってなんでもアリなのかよ」
美しい白髪をたなびかせ、クルクルとその場で回っている姿は無邪気で、とても死神には見えない。
「あのなぁ…お前全然わかってないよ。確かにそのままでも充分可愛い! だがしかし、俺が求めているのはそんなんじゃない!!!」
「照れるのです。髪型が気に入らないのですか?」
「おーい! 鍵乃! こっち来てくれ!」
「わわっ…えっと待って! ど、どうかした?」
走ってきたのか息を切らしている。髪は濡れ、服ははだけ、色っぽい。
「おぉ…これは… じゃなくて! ミクをツインテにしてくれ」
「うっ!」
脇腹に手刀がくい込む。最近脇腹攻撃されすぎじゃね?
「またそうやってすぐに別の女の子と… まぁいいや、ツインテールかぁ…確かに似合いそう」
「だろ! 早速セットしてくれ」
「髪を結ぶのはこれをつかってくださいなのです」
鍵乃に手渡されたのは黒と白の髪飾り。それぞれ凝った装飾が施されている。
「すっごいサラサラしてる…手触りもいいし、ちょっと羨ましいな。はい、完成だよ!」
「これがついんて…ど、どう…ですか?」
「んんっ! 可愛い。グッジョブ鍵乃」
その髪はまるでガラスの様に輝き、髪飾りとのコントラストがより一層その美しさを引き立たせている。
「燈矢くんは、ついんて? が好きなのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど、ミクには似合うかなって思っただけだよ」
「一生、生まれ変わってもこの髪型にしてやるのです」
「ところで、お兄ちゃんそろそろ食べ物がなくなりそうなんだけど…」
「家も買ったし、金庫に入ってるお金を取りに行くついでに買い物でもしようか」
「じゃあ明日はデートだね!」
「そうだな、ミクも行くか?」
「行くに決まってるのです」
鍵乃の表情が曇る。こりゃ明日も忙しくなりそうだ。
「脱いで」
「えーっとあのー…」
「いいから脱ぐ!!」
「はぁ…」
俺は半ば強制的に脱がされ、残りはパンツ一枚というところまできた。
「脱いだら先に入ってて」
「分かったよ…」
俺は促されるままに風呂場に入る。さて、どうしたものか。これは待っているのが正解なのか、むしろ体を洗っていればいいのだろうか。
「隠れてみるか」
浴槽にはドラゴンの頭からお湯が注がれていた。その辺りがドアから死角になっている。
俺は息を潜め、鍵乃の行動を観察することにした。
「あれ? お兄ちゃん…どこ? まさかっ…逃げた!?」
「グフフッ…慌ててる慌ててる」
「はぁ…せっかくお話したいこといっぱいあったのにな…」
なんかスゲー落ち込んでる。ちょっとだけ罪悪感感じちゃうわ。
「んんっ…ごほっ、うぉっほん」
「お兄ちゃん! なんで隠れてたの?」
鍵乃が走って向かってくる。マズイ。このままじゃ絶対転ぶ。確実に転ぶ。
「あっ…」
ほれみろ転んだ。まぁ、助けるんですけど、ここで一つ問題が発生する。俺らどっちも裸じゃん。
「危ねぇっ! ってうおっ!」
瞬間、全てを把握する。俺は今何故か足元に設置されていた石けんを踏み、見事に転んでいる。足の裏にフィットした石けんは前に進み、さながらスライディングの様な芸術的な転び方を演出している。
「いてて…ってお兄ちゃん!!」
「ん? 全然痛くねえ…ってか、鍵乃!!」
説明しよう。今寝そべっている俺の体の上には鍵乃が馬乗りになっているのだ。
ラッキースケベにも程がある。しかも体が密着していて、とてもじゃないが動ける状態じゃない。
「わわっごめん…すぐどくから、わあっ!」
「おふぅ…」
説明しよう。俺の上からどこうとした鍵乃は足を滑らせ、俺の方に倒れ込んできた。
俺は慎ましやかな胸に顔を埋めている状態になっているのだ。
「も、がっ…うっ…ってあれ? 息ができる。こういう時って普通息できないんじゃないの?」
「それは私の体をバカにしているのかな?」
怖い怖い怖い。とりあえずこのままじゃ二人共風邪を引きかねない。ちょっと寒い。お湯が欲しい。
「よいしょっと…ふぅ…」
体勢を立て直し、体を洗うことにする。
「あの…今さら言うのもなんだけど目瞑るわ。このままじゃ俺の理性が持たない」
「ねぇ、背中…流してあげる。あの、ほらっ最近色んなことあって疲れてるでしょ?だからその…」
「じゃあ目は瞑ってるから一瞬で終わらせてくれ、あとなるべく下は触らず、見ないようにしてくれ」
「ま、まかせなさいっ!」
泡を纏った鍵乃の細い指先が、俺の体を駆け巡る。耳には吐息がかかり、とてつもなく恥ずかしい。
