アトラスフィア ~神に背きし天狼の牙達~
序章1
◆終わりの始まり
──Welcome to Wonderland♪ Today is a terrible but a lovely day♪ Here, I hear their screams♪
(ワンダーランドへようこそ 今日はひどいけど素敵な一日です ここで、叫び声が聞こえます)
風の心地良い満月の夜、森の崖の上。
長い黒髪に双葉の様な形の頭のリボンを着けた見た目の可愛らしい一人の小柄な少女がいた。その少女、イヴ・イルシオンはとても愉快そうで、まるで不思議の国のパレードで流れるような歌を歌っていた。それだけなら可愛気で溢れていたであろう、しかしイヴは次の動作を行った岩肌の地面に金具の足で固定されたイヴの体よりも大きい重火器の弾薬装填レバーをガチャリと引く。重火器に取り付けられた超遠距離用スコープを覗き込む。
これから語られる「アトラスフィア」の世界でもこれは普通ではない。
──ウオォォォォン!
歌に混じり、崖の下の鬱蒼とした森林から幾重もの狼の遠吠えが響く。
「まだ雑音元の犬っコロどもが群れてやがりますね。ですが、今日でワンちゃん達とお別れだと思うと悲しいですね」
そう呟く彼女の表情は全く悲しそうには見えない。むしろ愉快そうに口の端を釣り上げ、狂気に歪んでいた。
雄叫びをあげる狼達もとい、アトラスフィア・ウルフ。そのアトラスフィア・ウルフ抹殺用重火器である『ナイトメア・カノン』の引き金をイヴは引いた。
静かだが強い殺傷力を持つ漆黒の砲弾が森の中へと吸い込まれ、そこから甲高い狼の悲鳴が上った。
「……また一つ雑音が消えやがりましたね、ふふ、あははははは!」
狙撃を開始してから約2時間弱……この『静寂の森』の攻略は着々と進行していた。このアトラスフィアという名の星を制圧する為、邪魔な守護者であるアトラスフィア・ウルフを殲滅する。それが、殺戮人形であるイヴ・イルシオン『達』の存在意義だった。
◆
アトラスフィア・ウルフの長であるフェンリスは皆を率いて紅蓮に染まりつつある森を駆け回る。その姿は長に相応しく巨大で、輝く緑色の瞳と白い毛並みを持ち神々しい。森が次第に炎が広がり紅く紅く染まっていく。それは敵であるイヴ・イルシオン一味の手による物であり、被害は深刻化していた。
彼らの目標は崖の上の敵の狙撃手、イヴ・イルシオン。そこに到達するまでに既に仲間が何人も殺されている。
敵はイヴだけでは無かった。
近接型の小型殺戮人形、具体的にはホムンクルスと呼ばれる存在。カプセルの中で人工的に造られた魔法生物達だ。その姿は可愛らしい衣服を着た子供の様で暗器を服の下に隠し持っており、アトラスフィア・ウルフを殺す事だけに特化している。
そしてその赤き瞳には光は無く感情が全く見られない。
「目標ハッケン、コロス! コロス!」
数体の殺戮人形が樹上から降下、というよりも地面に激突する様なスピードを出し木を逆さに蹴って白狼の群れへと襲いかかる。しかし、それを予測して居たかのように狼達は視線をそちらへ向け──その瞬間、殺戮人形達は跡形も無く消滅した。
アトラスフィア・ウルフの目は特別だった。見たモノを消滅させる事が出来る……それは彼らの生まれ持った力。その瞳の奥に刻まれたルーンが空間に作用し消滅させたのだ。彼らは声を上げずに行動する沈黙の守護者。それでいて狼達は統率のとれた動きを可能としている。
彼らにはもう一つ、特殊な能力があった。同じ目を持つ者達との『意識』と『記憶』の共有。一匹が敵の位置に気付くとする。すると同じ目を持つ他の味方全員がその位置を瞬時に把握できる。その為、彼らは群れで行動する事で真価を発揮する。先程の樹上に潜んで居た殺戮人形達も、彼らの中の一匹が存在に気付いたので効率の良い対処が出来た。彼らにとって『個』は『全』であり、記憶を仲間と共有し合う。
そして彼らの仲間の内の一人が狙撃手であるイヴ・イルシオンの位置を特定した。
◆
「ふむ、ワンころが数匹こちらに向かってやがりますね」
イヴは眼帯で目を隠し直しつつ、そう結論付けた、
「奴らは爆弾付きの首輪をつけても逆らう悪い犬。従うという選択肢が無い。本当に愚かなのですよ」
突如イヴの背後の空間がねじ曲がり裂け始める。
イヴは勘づいたのか、片目の眼帯を取り外し自分の背後に目を向けた。
──バチィ!!
