三題噺【デビル・召喚・憑依】

　  はーい！ 皆さん始めましてぇ！ この世界とは別の世界のアイドル。魅惑のうくったんですの！ 気軽にうーちゃんって呼んでね。




　  なんだ、これ。うるさい羽虫だ。しかも変なポーズ決めてやがる。




　  もう！ 変なポーズじゃないよ！ 君たちのいうピースってやつじゃん！ 可愛いでしょー？？ どうどう？




　  なるほど。羽虫はピースを決めていたのか。いやー、驚きだなー。俺は人差し指と中指をたてるのがピースだと思ってたけど、異世界のピースは手をグーにして顔の横にくっつけるのかー。いやー、驚きだわー。さすが異世界。俺達の世界のものとは違うものが溢れてるぜ。




　  もー！ 全然驚いてないじゃん！ 教えてくれるって意外と優しいのね！ って、そうじゃなくて！ もっと驚いてくれて良いんじゃないのってことよぉ！ こんなのがうくったんの召喚者だなんてやになっちゃうわ！




　  何か変なこと言い出したなぁ……。ヤバいな。痛い。痛すぎるわー。てか、この羽虫なに？ フェアリー？ まあ、喋ってる時点で羽虫でないことは確実か。身長は……10cmくらいか？ ほぉ……流石異世界。こんな綺麗に紫色に輝く髪の毛とか初めて見たわ……。背中に生える黒い羽とかどうなってんの？ 引きちぎって見ていいか？ しかし、やっぱりウザイな……フェアリーってこんな感じなのか？ でも全体的に黒いから羽虫で丁度いいんじゃないか。




　  ひ、引きちぎる！？ ダメに決まってるでしょ！？ それになんで羽虫に戻るのよ！ おかしいと思わないの！？ それに、外見がいくらフェアリー寄りだとしても、あんな下等な物質と一緒にしないでよねっ！




　  じゃあなんだっていうんだ……。やっぱり羽虫か。




　  違うって言ってるでしょう！？ うくったんはデビルよ！ デ・ビ・ル！




　  悪魔かよ。ないわー。しかも自分のこと可愛く見せるためにデビルって言うとか痛いわー。マジないわー。




　  なによ！ 可愛いんだから問題ないじゃないの！ 全く！ 最近の人間にはこの可愛らしさがわからないのね！もう、やになっちゃうわ！




　  ……何か言ってるが聞こえない事にするか。そろそろ面倒になってきたしな。




　  面倒ってなにそれ！ うくったんは悪魔界のお姫様でアイドルだったのよ！？ それを無視するってどういうことー！！




　  さーて、なんかねぇかな……。




　  というより、うくったんを召喚したんだからなにかあっても良かったんじゃないの！？ なにか寄越しなさいよー！




　  へー、なんか結構人いるなぁ……。巫女っぽいやつにローブを着たヤツねぇ……。なんか、召喚するヤツみたいだ……。いや、されたんだった。そうか、コイツらが……。




　  もー！ 私の話を聞きなさいよぉ！ なんで反応しないの！？ 乗り移ってやるわよ！




　  ていうか、偉そうなヤツらえらく驚いた顔してるな？ おかしくね？ 俺の方が驚いてても良いのにな。ていうか、騎士のヤツ動かねぇし。生きてんのかなぁ。あ、反応した。生きてんのか。




　  くぅー！ なんで弾かれるのー！？ うくったんの憑依を弾くなんてなんて生意気なヤツなの！ こーなったら魔法で攻撃してやるわ！




　  しっかし、異世界ってのは大方予想通りだったなぁ。巫女さんに、ローブ着た魔法使い、騎士に、貴族か。すげぇー。




　  えぇー！？ なんでなんでー！？ どーして魔法も弾いちゃうのよ！？ おかしいんじゃないの！？ これは変よ！ 明らかにおかしいわ！ 貴方いったい何者なのっ！？




　  ん？なんだよ、巫女さん。は？ 俺の名前？ あー、そうだなぁ……。




　  もー！ なんなのよー！？ ……なに、あんた。うくったんに何か用？ ブサイクはお呼びじゃないの！ 何？ うくったんのこと聞きたいの？ しょうがないわね！




　  はぁ……俺の名前は中取ナカトリ 慎哉シンヤだ。普通の男子高校生だな。なんかあるのか？ 俺？ まあ、色々聞きたいことはあるけどな。




　  へぇー、貴方ナカトリ シンヤって言うのね！ 長いからなーちゃんって呼ぶことにするわ！ これは決定事項ね！




　  それで、どうして俺はここにいるんだ？ 意味が分からないんだが？ 軽くここで説明してくれよ。




　  先にうくったんの説明を聞かせてあげる！ うくったんは人間の年で数えるなら81年前にうまれた18才！ アイドルになったのは38年前の10才の時！ うくったんは10才の頃から姿が変わってないのよ！ どう？ すごいでしょう！




　  は？ 異世界の悪魔を二体呼び出したはずだった？ 何言ってんの？ 俺人間なんだけど？ どっからどう見たって人間なんだけど？？ もっと詳しく説明してくれよ。 わけわかんねぇ。




　  ちょちょちょ！ なんでこんなprettyなうくったんの説明を無視するのよ！？ うくったんは高貴な悪魔なのよ！？ 無視なんてありえないわ！！




　  え？ 本気で言っていたのか……？ というか、真面目に俺は悪魔じゃないからな。本当だぞ？ いや、本当だって！ ちょ、おい！ 話を聞けって！ なんで騎士がこっちに来るんだよ！？ や、やめっ、こっち来んなって！




