朝起きたら妹が魔王になってました

猫撫こえ

第5話「お家が出来たよ!」

 家を探すことになったのだが…はて、どこから買えばいいのやら。街の中を一周見て回ったが家を売っていそうなところはない。


「どうしたものか…あ、あのすいません!」


「おっ、なんだ小僧」


 俺は道を歩いていたガタイのいいオジサンに声をかけた。


「家ってどこで買えばいいんでしょうか…僕達遠くからやって来たもので、まだこの街に慣れていなくて」


「そりゃおめぇ、あれだ俺の所にこいや」


「えっ、家を売ってらっしゃるんですか?」


「家ってのは創るもんさ、まぁとりあえずついてこいや」


 声をかけた人がよかった。うまい具合に話が進む。
「えっと…ここは…」
 突然、路地裏の細い道を歩くオジサン。狭そう。しかもなんだか雰囲気が怪しい。
 実はこれ誘拐されてるんじゃね?
 路地を抜けると開けた場所に出た。
そこには大きな看板があった。


《激安!魔法建築!扉屋》


 魔法建築とは一体なんなのだろう。家を魔法でぶち建てることだろうか。なんかそれっぽい。


 俺達はオジサンに案内されて待合室? みたいな所に座らされた。


「家が欲しいんだったな。どんなのがいいんだ?」
「その前に少し、いいですか?」
「なんだよ」


「魔法建築ってのは何なんですか?」


 オジサンはポカーンとして口が空いている。その表情には呆れさえ浮かんでいる。
「おめぇ…魔法建築も知らないでよく生きてこれたな」


「何か、すみません…」


「まぁいい、魔法建築ってのは決められた土地に魔法建築士が家を建てることだ。何も家だけじゃねぇ。この街も、あの城も何もかも魔法によって創られてる」


「お客さんには素材代と土地代を払ってもらう。土地の大きさや素材の多さによって建てる家の細かな調節ができるのさ」


「で、どんなのがいいんだ?」


 これから冒険者になる上で仲間が必要になるかもしれない。そうなれば家を大きくしておくのもいいだろう。万が一攻められた時に物資を蓄えておくにも都合がいい。


「なるべく大きいやつ。屋敷みたいな」


「おめぇ金は持ってんのか…? その要望なら少なくとも五万リシアは必要だぞ」


「えっ、五万リシアでいいんですか?」


 この言葉にまたオジサンの顔が変化する。やっぱり一億リシアって頭おかしい位の大金なんだろう。腕だけでこれとは…あの像、全部売ったらどうなるんだろう。


「そ、その様子じゃあ払えるみたいだな。よし、場所はどうする?」


「なるべく城から遠い所でお願いします。あとは綺麗なところがいいですかね」


「じゃあ、リージュ草原の辺りだな。あの辺は季節によって全く違う顔を見せてくれる人気のある場所だ。特に春になると一面花畑のようになるんだ。彼女さんも喜ぶだろうよ」


「はわわっ…彼女だなんて…ふへぇ…」
 俯き、顔を赤らめている。可愛い。


「いえ、この子は俺の妹ですよ。…ぐふぅっ」
 突然脇腹にグーパンチが入る。


「へぇ、そうなのか美人さんだからてっきり付き合ってるのかと」


「アハハ…」


「なら早速行こうか、仕事は早く終わらせたいんでね。」


 そう言うとオジサンは駆け足で外に出て行った。後をついて行くと奥の方から馬車を引っ張って来るのが見えた。


「さぁ、乗ってくれ、揺れが激しいかもしれんがまぁ、気にすんな」


 馬車の中は木で作られていた。椅子もベンチのようになっていて長時間の移動は辛そうだ。


「どんな家が建つのかなっ、お姫様みたいなお部屋が欲しいなぁ…」


「どちらにせよ洋風に作られるのは間違いないだろうよ」


 景色の流れを見ていると、段々と日が暮れてきた。今日はありえない事の連続だったなとしみじみ思う。
 何にせよ今日中に家を買えてよかった。


 すると綺麗な池のある小高い丘のようなものが見えてきた。


「お客さん、あそこがリージュだ綺麗な所だろう?」


「あぁ、すごく」


 馬車から降りると何軒か他にも家があるのが見える。ご近所付き合いもしていかないとな。


「お客さん、どの辺に建てたいか希望はあるか?」


「そうだなぁ…」
「わたし、ここ、ここがいいです!!」


 鍵乃が池の近くの花畑でくるくる回っていた。


「じゃあ、そこにしよう、ちょっと離れててくれよ」


 突然空気が変わった。今まで吹いていた風がピッタリ止まったのだ。


「木の神、土の神よ我に力を与えたまえ。
天創造セレスティア・アーティファクト


 詠唱を終えると花畑の上に魔法陣が浮かぶ。輝きを増しながら家が創られていくのが分かる。その光景は美しく、近所の人も見に来ているのが数名いた。


「終わったぞ。悪かったな最低でも五万リシアってのは嘘だ。あんまりにもガキ臭かったから脅したんだ。お代は半分でいいよ、俺からのサービスだ」


「ありがとうございますっ!こんな綺麗なお家を建ててくれて!」
「俺からもありがとうございました!」


「俺の名前はリーゲル、お二人さん仲良くな。これからも扉屋をご贔屓に!」


 俺は二万五千リシアをリーゲルに渡し、見送った。


 ガチャ…


「すごーい!! 広いよお兄ちゃん! 螺旋階段もあるよ! 本当にお屋敷みたい!」


「お屋敷なんだよ、とりあえず色んな部屋を見て回ろうか…ってもういないし」


「鍵乃ーー! どこだーー?」


「お兄ちゃん! こっち来て! 早く!」


 声色が違っていた。嬉しそうにしている様子ではない。俺は声と妹の匂いを辿りながら駆け足で向かった。マジグッドスメル。


「お兄ちゃん…これ…」
「えっ、なんだよこれ…」


 そこにはベッドに横たわった全身純白の女の子がいた。そもそも魔法で作られた家の中にいること自体おかしいのだが…何よりおかしいのは鍵乃にそっくりであること。違っているのは髪の色くらいだろう。


「おい、おまえ!どこから入ってきたんだ!」


「んにゃ…?」


 その女の子は寝ぼけ眼で俺に抱きつき、


 俺のファーストキスを奪った。



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