その刹那……見えない力と力がぶつかり合い、対消滅した。
「見られてやがりますね、今のは消滅の魔眼。奴らは意識共有が出来る。これでこの位置が愉快にバレバレになった訳ですね」
重火器を置いて直ぐにその場から離れ、目を向けた先の森の奥へとへ駆けようとする。
その奥から無数の光の糸が放たれイヴを斬り裂かんとばかりに迫る。
脅威的な反射神経でイヴはそれらを軍刀の刃で斬り払った。
「奇襲は私の専売特許なのですよ、なのでどういう位置に居るかは大体わかるです」
しかしイヴは先の地面に転がった小さな石に違和感を感じ取り唐突に立ち止まる。
「石っころに罠ですか。成る程……先程の糸の攻撃にあの石に刻まれた『ルーン』、相手は本命の様ですね」
イヴは軍刀を地面へと突き刺すと地面を『何か』が伝い、石に刻まれた刻印の罠を強制発動させた。その瞬間、石から強烈な力が発動し、バチバチと周囲の空間を歪ませ地面にポッカリと穴を開けさせた。『消滅』の力が込められていたのだ。それを見たイヴは敵に賞賛の感情を抱いた。
「いいですねぇ!! 殺し合い! こうでなくては盛り上がらないではないですかァ!! さぁ、お次はどんな手を──」
──ギイィィィン、バチィ!
その刹那。
月光を背に人影が降り、二つの斬撃がイヴの右腕を斬り裂く。それと同時にプラズマが発生し、強烈な電流がイヴの体を流れる。
「……!? ……その体は……いえ、それよりも何故無事なのですか」
光輝く白い長髪と狼の象徴である耳を揺らし、白い外套をふわりと舞い上がらせながら空から大地へと着地した人物が、イヴの小さな体を見て確認する。
その体は半分機械で出来ていた。衣服の下に隠れていた機械部分である右腕に短剣の刃が当たり、弾かれたのだ。それだけでは無い、まともに受ければ即死する程の電撃を受けた筈のイヴはどういう訳か電流を地面へと流し込む事で即座に無効化した。
「機械の体……能力的にも他の人形とは圧倒的に違う。それに、その片目は……!」
二本の短剣を構え直し、人型のアトラスフィア・ウルフである彼女はイヴを強く睨みつけた。
「おやおやおや、何してくれやがるんですか、大切な服が破れたじゃないですかぁ?」
イヴは苛立った様子も無く愉快そうに口端を釣り上げ今の状況を楽しんでいた。
この人型の狼の事をイヴ知っていた。アトラスフィア・ウルフの長であるフェンリスの娘、シエラ。『天狼の巫女』とも呼ばれる『存在の力』を操る事が出来るアトラスフィア唯一の存在。存在の力とは魂を形成する力であり、誰もがこの力に魂が覆われて生きている。しかし稀に、その力を操作出来る者が生まれる事がある。その存在は神や巫女として人々から崇め称えられる。
「会えて光栄ですよ天狼の巫女、シエラ。この眼が気になりやがりますか? 綺麗なエメラルドグリーンだとは思わないですか?」
イヴはシエラの同胞のアトラスフィア・ウルフの眼を奪ったその目を向け、狂気に歪んだ笑顔を浮かべながら軍刀を振りかざす。
◆
「死んで償いなさい、外道」
