朝起きたら妹が魔王になってました

猫撫こえ

第6話「ずるいずるいずるいずるい!」

 突然の出来事に頭がついていかない。コイツは一体今何をしたんだ?


「はぁぁぁぁあ!? お兄ちゃんから離れて!」


「ぐぇっ」


 鍵乃が女の子を突き飛ばす。その顔は怒りに震えているようにも見える。


「おいおい待て待て、落ち着け鍵乃」
「フーッフーッ」
 このままじゃこの子を殺しかねない。この怒りの根源はどこなのだろう。


「なぁ、君は一体誰で、何処から来たんだ?」


「私の名前はミクトランテクトリなのです。簡単にミクと呼ぶのです。死神なのです。」


 自己紹介の最後にさらっととんでもない事を言ったような気がするんだけど。


「で、ミクちゃんはなんでここにいたのかな?」


「他の神とケンカしたのです。そしたら、リシア様に下界に降ろされてしまったのです。下界に降りる途中で大きな魔法を感じて引き寄せられるように…気づいたらここで寝ていたのです」


 つまりお仕置きをされたということだろう。


「お前には死の口付けをしたのです。これで私はお前を好きな時に殺せるのです。せいぜいそうならないように私が下界にいる間養うのです。」


「お兄ちゃん死んじゃうの…?」
「それは私の気分とお前達の頑張り次第なのです」


 これじゃあマズイ。かなりマズイ。このままじゃなす術なく死んでしまう気がする。そこで俺は。
「なら、全力で君を養おう。君は神様なんだろう? その代わりと言ってはなんだが俺達を助けてくれないか」


 俺はミクに事情を全て説明した。俺達が勇者と魔王、そして兄妹であること。


「そんなことですか。なら私を使えばいいのです。私を使い魔にすればこれからの生活は安全なのです」


「じゃあ…!」


「私に何か一つでも勝てれば、ですけど」


 特徴的な語尾を付けず、冷たい笑みを浮かべながら放った言葉に、俺は背筋が凍るような感覚に襲われた。


「なら、ジャンケンだ、ジャンケンで勝負しよう」
 俺はジャンケンだけは昔から強かった。強気に出れるのもこのせいだ。それに絶対勝てるし。


「じゃん…けん?」


 ジャンケンが分からず困惑しているようだ。突然の異世界ゲームを知っているはずもないし、当然といえば当然の反応だ。


「なら、ルールを説明しよう。パーはグーに強く、グーはチョキに強くチョキはパーに強い。この三すくみでなりたつゲームだ。掛け声は最初はグー、ジャンケンポンだぞ、分かったか?」


「なんだか楽しそうじゃないですか、早くやりましょう!」


「最初はパー」
「最初はグー! っえ?」


「お前がグーで俺がパーだから俺の勝ちな。よろしく使い魔さん」


「ずるいずるいずるいずるい!そんなの聞いてないのです!」


「最初にパー出しちゃいけないとも言ってないぞ、それに養うんだからいいじゃないか。細かいこと気にしてると人生楽しくないぞ」


「ずるい!ずるい!もぅやだぁ〜」


「お兄ちゃん、さすがにクズじゃないかな、それは」


 なんだかんだで死神の使い魔(妹そっくり)を手に入れ、よく分からない共同生活が始まった。

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