心臓の動きが速くなる。多分シャトルランが終わった直後よりも速い。ドキドキしているのがバレてるんじゃないかと考えると余計にドキドキしてしまう。
「ねぇ、お兄ちゃん。ドキドキしてる?」
「あ、当たり前だろ!? 血管が千切れそうなくらいドキドキしてるよ」
「私ね、この世界に来てよかったなって思っちゃったんだ」
「危険で溢れてるのに?」
「うん、日本にいた頃はこうやってお兄ちゃんとお話できなかったでしょ? ほら、お兄ちゃん部屋から出てこなかったから」
それを言われると心が痛い。
「う、うん…」
「私、もっとお兄ちゃんとお話とか買い物とか一緒に遊んだりしたかったんだよ?」
「それは…ごめん…」
「あのねお兄ちゃん、私今好きな人がいるの」
この流れ…アニメで見たことあるやつだ。やべぇ心の準備しないと。
「その人はとってもかっこよくて、優しくて、一緒にいられるだけで幸せになれるんだ…」
「ほうほう、続けて」
「でもその人はとってもポンコツで、鈍感で、私の気持ちになんか気づいてないんだ」
誰のことだろう。俺ルートじゃないのか? 俺普段から鍵乃に愛の言葉を囁いてるつもりなんだけど。
「私と一緒にいるときも他の女の子と楽しそうにお話するし、エッチな視線送ってるし」
「うんうん、そいつは酷いな」
「知らない間にボロボロになってるときもあるし、私のことをとっても不安にさせる人」
ふーん。なんか聞いたことあるような話がちょくちょく出てくる。
「で、誰なんだ?」
「そういうところ…とかね」
「なんだって?」
「何でもない! ほら、早くお風呂入ろうよ。寒いよ」
「それもそうだな」
俺たちはお湯に浸かり、疲れを癒した。
「なぁ、鍵乃。母さんと父さんってどうしてるのかな」
「探してくれてるんじゃないかな。絶対に見つからないけど」
「タダでさえ親不孝だったのに、心配かけちゃうな」
「アハハッ、親不孝なのはお兄ちゃんだけでしょ」
笑った顔、やっぱり可愛いな。
絶対に死なせるわけにはいかない。生きて、母さんと父さんにもう一度元気な姿を見せてやらなきゃならない。それが今の俺に出来る最高の親孝行だ。
「じゃあ、俺はそろそろ上がるよ」
「私はもうちょっと入ってるね」
俺はドアの前まで歩き、ふと思い出したかのようにサラッと告げる。
「あぁ、そうだ鍵乃。俺は鍵乃のこと好きだよ」
「えっ…」
風呂から上がると着替えが準備されていた。ミクだろうか、養ってくれって言われてたのにこれじゃ俺が養われてるな。
「おかえりなのです。見るのです! この美しい髪を! 神様の力で髪を伸ばしてやったのです!」
「神様ってなんでもアリなのかよ」
美しい白髪をたなびかせ、クルクルとその場で回っている姿は無邪気で、とても死神には見えない。
「あのなぁ…お前全然わかってないよ。確かにそのままでも充分可愛い! だがしかし、俺が求めているのはそんなんじゃない!!!」
「照れるのです。髪型が気に入らないのですか?」
「おーい! 鍵乃! こっち来てくれ!」
「わわっ…えっと待って! ど、どうかした?」
走ってきたのか息を切らしている。髪は濡れ、服ははだけ、色っぽい。
「おぉ…これは… じゃなくて! ミクをツインテにしてくれ」
「うっ!」
脇腹に手刀がくい込む。最近脇腹攻撃されすぎじゃね?
「またそうやってすぐに別の女の子と… まぁいいや、ツインテールかぁ…確かに似合いそう」
「だろ! 早速セットしてくれ」
「髪を結ぶのはこれをつかってくださいなのです」
鍵乃に手渡されたのは黒と白の髪飾り。それぞれ凝った装飾が施されている。
「すっごいサラサラしてる…手触りもいいし、ちょっと羨ましいな。はい、完成だよ!」
「これがついんて…ど、どう…ですか?」
「んんっ! 可愛い。グッジョブ鍵乃」
その髪はまるでガラスの様に輝き、髪飾りとのコントラストがより一層その美しさを引き立たせている。
「燈矢くんは、ついんて? が好きなのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど、ミクには似合うかなって思っただけだよ」
「一生、生まれ変わってもこの髪型にしてやるのです」
「ところで、お兄ちゃんそろそろ食べ物がなくなりそうなんだけど…」
「家も買ったし、金庫に入ってるお金を取りに行くついでに買い物でもしようか」
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