シエラは沸き上がる怒りを隠せずにいた。アトラスフィア・ウルフの目を殺戮人形へ移植するという非道の行いの所為で狼達の死骸は弔われる事無く、『消滅の魔眼』で消滅させる決まりとなっていた。
シエラの能力は『ルーン文字を刻んだ物質に特殊な力を与える事』。超遠距離から放たれた糸を斬り払う事が出来る相手は尋常ではない。『存在の力』で強化された糸は万物を斬り裂くと言われている筈の物だった。それに『消滅のルーン』が刻まれた石の罠を見破り、『雷のルーン』が刻まれた短剣からの電撃を無効化した。存在の力に対抗し得るは存在の力のみ。そうなると敵も研究し、目の移植の様に同じ力を手に入れた可能性が高かった。
「私達の方が科学が進歩しているのは知ってるですよね、弱き者達が強き者達に搾取されるのは必然なのですよ」
当然の様にそう言い放つイヴの言葉にシエラは到底同意出来る物では無かった。
私達は、その強者が弱者を搾取する世界を認められず、巨大な星の破片と言える小さな星に移り住んだ。
シエラ達は元の住んでいた『惑星エストラ』の一部を切り離し、人間や動植物達と共に繁栄してきた。
そしてアトラスフィア・ウルフと人間達の間にハーフブラッドと呼ばれる人間と狼の混血の種族が生まれる。
しかしそれが気に入らなかったのか、元の世界の神が怒り、嫉妬し、侵略を開始した。
「汚い口を閉じて下さい。私達は滅びない。この世界も。あなた達の奴隷になんてならない。元の世界の神に伝えて下さい、かつて信仰されしあなたの翼はすでに穢れきっていると。元、守護の天狼達がそう嘆いていたと」
シエラは覚悟を決めた、恐らく今夜、自分は死ぬだろう。こいつを倒しても森に居る殺戮人形の数が多過ぎる。それでも私は、私達は、戦う。この星に住む人間達と、同胞の血が混じったハーフブラッド達の為──。
「勘違いしている様ですねシエラ、私は神なんてどうでもいい、むしろ私はあなた達を愛しているのですよ。その愚かさが愛おしい! 嗚呼、早く斬り刻みたい! それがこのイヴ・イルシオンの存在する意味なのです!!」
殺戮人形に感情は無い筈。しかしイヴには何故か感情があり……狂っていた。
──Welcome to Wonderland♪ Today is a terrible but a lovely day♪ Here, I hear their screams♪
(ワンダーランドへようこそ 今日はひどいけど素敵な一日です ここで、叫び声が聞こえます)
風の心地良い満月の夜、森の崖の上。
長い黒髪に双葉の様な形の頭のリボンを着けた見た目の可愛らしい一人の小柄な少女がいた。その少女、イヴ・イルシオンはとても愉快そうで、まるで不思議の国のパレードで流れるような歌を歌っていた。それだけなら可愛気で溢れていたであろう、しかしイヴは次の動作を行った岩肌の地面に金具の足で固定されたイヴの体よりも大きい重火器の弾薬装填レバーをガチャリと引く。重火器に取り付けられた超遠距離用スコープを覗き込む。
これから語られる「アトラスフィア」の世界でもこれは普通ではない。
──ウオォォォォン!