　  もー！ 今度はなんなのよー！ 何！？ 騎士と異世界召喚された男子高校生のBLなの！？ よくある展開なの！？ 無口無表情で迫ってくる騎士に必死に反抗するけど、鍛えてる騎士には全然敵わなくて、最終的には無茶苦茶S○Xするの！？ ねぇそうなんでしょ！！




　 ふざけんな！ どこをどう見たらそうなるんだっ！ちょ、おまっ、なにすんだっ！ ひゃぁっ！ ど、どこを触ってるんだよっ……！や、やめろぉ……。




　  きゃー！ やっぱりそうなのね！ もー照れちゃうわぁー！ 目の前で美男子 × 美少年が見れるなんてっ！ はっ！ これは美女 × 美少女も必要なんじゃないの！？ 




　  必要ねぇだろっ！ てか本気で鬱陶しい！ 邪魔だ！ 




　  キャッ！ もー、危ないじゃないっ！ 何も手で払い除けなくったって良いでしょう！？ それに、ただ上の服が脱がされただけじゃない。何をそんなに騒いでるのよー。




　  さっきまで騒いでたのは羽虫だろーが……。で、なんで脱がせたんだよ。言えば自分で脱いだのに。




　  うくったんは騒いでないわよ！ 失礼しちゃうわ！ でも、なーちゃんいい体してるわね！ ん？なーちゃん、この変な痣なーに？




　  は？ 何？ 俺人間に思われてなかったのか？ あれだけ人間だって主張してたのにか？ え、マジで？ 嘘だろ……。何？ まだなんかあるのか？ は？ この痣？ あぁ、これね。生まれつきだよ。これがなんかあるのか？




　  もー！さっきからそのブサイクとばっかり話してるー！ なんでうくったんじゃなくてそのブサイクなのー！？ ありえなーい！ こっち向きなさいよー！




　  は？ なに？ 触って確かめたい？ まぁ、良いけど。あんま強く触んなよ？ 絶対だぞ？ 




　  それは前振りね！ 触りたいわ！




　  強くすんなよ！？ 絶対だかんな！？




　  分かってる分かってる！ 強くするのよね！ 任せなさい！！




　  それはしろって言葉よね！ 任せてちょうだい！




　  はっ！？ ちょ、やめろって！お、おいっ…………ぎゃああああああ！！！！！！




　  ちょ、うるさっ！ もー、なーちゃん煩いわよ！ なーちゃんが押せって言うから押したのに！ そんなに騒がないでよね！




　  …………




　  え？ な、なーちゃん？




　  …………




　  ちょっ！ なーちゃん！？ 口から変なもの出てるわよ！？ なーちゃん！？




　  …………




　  起きて！ 起きてなーちゃん！ 早くその変なものしまって！ なーちゃん！ お願い！ 早く！！




　  ……我々ハ……宇宙人ダ……




　  なーちゃん！？ キャア！？ し、白目向いてるわよ！？ どーしたらいいの！？ なーちゃん！？ なーちゃぁあああああんんんんん！！！！




　  ……我々ト、言ッタ、言葉ト、宇宙人ト、言ッタ、言葉ハ、嘘ダ……




　  もう！ 煩いわね！ なーちゃんをどうしたのよ！




　  ……コイツハ……死ンダ……




　  はぁ！？ 何言ってるのよ！ なーちゃんは生きてるわ！ その証拠に、心臓が動いてるじゃない！ 




　  ……本当ダ……心臓ハ、我ガ、動カシテイル……




　  なっ……！？ 貴方、なーちゃんを殺したの！？




　  ……違ウ……コイツハ、元々死ンデイタ……




　  それも嘘ね！ だって今先まで動いて喋っていたもの！ 死んでいたなんてこと、絶対ありえないわ！




　  ……本当ダ……シカモ、ココニイルコイツノ魂モ、死ンダ……




　  貴方、最初からおかしかったけど、その発言はもっとおかしいわ！ ここにいるこいつって、どういうことよ！ まるで、なーちゃんが二つあるみたいな言い方ね！




　  ……ソウ、二ツアル……一ツハ、ココ……




　  なら、もう一つはどこにあるっていうのよ。




　  ……元ノ世界……召喚、サレナカッタ、ハズノ、未来……




　  それを今進んでいるっていうのね！ なら良いわ！ うくったんは今からなーちゃんに逢いにいくわ！




　  ……デビルノクセニ、ナゼ、人間ヲ、追イカケル……




　  なぜ？ それはなーちゃんがうくったんの理想そのものだからよ！ 多少口は悪いけど……。そこもまた良いところよね！ どう？ 理由としては十分でしょう？？




　  ……デビル、オ前ノ、世界ノ、悪魔トハ……




　  自分の欲望のままに動く、魔の生物よ。うくったんはうくったんのしたいように動く。うくったんの悪魔は基本こんな感じなんだから。追いかけて来ないでよね！




　  ……欲望ノ、ママニ……カ……




　  ま、追い掛けてこようよと、また召喚しようと、次は弾いてやるわ！ なんて言ったってうくったんはお姫様なんだから！ じゃあ、その抜け殻。貰うわね！




　  ナ、ナニヲ……！




　  憑依！ 転性！ 次元移動！ じゃーねぇー！！！




　                   END