歌に混じり、崖の下の鬱蒼とした森林から幾重もの狼の遠吠えが響く。
「まだ雑音元の犬っコロどもが群れてやがりますね。ですが、今日でワンちゃん達とお別れだと思うと悲しいですね」
そう呟く彼女の表情は全く悲しそうには見えない。むしろ愉快そうに口の端を釣り上げ、狂気に歪んでいた。
雄叫びをあげる狼達もとい、アトラスフィア・ウルフ。そのアトラスフィア・ウルフ抹殺用重火器である『ナイトメア・カノン』の引き金をイヴは引いた。
静かだが強い殺傷力を持つ漆黒の砲弾が森の中へと吸い込まれ、そこから甲高い狼の悲鳴が上った。
「……また一つ雑音が消えやがりましたね、ふふ、あははははは!」
狙撃を開始してから約2時間弱……この『静寂の森』の攻略は着々と進行していた。このアトラスフィアという名の星を制圧する為、邪魔な守護者であるアトラスフィア・ウルフを殲滅する。それが、殺戮人形であるイヴ・イルシオン『達』の存在意義だった。
◆
アトラスフィア・ウルフの長であるフェンリスは皆を率いて紅蓮に染まりつつある森を駆け回る。その姿は長に相応しく巨大で、輝く緑色の瞳と白い毛並みを持ち神々しい。森が次第に炎が広がり紅く紅く染まっていく。それは敵であるイヴ・イルシオン一味の手による物であり、被害は深刻化していた。
彼らの目標は崖の上の敵の狙撃手、イヴ・イルシオン。そこに到達するまでに既に仲間が何人も殺されている。
敵はイヴだけでは無かった。
近接型の小型殺戮人形、具体的にはホムンクルスと呼ばれる存在。カプセルの中で人工的に造られた魔法生物達だ。その姿は可愛らしい衣服を着た子供の様で暗器を服の下に隠し持っており、アトラスフィア・ウルフを殺す事だけに特化している。
そしてその赤き瞳には光は無く感情が全く見られない。
「目標ハッケン、コロス! コロス!」
数体の殺戮人形が樹上から降下、というよりも地面に激突する様なスピードを出し木を逆さに蹴って白狼の群れへと襲いかかる。しかし、それを予測して居たかのように狼達は視線をそちらへ向け──その瞬間、殺戮人形達は跡形も無く消滅した。
アトラスフィア・ウルフの目は特別だった。見たモノを消滅させる事が出来る……それは彼らの生まれ持った力。その瞳の奥に刻まれたルーンが空間に作用し消滅させたのだ。彼らは声を上げずに行動する沈黙の守護者。それでいて狼達は統率のとれた動きを可能としている。
彼らにはもう一つ、特殊な能力があった。同じ目を持つ者達との『意識』と『記憶』の共有。一匹が敵の位置に気付くとする。すると同じ目を持つ他の味方全員がその位置を瞬時に把握できる。その為、彼らは群れで行動する事で真価を発揮する。先程の樹上に潜んで居た殺戮人形達も、彼らの中の一匹が存在に気付いたので効率の良い対処が出来た。彼らにとって『個』は『全』であり、記憶を仲間と共有し合う。
そして彼らの仲間の内の一人が狙撃手であるイヴ・イルシオンの位置を特定した。
◆
「ふむ、ワンころが数匹こちらに向かってやがりますね」
イヴは眼帯で目を隠し直しつつ、そう結論付けた、
「奴らは爆弾付きの首輪をつけても逆らう悪い犬。従うという選択肢が無い。本当に愚かなのですよ」
突如イヴの背後の空間がねじ曲がり裂け始める。
イヴは勘づいたのか、片目の眼帯を取り外し自分の背後に目を向けた。
──バチィ!!
その刹那……見えない力と力がぶつかり合い、対消滅した。
「見られてやがりますね、今のは消滅の魔眼。奴らは意識共有が出来る。これでこの位置が愉快にバレバレになった訳ですね」
重火器を置いて直ぐにその場から離れ、目を向けた先の森の奥へとへ駆けようとする。
その奥から無数の光の糸が放たれイヴを斬り裂かんとばかりに迫る。
脅威的な反射神経でイヴはそれらを軍刀の刃で斬り払った。
「奇襲は私の専売特許なのですよ、なのでどういう位置に居るかは大体わかるです」
しかしイヴは先の地面に転がった小さな石に違和感を感じ取り唐突に立ち止まる。
「石っころに罠ですか。成る程……先程の糸の攻撃にあの石に刻まれた『ルーン』、相手は本命の様ですね」
イヴは軍刀を地面へと突き刺すと地面を『何か』が伝い、石に刻まれた刻印の罠を強制発動させた。その瞬間、石から強烈な力が発動し、バチバチと周囲の空間を歪ませ地面にポッカリと穴を開けさせた。『消滅』の力が込められていたのだ。それを見たイヴは敵に賞賛の感情を抱いた。
「いいですねぇ!! 殺し合い! こうでなくては盛り上がらないではないですかァ!! さぁ、お次はどんな手を──」
──ギイィィィン、バチィ!
その刹那。
月光を背に人影が降り、二つの斬撃がイヴの右腕を斬り裂く。それと同時にプラズマが発生し、強烈な電流がイヴの体を流れる。
「……!? ……その体は……いえ、それよりも何故無事なのですか」
光輝く白い長髪と狼の象徴である耳を揺らし、白い外套をふわりと舞い上がらせながら空から大地へと着地した人物が、イヴの小さな体を見て確認する。
その体は半分機械で出来ていた。衣服の下に隠れていた機械部分である右腕に短剣の刃が当たり、弾かれたのだ。それだけでは無い、まともに受ければ即死する程の電撃を受けた筈のイヴはどういう訳か電流を地面へと流し込む事で即座に無効化した。
「機械の体……能力的にも他の人形とは圧倒的に違う。それに、その片目は……!」
二本の短剣を構え直し、人型のアトラスフィア・ウルフである彼女はイヴを強く睨みつけた。
「おやおやおや、何してくれやがるんですか、大切な服が破れたじゃないですかぁ?」
イヴは苛立った様子も無く愉快そうに口端を釣り上げ今の状況を楽しんでいた。
この人型の狼の事をイヴ知っていた。アトラスフィア・ウルフの長であるフェンリスの娘、シエラ。『天狼の巫女』とも呼ばれる『存在の力』を操る事が出来るアトラスフィア唯一の存在。存在の力とは魂を形成する力であり、誰もがこの力に魂が覆われて生きている。しかし稀に、その力を操作出来る者が生まれる事がある。その存在は神や巫女として人々から崇め称えられる。
「会えて光栄ですよ天狼の巫女、シエラ。この眼が気になりやがりますか? 綺麗なエメラルドグリーンだとは思わないですか?」
イヴはシエラの同胞のアトラスフィア・ウルフの眼を奪ったその目を向け、狂気に歪んだ笑顔を浮かべながら軍刀を振りかざす。
◆
「死んで償いなさい、外道」
シエラは沸き上がる怒りを隠せずにいた。アトラスフィア・ウルフの目を殺戮人形へ移植するという非道の行いの所為で狼達の死骸は弔われる事無く、『消滅の魔眼』で消滅させる決まりとなっていた。
シエラの能力は『ルーン文字を刻んだ物質に特殊な力を与える事』。超遠距離から放たれた糸を斬り払う事が出来る相手は尋常ではない。『存在の力』で強化された糸は万物を斬り裂くと言われている筈の物だった。それに『消滅のルーン』が刻まれた石の罠を見破り、『雷のルーン』が刻まれた短剣からの電撃を無効化した。存在の力に対抗し得るは存在の力のみ。そうなると敵も研究し、目の移植の様に同じ力を手に入れた可能性が高かった。
「私達の方が科学が進歩しているのは知ってるですよね、弱き者達が強き者達に搾取されるのは必然なのですよ」
当然の様にそう言い放つイヴの言葉にシエラは到底同意出来る物では無かった。
私達は、その強者が弱者を搾取する世界を認められず、巨大な星の破片と言える小さな星に移り住んだ。
シエラ達は元の住んでいた『惑星エストラ』の一部を切り離し、人間や動植物達と共に繁栄してきた。
そしてアトラスフィア・ウルフと人間達の間にハーフブラッドと呼ばれる人間と狼の混血の種族が生まれる。
しかしそれが気に入らなかったのか、元の世界の神が怒り、嫉妬し、侵略を開始した。
「汚い口を閉じて下さい。私達は滅びない。この世界も。あなた達の奴隷になんてならない。元の世界の神に伝えて下さい、かつて信仰されしあなたの翼はすでに穢れきっていると。元、守護の天狼達がそう嘆いていたと」
シエラは覚悟を決めた、恐らく今夜、自分は死ぬだろう。こいつを倒しても森に居る殺戮人形の数が多過ぎる。それでも私は、私達は、戦う。この星に住む人間達と、同胞の血が混じったハーフブラッド達の為──。
「勘違いしている様ですねシエラ、私は神なんてどうでもいい、むしろ私はあなた達を愛しているのですよ。その愚かさが愛おしい! 嗚呼、早く斬り刻みたい! それがこのイヴ・イルシオンの存在する意味なのです!!」
殺戮人形に感情は無い筈。しかしイヴには何故か感情があり……狂っていた。
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